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不破一族の多世界征服記  作者: 伊達胆振守(旧:呉王夫差)
第4章 異世界「ミズガルズ」への使節団
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45 女神の説教

 その日の夜のこと。

 俺は徳山館のとある一室でスヤスヤと眠っていた。そして相も変わらず、例によってあの(・・)2人の女神が俺の夢に登場した。


「……おっ、今回は割りと早めの再会だったようだね……」


「――アンタさ」


 当然のごとく現れるミネルヴァとフレイアを前に、「2人って案外暇人?」などという感想が思わず出る呑気な俺。なにしろ、前回会ってからまだ1年も経ってないから、そう思うのも無理はない。


「この前しゃんとしなさいって、言ったばかりでしょーが!!」


「ぶほっ!!?」


 すると突然、ミネルヴァが俺の顔に向かってビンタを炸裂。その細身の容姿からは想像もできないほどの威力で、俺は横に倒れた(夢の中の世界ではあるが)。


「いってぇ……何すんだよ!」


「それはこっちのセリフよ! アンタこそ何ボサっとしてたのよ!」


 烈火のごとく怒るミネルヴァ。痛む頬を抑え、俺は直ちに理由を脳内で探る。

 ああ、王国との戦争に負けたことに不満があったということか。でもあれ、戦力差的に仕方なかった結末だったような……。


「そこを何とかしなさいよ! 何のために能力与えてやったと思ってんの!」


 ああ、そういえば俺こっちの思考は2人には筒抜けだったっけ。でも5000対50000、しかも相手が強力な魔法の使い手だらけの状況じゃ、1人2人がチートしてどうこうなる問題じゃ無かったような気がするんだけど……。

 まさか2人は、あのヴィクトリア王女に勝てる見込みがあるとでも思ってたのか? 


「そういう場面で勝つのが、主人公ってモノでしょうが」


「いやいや、創作の世界じゃないんだから、そんなホイホイと上手くいかねえっての」


「うるさい! そんなこと言ってたら、いつまでも世界を征服できないわよ!」


「こっちだって苦労してんだよ! いくら女神だからって、上から物言って……」


「あ、あの! け、喧嘩はやめてください!」


 ずるずる口論にもつれ込んでいく俺たちを制したのは、蒼髪の女神フレイア。


「ふ、フレイア……」


「す、すまん……」


 やばいところだった。このまま夢の中で冷静さを失う所だった。ありがとうフレイア。


「それで武親さん。異世界人に負けてしまった今、貴方はこれからどのような指針を以て、世界を征服していくおつもりですか?」


 これまでの会話の内容から、俺たちが具体的にどのような行動をとったのかは、リアルタイムで伝わっている。つまりこれは、俺自身に対する意識の確認と言ったところか。


 ということは、慶広と新たに目指すことになったあの《・・》目標を言えばいいんだな。


「――日本と『ミズガルズ』にある王国が連合して、一緒に世界征服する。特に内政にも力を入れながら。……でいいかな?」


「それは、上手くいきそうですか?」


「さっきも言ったが、創作の世界じゃないんだからそんなホイホイ上手くはいかないだろうさ。でも目的を果たす以上、俺達がなんとかするしかねえよ」


「アンタに出来るの? 心配だわ」


「余計なお世話だ。それに、同じ転生者の慶広もいるんだから、きっと上手くいくはずだ」


 そもそも、世界征服の件はミネルヴァたちのほうから俺に頼み込んできたんだろう? それを今更になって『心配だわ』と言われても、こっちが困ってしまう。

 

それに、冷静な役回りの慶広がいるから大丈夫。悔しいけど、向こうのほうが戦い方も政治も一枚上手だし影響力もある。将来の蠣崎家の後継者候補との間にパイプがあるだけ、まだマシだ。


「でも、同じ勢力に2人も転生者がいるなんて驚きでしたよ」


「……?」


「本当ね。まさかあのアフロディーテと九天玄女も、転生者を送り込んでくるなんてね」


 あれ? そういうのって、神様同士が集まって合意した上で送ってるのかと思ってた。でも今の話しぶりから、結構各自の裁量任せな面も強いみたいだ。


「まあ、稀にみる緊急事態ですから、送ることは送るのでしょうけど……」


「効率性を求めた結果、ってとこかしら」


「どうでしょう? 聞いたところによりますと、一部の間で自分の立場を上げるために、転生者を別に送っているという噂があるみたいなのですが」


「なにそれ。そんな勝手な理由で人の運命を操作するとか、あり得ないんだけど」


 察するに、自分勝手な神もいるってことか。確かに神話を覗いてみると、過ちを犯す神々の話はちらほら散見できるから、可能性としてはある。


 しかし運命を操作……そんなメタ的な発言を平気でするとは、改めて2人は女神であると再認識させられる。ミネルヴァの態度ばっか見てると、すぐに忘れそうになるけど。


「なんか言った?」


「いや。ところでそろそろ俺、抜けてもいいか?」


「ええ。構いませんよ」


「ふん。そろそろちゃんと、カッコいい場面見せてよね」


 ふう、これでようやくグッスリ眠れる。ただでさえ夢を見ている間というのは、眠りが浅くなっているからな。そのうえで痴話喧嘩してるんから、当然疲れも出る。 


 しかしながら今回、またしても不安な点を1つ残す形となった。

今の話って、要は他の大名や国に転生者がいるかもしれないってことだよな。しかも、統一的な意思が存在しない状態で。王国との戦争前に慶広が懸念していた事項が、いよいよ現実味を帯びてきたぞ。 


 でも当面は、内政と王国との外交に力を注ぐべきだろう。

 元服から1年足らず。ここまで2度の戦が起こり、戦以外の時間は戦後復興に奔走し、内政の充実に力を入れられずにいた。


 だがこれからは、内政に尽力する余裕も出てくる。そもそも日本として認識されているのかすら怪しいこの蝦夷地(最果ての島)を、わざわざ侵略してくる大名もいないだろう。

 苦戦したとはいえ、コタンシヤムの乱の迅速な鎮圧から武装蜂起するアイヌが再び現れるとも思えない。


 つまり、こちらから戦を仕掛けない限り新たなる戦は起こらない。よって、本当の世界征服はここから始まるといってもいい。

 見てろよ、全世界の猛者ども! これから俺たちがあんたたちの全てを! この手に収めてやるよ。


 ーーしかし、この時の俺の認識はまだまだ甘かったと言わざるを得なかった。この女神との定例報告会から半年後、蝦夷地は滅亡の危機に陥ることになる。

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