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こじらせ悪役令嬢は無自覚に無双する  作者: Q六
第三章 真珠姫編
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姿無き敵?

 

 黒い髪、黒い瞳、濃すぎない端正な顔立ちと切れ長の目。日本人の感覚ではカインの外見が一番馴染みがあって受け入れやすいかもしれない。綺麗な顔だなぁ、と、俯いて話すカインの顔を真正面から見ていると、「クラウディア、見過ぎ」ラルフから茶々が入った。


「そんなに熱っぽく見てると嫉妬するけど?」

「熱っぽく?! そ、そ、そんなんじゃ……」

「話を続けたいんですけど」

「はい。お願いします……」

「あはははは。カインはブレないなぁ」


 上級生は補習授業で放課後は忙しいらしく、一年の三人組が学食で紅茶をいただきながら話すこととなった。この学食、紅茶とお菓子も美味しいのである。食べ過ぎ注意!


 カインは割と俯きがちで積極的に目を合わせてこないから、男性と目を合わせるのが苦手な私でも、安心して向かい合えるのかもしれない。それと、カインは仕事仲間だしね。

 結局、私は男性を意識し過ぎなのだと思う。クリス様やラルフも、懐かしい幼なじみ枠で捉えていて、恋愛対象じゃないから意識せずいられる。カインも仕事仲間だと思えば意識しないでいられる。


「海の真珠に負けない品質の物さえ作れば、高額でも飛ぶように売れるはずだと言って、より高品質の真珠を作る研究に没頭しております」


 カインの話を聞いて、「あ、やっぱり」と思ってしまう。元々多額の負債を抱えていたマクスウェル伯爵家だけれど、本当に商才が無いと言うか、お金の管理が甘いと言うか。


 デビュタントボールでの宣伝効果もあり、ギョー家には真珠についての問い合わせが殺到した。海での真珠の養殖はまだ商品化できるほど安定していないので、似たようなドレスを作りたいと仰る方には、マクスウェル伯爵を紹介したのだ。マクスウェル伯爵領での淡水真珠の養殖は成功し、今のところ海の物より品質は劣るものの、売り物になるレベルの真珠は数が確保できている。今は、品質を上げる努力をするより、出来上がっている商品を売る時なのだ。それに、研究、開発にはお金がかかる。そこが、まずマクスウェル伯爵家は枯渇しているはずなのだ。と、いうことは……


「財源は? まさか、新たな借金を?」

「融資するという者が現れまして。借金まみれの我が伯爵家に」

「なんだか怪しいねぇ」

「というか、全て持って行かれるでしょうね」

「はい。しかし父は『信頼できる方なのに』と残念そうにするだけで、相手が誰かは口を割らないのです。……気になりませんか?」

「気になるわね。何者かしら? 何が目的? 商人? 貴族?」

「目的は、たぶん、マキシ湖とそこで養殖される真珠に関する権利。或いは、ギョー公爵家かも知れません」

「うち? ……まさか」

「その線は濃いんじゃない? ギョー公爵家が黙ってないのわかってて、それでも尚……ってことでしょ?」

「何者かは知りませんが、父の話から察すると、その相手は外国にコネクションがあるらしいです」

「じゃぁ、商人かしら? ますますわからない」

「辺境伯かもねぇ」


 ラルフの言葉にぎくりとする。辺境伯とその関係者の内で、私が直接知るのは唯一人。ビューラー辺境伯令息、レオン・ビューラーだけだ。


「心当たりがおありですか?」

「え……。でも……。私、恨まれているの?」


 レオンとは揉めたけれど、何か怪我したとかで学園から消えた後は会ってもいない。こっちが恨むのならわかるが、恨まれる覚えは無い。

 思い付いた名を、頭を振って打ち消す。そんなわけは無い。


「いえ、心当たりは無いわ」

「ふぅん。そっかぁ。ごめんね、真珠姫。用事を思い出したから先に帰るねぇ」


 何かを思い付いた風に立ち上がり、ラルフがひらひらと手を振って去って行く。


「忙しない人ですね」

「でも、頼りになるの」

「信頼なさっているのですね」

「ええ。とっても」


 友人の話をして笑って顔を上げると、こちらを見ていたカインと目が合ってしまった。その瞬間、カインと二人で居ると唐突に気付いてしまい、緊張して目を伏せた。顔が赤いかもしれないとモジモジしていると、食堂の扉が開く音がして、そちらを見る。

 予期していなかったタイミングで派手なストロベリーブロンドが視界に入り、一瞬、頭が真っ白になった。


 アンジェリカが睨んでるぅぅぅぅぅぅ!!




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