ロイヴェイン・スタッツ/約束
出発まであと数日。
今のところアリーの様子に変わりはないから、まだバレてないと思う。
前の訓練中に取り付けてきた、ククルとの約束。
雨の三日の誕生日。ライナスに行ったら祝ってくれるって。
アリーも一緒にって言われてるけど、アリーがいたらククルにべったりで口説くどころじゃなくなるから。どうにかひとりで行きたい。
だから今回は手土産作るのも我慢して、浮かれる気持ちも抑え込んでおとなしくして。母さんたちにも口止めして。
ホント、早く出発日にならないかな。
自分がこんなになるなんて、ホントに思ってもなかった。
何とかごまかせた二回目のキスも、家に帰ってから嬉しさと後悔でどうにかなりそうだった。
軽く触れただけのキスでも滅茶苦茶嬉しくて。
あのときのことを忘れると言ってもらったのに、思い出させるようなことをしてしまう自分に後悔して。
また怯えられたらどうしようって気が気じゃなくて。でも嬉しいのは間違いなくて。
浮いたり沈んだり、ホントに自分でも馬鹿みたいだと思った。
相手が好きな子だってだけで、何でこんなに特別なんだろうって。
今になって俺は、それを思い知った。
だから、テオにはああ言ったけど。
ククルのこと、泣かせて奪うような真似はしたくない。
ククルの意思で俺を選んでもらいたい。
難しいって、わかってるけど。
いよいよ明日。こっそり朝に出て、泊まりなしの夕方着でと思ってたら。
夜になって、滅茶苦茶いい笑顔のアリーに廊下で道を塞がれた。
「何か私に言うことはない?」
「何かって?」
何でバレてんの??
そう思ったけど、ここまできたらシラを切るしかないから。
素知らぬフリしてそう返す。
「何かは、ロイが、一番よぉぉくわかってるわよね?」
俺を睨みつけながら、アリーはぴらりと手紙を見せる。
…俺が伝えるからって、ククルに言うの忘れてたな……。
「明日の、ご予定は?」
「え〜っと…何だったかな…」
瞬間、ガンッと頭を殴られる。
「アリー!!」
「往生際の悪い!」
だって俺ひとりで行きたいし!
「もちろん私も行くから!」
覚えときなさいよ、と言い残して。
派手に扉を閉めて、アリーは自分の部屋に戻ってった。
…そうだよな、ククルならちゃんと知らせるよな……。
俺がいつ言うか、アリーの奴、様子見てたな。
はぁ、と溜息をつく。
アリーは絶対ククルにぼやく気だろう。
訓練中はできないから。ゆっくりククルを口説くつもりだったのに。
あぁもう、明日まで待たずに今から出発しようかな…。




