小さな頃から、この場所から見た風景が大好きだった。
見下ろす町に家々の明かり。門までの道を支えるように、両側に並んで連なっている。
そして振り返ると、宿と食堂の明かりが仲良く並ぶ。
生まれ育ったこの丘の上からの景色が。
周りを囲む、人々の明かりが。
私の、大好きな景色。
「ククル!」
ぼんやり町を眺めているとうしろから聞き慣れた声。振り返ると店の扉が開いて父さんが立ってる。
「閉めるぞ」
「はーい」
応えて戻る途中、もう一度町を見る。
変わらない景色が、嬉しかった。

イラスト かぐつち・マナぱ様作
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