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こじらせ悪役令嬢は無自覚に無双する  作者: Q六
第三章 真珠姫編
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カインの情報源

 

 しかし、それより先に気になっていたことをカインに尋ねる。


「そう、話の途中でした。ビューラー辺境伯は商いに長けているのですか?」

「商いと申しますか、金儲けと申しますか。平民に金を貸し付けて、法外に高い利子をつけて取り立てる」

「闇金ですね」

「え?」

「こちらのことです。では、マクスウェル伯爵への融資も高金利で?」

「いえ、そこが巧みなところで、高い利息をつけるのは相手が平民の場合で、相手が貴族であるときは寧ろ低い利息しかつけないのです」

「なるほど、相手を見て『貸し』を売っているわけですね。悪行がバレそうになったら、借りのある貴族連中が庇ってくれるのか。そうまでして隠したいような事をしてるってわけね。……それにしても、カインって、意外と情報通ですわね」

「先日お会いしたレオン・ビューラー様の印象が少々良くなかったので。独自のルートで調べました」


 独自のルートとは何であろう。マクスウェル伯爵家にも、影の者たちがいるのだろうか。しかし、そんなのを使うのは中央に近い一部の高位貴族のみだと思っていた。

 小首を傾げ頭の上にハテナを飛ばす私を見て、カインが不敵に微笑む。


「老若男女身分の括りなく、目的を一にした者たちが自由に出入りするサロンがあるのですよ」

「?! そんな怪しい所に出入りしているのですか? カインは」

「欲しい情報があるのでしたら、あなたも行ってみますか?」

「え……。私? 行きたい。けど、入れるの? 危なくないの?」

「私の紹介ですから。安全かどうかは、保証しかねますが」


 カインが口元に手を当て、眉間に皺を寄せて思案している。余程危険な場所なのだろうか。


「真珠姫、騙されてますよぉ」

「え?」


 黙って聞いていたラルフの指摘で、カインに向き直る。と、カインが手で隠していた口元の笑みが、隠しきれずにこぼれる。


「古今東西のチェス好きが集まる、健全な社交場です。皆さん紳士ですので、その点はご安心ください。ただ、皆さん強いですので、心は折られるかと」


 えええええええ!


 ぎぎぎ、と軋むように顔だけ向けて、涙目でラルフに縋る。


「行きませんよぉ。頭使うのキライなんで」

「えええ。私だけボコられるの嫌だぁ。一緒に行って、一緒にボコられましょう!」

「もう、調べるの諦めたら良いんですよぉ」

「じゃぁ、教えてよ。ラルフたちは、私に何を知られたくないの?」


 その言葉に、ラルフが少し迷った表情になる。


「……ダメ。言えないよ」


 絞り出すように、ぽつりと呟く。


「真珠姫は、危ないことに平気で首も足も突っ込むよね。昔っから……。だから、協力はしないけど、でも、そんなに知りたいなら、もう止めない。危なくなったら絶対に守るから、好きにしなよ」


 その言葉は、なぜか辛そうで、申し訳なくなる。しかし、調べた先に何があるのかわからなくては、止めようもない。


「ありがとう」


 礼を述べると、俯いたままのラルフが、そっと私の指先を捕まえた。その手から、普段の飄々とした様子とはかけ離れた、深い思いが伝わってくる。


「でも、本当は危ないことしてほしくないんだからねぇ」

「はい。わかりました。気をつけます。本当に、ラルフには感謝しています」


 掴まれた手を見つめながら、私の指先からも気持ちが伝わることを願った。




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