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神殺しの力

 女神とマキナはまだ対戦ゲームをやっていた。


「あ゛あ゛〜〜。なんでぇ勝てないの゛〜」

「あはは、弱いね〜」


 画面にはK.O.の2文字。何十戦やってもマキナの勝ちに泣きそうになる女神。


「いい事教えてあげるよ」

「ん〜、なにぃ〜?」

「相手を油断させること、これが重要だよ」

「意味が分からな〜い」

「例えばボクはこのゲームが弱いと言ったら?」

「マ〇カー?」

「そ、レースゲーム。どうやる?」

「勝てるならやるやる」

「いいよ」


 格闘ゲームからレースゲームに変えて対戦するがまたもや圧勝するマキナ。


「はぁ〜クソゲーやん、クソクソ」

「あはは、引っかかったね」

「まさか騙された!」

「そう騙すことが相手を油断させるには持ってこいだね」

「ん〜でもさぁ、それ相手の油断には直接的には意味を成してないよね?」

「そうだね、けどそれはゲームの中での話。ゲームは力量など技術が問われるから相手を油断させても直接的に勝ちには繋がらない。けど現実ではどう?」

「まぁそれは勝ち繋がる時もあるね。ん〜〜でも今の私とマキナにはこの話は関係なくない?」

「あはは、そうだね。ここでは関係ないね、関係があるのは今頃のエクスだろうね」

「???まぁいいや、次は〇よ〇よだ!」

「パズルゲームか、いいよ」


 そして圧勝するマキナ。


「んがぁーーーー!!負けたーーー!!」

「あはは、弱すぎ乙」


 負けに負けまくる女神はコントローラーを投げた。


 一方で獣の村と海付近のアリア達は目を強く閉じて迫り来る三叉槍に終わりだと思った。しかしバチンと何かが弾ける音が聞こえ目を開けるとそこには志戸が軽々と三叉槍を受け止めて志戸の容姿に合わせ三叉槍が小さくなる所を目撃した。


「よっと、これいいな。持ち主に合わせて大きさが変わる槍」

「き、きき貴様……何故だ!さっきは無理と言っていたはずでは」

「ああ、それは逃げるのが無理と言っただけだ。何を勘違いしたんだ?俺に負けはない」

「だ、騙したな…」

「騙される方が悪い、んじゃ次はこっちの番だな。まさかとは思うけど持ち主がご自慢の武器を受け止める事が出来ないとは言わねぇよな?」

「ふっ、そんな物、人間如きに扱えるシロモノではない、人間如きが一度投擲するとその身は滅ぶ」


 三叉槍を構え投擲する体制になる志戸。


「へぇ、それじゃあフルパワーの3割半で行くぞ」

「貴様それでも投げるのか?その身が死ぬぞ」

「やってみなくちゃ分からない。だが俺なら扱える」

「面白い、受け止めたのは驚いたが投げるのはまた違うぞ」

「だから言っただろ。やってみなくちゃ分からないとな」

「ほう、ならば我の腹を穿いて見せよ。さすれば貴様の力を認めよう」


 ポセイドンは腕を組み無防備の腹を晒す。志戸には扱えないと判断したのか余裕の表情だった、だが志戸はニヤリと笑い三叉槍を持った手に力を込めると三叉槍の柄にヒビが入る。

 そして勢いよく投擲しようとしたが三叉槍を持っていた志戸の腕が砕け散り三叉槍をその場に落とした。


「……」

「ふっ、ははは。やはり人間には扱えないだろうな、どうだ負けを認めろ」

「あらあら、私も正直受け止めたのは驚いたけど三叉槍を投げられないようじゃあポセイドンは倒せないわよ」


 エクスが再び現れ真っ赤な傘をさして志戸の横に現れて微笑む。


「なるほど、扱えないか…それは本当か?」

「聞こえなかったの?馬鹿なの?人間には扱えないのよ、その三叉槍」

「それは誰が決めた?神か?人間か?」


 砕け散った腕が元に戻り始める、まだ皮膚が戻ってない状態の筋肉や骨が剥き出しのまま三叉槍を再び手に持つ。


「そんなの無理に決まってるわよ。だって今貴方の腕が砕け散ったのよ」

「じゃあ俺が今決める。俺なら扱える」

「大バカなの…」


 何言っても諦めない志戸にバカを見るような目をするエクス、それを見ていたアリアはエクスに言う。


「エクス様、何言っても無駄ですよ」

「どいうこと?バカだから?」

「違いますよ、最も強いからです。他の誰よりも普通の人より、誰よりも普通の神より。最強だからです」


 アリアが自慢げにエクスに言う、それを聞いていたライコウは頷き、アリスも小さく頷く。


「さ、最強…バカにしないでよ。神を超えるなんて不可能よ。それに例え不死身でも槍を扱うとは話は別よ!!」

「バカはお前だよ。不死身だから力加減が出来ないんだ。次は力を抑える」


 握りしめた三叉槍の柄が大きな音を立て砕け始める。


「フルパワー5割だ、次は抑える」

「な、何なの……さっき腕が砕け散ったのは自分の力が抑えられなかったということなの…」

「ああ、その前に槍が耐えられなさそうだったから弱めたら腕が吹き飛んだ、まぁでもあと一回は投げられる」


 まさか志戸の腕が砕け散ったのは三叉槍の力に負けたわけではなく自らの力加減によって三叉槍の力が流れ込んだだけという最強という一言では片付けられない馬鹿げた話にエクスはその場に崩れ落ちる。


「面白い…面白いぞ人間。いいぞ!!さぁ投げろ!!」


 ポセイドンはその話を聞いて大笑いすると再び無防備の状態になる。


「余裕にしてられるのも今のうちだぞ雑魚神」

「認めよう人間、その口達者に。あとはその力を示せ我に」

「指図すんじゃねぇよ。雑魚が」


 振りかぶり三叉槍が志戸の血を吸い赤黒く光り始めるとそのまま投擲した。

 投擲した瞬間、雨が止み空が割れ海も割れた。そしてポセイドンの腹を三叉槍が穿いて三叉槍はそのまま天高く飛び上がり散り散りとなって消えた。


「ごふっ……み、認めよう。貴様こそ最強と…」


 血を吐きポセイドンはそのまま海に倒れ海に消えていった。


「な、な、なんでよ。なんで扱えたのよ」


 ありえない出来事に傘を落とすエクス、志戸の体は何ともなく三叉槍を握っていた手は軽く切り傷があった程度だった。


「ふぅ、疲れた…」

「私の駒が…」

「やぁやぁ、無事に勝ったんだね」

「ちっ、めんどくせぇのが増えた」


 膝から崩れ落ちた傍らに現れたマキナ。そしてエクスが地面に落とした傘を拾い上げる。


「マキナ…」

「どう?志戸の力は?」

「どうもこうも異常よ、まさか神を殺すなんて!」

「だから言ったじゃない。地味過ぎるってシドには敵わない、神を殺すと言ったんだから殺すに決まってるじゃん」

「ありえない…ポセイドンの封印を解いてまで人魚(マーメイド)の種族を喰らい尽くしたのにまだ足りないの?」

「喰らい尽くした?どいうこと…エクス様それって…」

「ええそうよ、言葉の意味よ。ポセイドンの腹を満たす為には必要な犠牲よ」

「そんなそれだけの理由で…」

「それだけの理由よ、だから貴方達エルフも殺した。だからーーガハッ!!」


 エクスの背後から首元を傘で突き刺すマキナ。


「喋りすぎだよ。()()()()()

「ま、マキナ……あなた…ゲホッ」

「敗者は死ぬ、それが神の定めたルール」


 傘を軽く捻じ回したあと引き抜く、目の前の光景にアリアは唖然とした。ライコウとアリスは目を背ける。しかし志戸だけは無表情のまま見ていた。


「まって、もう一度チャンスをちょうだい。次は…」

「見苦しいよ、神が命乞いなんて。チャンスはもうない、賭けた種族が弱かっただけ、ゲームはReplay可能だけど現実は甘くないよ」

「ちょっと待って、わ、私は貴方の姉よ、殺していいの?」

「二度も言わせんなよ、クソゴミが…」


 笑っていた表情から一変して冷酷な目つきでマキナはエクスを見下す、それを見たエクスは背筋が凍り言葉をまともに発せなくなる。


「それじゃあ、バイバイ」

「ま、まっーーーッ!」


 マキナは傘を振り上げそのままエクスの頭や体を何度も突き刺す。

 そして息絶えたのを確認するマキナは血に染ったのが分からない元が真っ赤な傘を投げ捨てる。


「おやすみ、()()()()()


 笑みを浮かべエクスは白目を剥いて息絶えると塵となって消えた。


「ーーさて、おめでとう志戸。次はデウスの駒だ」


 マキナはいつもの調子に戻り笑顔で志戸の肩を叩く。


「なるほど、意外とあっけなく死ぬんだな」

「まぁね、神同士なら普通の人間と変わりないから平等さ」

「…なんで殺したのですか?エクス様ってマキナ様の姉ですよね?なんで?」


 アリアは突然目の前で起きた出来事に驚きつつも聞く。


「まぁ時々こういう事情を知らない奴もいるから大変なんだよ」

「そうか…」

「一つだけ言っとくよアリア。君がどういう反応であれ、どういう態度であれ、ボクは何も言わないしても出さない。けど君達種族がやったのは大罪ってことは忘れないでね。志戸がいるから手を出さないだけ、まぁ仮に最終ステージで志戸が負ければボクかデウスのどちらかに殺されるから覚悟しといた方がいいよ」

「あ?俺が負ける?」

「単なる例えだよ、じゃあまたどこかで」


 聞き捨てにならない言葉に反応した志戸だが笑顔で手を振って消えるマキナに体が震え始めるアリア。


「てか、めんどくせぇから中央に行かね?なんでこんな回りくどいことやってんの?」

「貴様は普通なんだな…」

「あ?」

「確かに殺し合うことは理解してる。だがエクス様とマキナ様それにデウス様は三兄弟だ。たとえ恨みあったとしても殺していいはずかない、それになんで笑って殺せるんだ」

「………お前何か勘違いしてねぇか?」

「…何がだ」

「戦いを勘違いしてる、殺し合うのは当然だ兄弟、肉親は別?笑える。殺し合いの場は全てが平等だ、富豪も貧民も神も人も動物も親も兄弟でさえも、全てが等しい、まさかお前自分の妹は守って自分から手にかけることは無いと思ってるのか?」

「………それは断じてない」

「そうか、つまんねぇ女だ…」


 志戸は歩き中央に向かう、アリアは怒りを堪えてアリスに抱きついた。


「私は絶対にアリスを守る」

「お姉ちゃん…」


 ライコウはその2人を見て邪魔だと思い志戸の後を追った。

 世界を見下ろす展望台にマキナはひと仕事終えたかのように戻ってくる。


「ふへ〜、疲れた疲れた」

「……エクスは?」

「始末したよ、あんな神に頼る時点で負けたも同然だよ」

「そうか……、ポセイドン。あれは厄介な存在だった、あの人間に始末してもらって助かった」

「しっかし、人魚も殺して獣を殺し食料にするとはとんだ神様だよ、あれでもオリュンポス十二神なの?」

「さぁな…」

「ところでデウスの駒は?」

「ん?ああ、俺の駒は人間(ヒューマン)だが?」

「違う違う、人数だよ人数」

「なんだ知りたいのか?」

「そりゃあねぇ、駒をいくつも用意するなんて反則だよ本当は」

「知っていたのか?」

「あの泉に来た人間を見たらすぐに分かる、どうせラスボス的に『あとから追加しました〜』なんて言うんでしょ」

「………チートを利用したのは誰だ?」

「ボクですよ、なんか文句ある?」

「おあいこだ」

「そう言われたら仕方ないか、んで何人?」

「10人だ、まぁ1人死んだから残り9か」

「どうせ人間(ヒューマン)の生き残りにいる日本武尊(ヤマトタケルノミコト)も選んでるでしょ」

「ああそうだ」

「面白そうだね、人間対元祖人間」

「……ああ、そうだな……」


 中央に向かって歩く志戸を見下ろすデウス。マキナはせっせとゴスロリ衣装から燕尾服に着替え髪を後ろで一つに結びハット帽を被り杖を持ち展望台から出て行った。

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