三八三年 明の四十九日
食堂と宿に、ギルドの印が入ったウィルバートからの手紙が届いた。
二通とも同じ内容で書いてあると前置いてから、訓練の詳細が綴られてある。
本人もその辺りだと言っていた通り、訓練開始は十二日、日数は五日間。前日に到着し、翌日に帰るのは今回も同様で、それを含めた七日間はほかのギルド員の立ち入りは禁じておくとあった。
「…結構増えたな」
一緒に手紙を覗き込んでいたテオが、ぽつりと呟く。
次に書かれた参加人数。ゼクスたち教官四名とウィルバートは変わりないが、訓練生は七人になっていた。
あとは六人のうちのひとりが来るので、大部屋は八人で使うとあった。
そして、見学者が三人いるので二階の部屋は五部屋必要とあり、それに加えてジェットたちパーティーが泊まる分が加わることになる。
「ジェットはこっちに泊まるとしても、二階は七か八か…」
定員ふたりの二階の部屋は全部で八部屋。ほぼ満室だ。
「…エト兄さんが来るまでは十六人ね」
「なら最終的に二十人、か」
ジェットの到着は十五日の予定となっているが、前回のように早く来る可能性もある。
食材の仕入れは毎日あるが、夜食や急な人数増加も考えられる。少し多めに準備しておこうとククルは思った。
ククルの下には同時に荷物も届いていた。送り主は同じくウィルバートだが、こちらにはギルドの印はないので個人的なものだろう。
前回ここへ来たときに言っていた、誕生日プレゼントのお返しなのだろうと思いながら開けてみると、中には二通の手紙も入っていた。
一通はククル宛。そしてもう一通の宛名はテオと連名だった。
「テオ、ちょっと…」
荷物はククル宛だから、と先に仕込みを始めていたテオを呼び、手紙を見せる。
「何で俺も?」
怪訝そうに首を傾げるテオと共に、ククルは手紙を広げた。
内容は短く、フェイトがギルドに入ったという知らせだけ。
読み進めるテオの顔が嬉しそうに綻ぶのを横目で見ながら、ククルも笑みを浮かべる。
本当はギルドに入りたかったというフェイト。どういった経緯があったのかはわからないが、願いが叶ってよかったと思う。
そしてその報告を嬉しそうに受け取るテオにも、ククルは心中よかったと告げた。
「フェイト、そのうちここにも来るかもな?」
そう言って笑うテオが仕込みに戻ってから、もう一通の手紙を読む。
こちらも短く。プレゼントのお返しだということと、気に入ってもらえればと書いてある。
少々重めの箱を開けると、中には色とりどりの小瓶がずらりと並んでいた。
「ジャム?」
手に取り眺めるククルに、カウンター越しにテオが尋ねる。
「うん…」
様々な果物、果てはナッツに花まで。ひとつひとつ違う色合いに、見ているだけでも嬉しくなる。
「…また的確に突いてきたな…」
笑みの溢れるククルの姿に、ぼそりとテオが呟いた。




