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三八二年 雨の二十八日
「エト兄さん、気をつけてね」
「クゥ〜」
名残惜しそうにジェットが抱きつく。それを宥めるように背を叩くククル。
「ちゃんと迷惑かけた人に謝ってきてね」
「わかってる。リオルのこともあるし、またすぐ来るから」
ようやく解放されたククルは、微笑ましそうに見るダリューンと呆れ顔のウィルバートに頭を下げた。
「ダン。来てくれてありがとう。ウィルバートさん、エト兄さんをよろしくお願いします」
「ククルも無理をしないように」
軽く頭を撫で、ダリューンが微笑む。
「どうやらまた来ることになりそうなので、そのときはよろしくお願いします」
苦笑混じりではあるが、ウィルバートもそれ程嫌そうではない。
少しはこの町を気に入ってもらえたのだろうかと、ククルは嬉しく思った。
「こちらこそ。お待ちしてますね」
にっこりと、ククルは微笑んだ。




