ジェット・エルフィン/守りたいと
ウィルの執務室を出て食堂へ向かう。
「ジェット!」
待っててくれたナリスが立ち上がってこっちに来た。
「部屋に」
こんなところで話せない。頷いてくれたナリスとギルドを出て俺の部屋に行く。
食事はと聞いたけど、とにかく話をって言われた。
話す許可は得てるから、ギャレットさんから聞いた話と、ウィルから聞いた話をして。
「ウィルと入れ違いでアリーが来てくれてるって」
「アリヴェーラさんが…」
そっか、とナリスが少しホッとしたように息をついた。
レム、アリーに懐いてるもんな。
「休む間なくて悪いけど。明日ライナスに向かうから」
「それ、俺が文句言うわけないよね」
そう言ってくれるナリス。
心配してたもんな。
一日早く戻ったガーネで連絡を受けて、とりあえず俺だけでもってなったんだけど。
ナリス、俺も行くって引かなくて。
もちろん俺とクゥの心配をしてくれてるのもわかってるけど。一番の心配はレムのことだろうからな。
今回のことの一番の被害者は間違いなくクゥだけど。テオだって守れなかったって落ち込んでるらしいし、レムだってクゥのことをものすごく心配してるだろうから。
テオのことは俺とアレック兄さんで見るとして。
「レムのこと、よろしくな」
「もちろん」
レムのことは、ナリスに任せよう。
ついてきてくれて、ホントよかった。
ナリスが食堂で待ってる間に用意してもらってた食事を食べて。
明日ギルドで落ち合うことにして。
ナリスが帰って、ひとりになった部屋。突っ立ったまま溜息をつく。
どうして。クゥが。
兄貴たちが亡くなって。狙われたりもしたけど、クゥはいつも明るく一生懸命で。
前にテオとウィルが言ってた追い詰められた様子も全然見ないって、安心してたのに。
どうして! またクゥなんだ??
俺が英雄だから? その俺の姪だから? ギルドで噂になったから?
どんな理由を並べたって、納得なんかできない。
あんなに人のことばっかり気遣って。
あんなに誰かの為に一生懸命で。
そんなクゥが! 一体何したっていうんだよ!!
自分の身に起こったことならまだしも。
何で、クゥに―――。
守りたいと、そう思うのに。
何があっても守ると決めたのに。
―――無力な自分が恨めしい。




