三八三年 明の四十二日
早朝、町を発つウィルバートを見送りに出る。
「一日で帰るのもだいぶ慣れたかな…」
事務員だというのに、実動員でもあまりしない馬を替えての強行軍を何度したことだろうと、遠い目をしてウィルバートがぼやく。
「気をつけて」
心配そうなククルに、わかってると頷いた。
「訓練の詳細がわかり次第連絡するよ」
お願いしますと、今度はククルが頷く。
「ジェットによろしく言っといて」
「怒ってたって伝えとく」
投げやりなテオの言葉に苦笑してから、ウィルバートはふたりを一瞥ずつする。
「次も全行程同行しますので。よろしくお願いします」
ギルドの事務員として告げるウィルバート。
「はい。お待ちしてますね」
「宿のほうも。多少の変更には対応できるようにしておく」
受け入れる側としてそう応えるふたり。
互いに顔を見合わせ、笑った。
それじゃあと踵を返しかけて、ウィルバートはふと立ち止まる。
「お返し。受け取ってくれるよね」
「お返し?」
きょとんとするテオの隣、ククルが諦めたように微笑む。
「はい。くれぐれも程々でお願いします」
「程々じゃ俺の気は済まないんだけどな」
そう笑い、ウィルバートは一歩下がった。
「考えとく。じゃあ、また」
「ええ、また。お待ちしてます」
いつものように返したククルに手を振って、ウィルバートは今度こそ踵を返した。




