表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
こじらせ悪役令嬢は無自覚に無双する  作者: Q六
第二章 デビュタント編
34/109

宴の後


 図らずも演じることになったミザリーとの青春劇場は、見ていた者の心を溶かしたらしく、学園での私の悪評はいっきに好転した。そこには、たぶん、アンジェリカという新たな共通の敵(?)の存在もあるのだろう。

 デビュタントボールの翌週に編入してきたアンジェリカは、それまで、槍玉に上がりがちだったマリアンヌをも凌駕する男性慣れ加減で、あっと言う間に学園中の女生徒を敵に回した。それも、本人は全く気にかけず堂々としたもので、男子生徒は……触らぬ神に祟り無しといったところか、女生徒の目が怖いようでアンジェリカとは距離を取っている。

 私は、というと、アンジェリカと話をすることは、できていない。相変わらず、話し掛けても無視される。しかし、今のところ彼女は王子狙いという訳ではなく、ただ満遍なく全ての男性に愛想を振り撒いてちやほやされたいらしく、私を敵視もしてこない。まぁ、王子の婚約者でもない私など取るに足らないと思われているのかもしれない。

 あの日、舞踏会が終わっても戻らなかったアンジェリカであったけれど、それについて尋ねても、お兄様は話をはぐらかすばかりだった。でも、時々二人が逢い引きしているらしいことを、私は知っている。それにしては、お兄様の雰囲気が全く変わらないのが気になるところだが。恋してるなら、それなりに変化とか、恋する者のオーラみたいなものが出るんじゃないかな? よくわからないけれど。


 とにかく、変な噂も消えたし、アンジェリカにも相手にされていないので、私は安心して女子の制服に戻すことにした。その際、革靴は気に入っていたので贔屓の靴職人にローファーを数足作ってもらったのだが、それが、一部のお洒落女子の目に留まった。「どこで手に入りますか?」と尋ねられたので、サイズの合う方には一足ずつお譲りして、更に追加を発注して学園近くの婦人靴の店においてもらえるよう手配した。これが大ヒット! 学園の指定靴であるかのように、女生徒という女生徒がそれを求めて店に殺到した。今は生産が追いつかない状況だが、もっと単純な作りの安価なローファーを開発して、「貴族の令嬢が必ず一足は持っている大人気のデザイン」として庶民的な靴屋にも卸せれば、と考えている。

 入学してからの悶着で、やっぱり、私は恋愛より商売の方が向いているようだと実感した。男性の気の引き方も、退け方もわからないのだもの。また面倒事に巻き込まれたりしないよう色恋沙汰からは一歩引いて、男性については、女の子たちとキャッキャするための材料と思うことにした。

 それをそのまま、学食でランチしながらクリス様とラルフに話して聞かせると、クリス様はとてもがっかりした様子で、「力になれなかった私ですから、今は何も言えません。でも、これから必ず挽回します。あなたに選ばれてみせる」と力強く仰られた。ラルフは、「そうだね。真珠姫にはそれが似合うよ。男なんか必要無い、必要無い。でも、商売するなら用心棒は必要だよねぇ」と楽しそうに笑い、それを聞いたクリス様は苦虫を噛み潰したような顔をしていた。


 恋愛は難しくて、まだ踏み出せない。今は、クリス様とラルフとで昔のように笑って過ごせる時間を持てることが、ただ、嬉しくて楽しいのだ。





今話にてデビュタント編も終わりです。

次回から、アンジェリカと()()()が動きます。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ