三八三年 明の十一日
昼過ぎ、まだ客足が途絶えきる前。カランとドアベルが鳴った。
入ってきた四人組を見てククルが一瞬緊張したことにテオは気付いた。
「いらっしゃいませ」
動揺をすぐに打ち消し、ククルは微笑んで告げる。
水を持っていこうとするククルをさり気なく止めて、テオは自分がカウンターから出た。
水を置き、注文を待つ間様子を窺う。
荷物は持ったまま。四人共帯剣しているということはギルド員だろう。
どうしてククルが緊張したのか、ここまで近付いてようやくわかった。
四人のうちふたりが、おとといのふたり連れだ。
服装はもちろん髪型も変わっている。普段からよく客のことを見ているククルだからこそ、瞬時に気付いたのだろう。
気取られないように注文を取り、カウンター内へ戻る。
ククルの視線に小さく頷き返し、テオは注文を伝えた。
四人組は普通に食事を取って出ていった。やはり宿には来ていないことを確認したテオが、ちょっと聞いてくると言って店を出る。
戻ってきたテオは難しい顔で首を振った。
「警邏隊だった」
「え?」
まさかの言葉にククルが声を上げる。
「ギルド員じゃないの?」
剣を持つことができるのはギルド員と警邏隊。警邏隊には隊服があるので、普通はそれで見分ける。
帯剣したまま町に入るには、門でギルド員か警邏隊の身分証を見せて記名しなければならない。
剣を持っていたのならと、テオは門まで四人組のことを聞きに行った。住人の自分には記名帳を見せてもらうことはできないが、同じギルド員のジェットなら確認できるかどうかも尋ねようと思ったのだが。
四人共警邏隊の身分証を持っていたと言われたのだ。
「事情があって隊服じゃないんだって説明したらしい」
「ギルド員の振りをしてた…ってこと?」
わからないと首を振るテオ。
「とりあえず父さんに話してくる。明日また出すことになるけど、ジェットにも早く知らせといたほうがいいんじゃないか?」
「わかったわ。お願いね」
再度出ていくテオを見送り、ククルは視線を落として考える。
この短期間に、身分を隠した警邏隊が二度も店を訪れた。
ご丁寧に髪型まで変えてきたのだ。ただ昼食に来ただけだとは思えない。
深く息をついてから、顔を上げる。
彼らの意図はわからないが、少なくとも自分たちは警邏隊に捕まるようなことはしていない。
ならば堂々と、いつも通りにしていればいい。
そう切り替え、ククルはジェットに手紙を書く為の準備を始めた。




