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こじらせ悪役令嬢は無自覚に無双する  作者: Q六
第二章 デビュタント編
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本来の出会い


 貧しい村娘アンジェリカは十五歳の秋、突然に、自分の母が貴族の妾であったと知る。 

 使いの者が迎えにきて、着の身着のまま、いや、荷物など端から無いのだが、母と二人、父親だという男爵の屋敷へと連れて行かれる。そこに居たのは、顔色の悪い気弱そうな壮年の男性だった。唯一つ、ストロベリーブロンドの豊かな髪だけが、同じものを持つアンジェリカとの浅からぬ関係を物語っていた。


 後で知ったところによると、クレイル男爵の妻は男爵より高位の子爵の令嬢で、大変気位が高く嫉妬深い人だったそうだ。夫が若い町娘を妾として囲ったのが許せず、子が産まれると知りながら館から追い出し、町からも追い出し、行方を追えなくした。

 数年がかりで妾と娘を見つけ出した男爵であったが、金の出入りを妻に牛耳られていて、まともに支援することができなかった。その妻が急逝し、喪が明けるとすぐに妾と娘を館に呼び寄せたのだ。

 丁度に貴族の子女子息の通う高等学園へ入る年であったが、村で育った娘である。社交界デビューまでに行儀を叩き込む方が急務であった。

 かくして、村娘アンジェリカはマイフェアレディよろしく身体も仕草も言葉遣いも矯正され、磨かれ、洗練されたクレイル男爵令嬢アンジェリカへと変貌を遂げてデビュタントボールに現れる。


 しかし、所詮は(にわ)か。初歩的かつ重大な失敗を犯す。


 この舞踏会には、デビュタントは濁りのない純白のドレスを、それ以外の女性は開催される春の優しい色味のドレスを着るという暗黙のドレスコードが存在し、デビュタントのドレスを手配するのは娘を持つ貴族の母親にとって最後にして最大の仕事なのである。

 この場に、アンジェリカは目の覚めるような青のドレス姿で登場するのである。


 すぐに、失態に気付き会場を後にしようとするアンジェリカだったが、騒ぎに気付いた一人の男性が助けの手を差し伸べる。公爵令息ルイス・ギョーである。妹のわがまま令嬢クラウディアが予備のドレスを馬車に残しているのを知っていたルイスは、それを勝手にアンジェリカに貸してしまうのである。

 ルイスにエスコートされて再び会場に戻ったアンジェリカはその美しさで周囲の話題をさらうが、彼女の着るドレスが自分の物であると気付いたクラウディアは激怒し、その場で彼女とその母親の落ち度を指摘し、叱責する。

 涙ぐむアンジェリカ、怒りが鎮まらないクラウディアを前に、静観していた王子が動く。最初の曲が流れ出した場内で、王子が手を取ったのは、クラウディアでなくアンジェリカであった。


 これにより、クラウディアとアンジェリカが「婚約者候補」として並列に扱われる事態へと発展する。




  ◇  ◇  ◇




 これが、私の知るゲームの展開なのだが。既に、婚約者ではなくなっているんだよね、私……。




 

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 兄が全ての根源やんけ…
[一言] これ勝手をした兄が元凶な気がする。自分のドレス許可もなく使われて、面白く無いのは当然。着替えている間にでも妹への対処出来る筈。というか、妹が心優しくも貸したという美談にするぐらい簡単だろうに…
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