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僕達に与えられた使命。…と、新たな日常。  作者: イイコワルイコ
Case11 _ 精神の病
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第4話「半里台総合病院前」







「本当にここでいいのかい?多分帰りはタクシーとか無いよ?」




「大丈夫です。ありがとうございました」


僕達を乗せてくれたタクシーが走り去っていく。

周りに明かりが全くないのでスマホのライトに頼ることにした。



東京から北へ。

心霊スポットへ向かうのにピッタリな暗いトンネルの前で僕達は降りた。


「深夜2時前。真。こっちなんだよね…?」


凪咲さんはトンネルを示すが。



「そのトンネルを抜ければ普通に道路が続いて山の周囲をぐるっと回って違う街に着きます。僕達は…こっちです」



半里台という土地へ正しく向かうなら、トンネルの横にある草むらを掻き分けて進む必要がある。

その奥に階段と下り坂があって…


「それってもしかして隔離されてない?今は地名も変わってるんでしょ?なら合併とかそういう…」


「本屋さんの店主は嘘をついてました。地名が変わったというより…地図から消されたんです。あんな事件が起きたくらいですから、警察等が調べるために半里台にやって来ますよね。それで一部の人間が知ってしまったんです…その異常性を」


「……本当に行く?真、怖くない?」


「怖いですよ?」


「…でもお化け屋敷の時みたいにパニックになってないけど」


「お化けが相手ってわけではないので。まあ1番怖いのは人間だとかいう言葉もありますが…」


「人間が相手なら…そうだよね。何かあったら私が守るし」


「はい。頼っちゃいます」


「ふふっ。じゃあ…行こっか」



虫除けスプレー的なものを用意しておきたかった。

今更だが、腰より少し上くらいの高さの草むらに入るのって後で大変なことになりそうで…



「真。静電気って好き?嫌い?」


「なんですか突然。静電気って冬場によくバチッてなるやつですよね?嫌ですよ普通に」


「手出して」


「…凪咲さん?何するか聞いてもいいですか?」


「雷魔法を使おうと思って」


「え!?」


「真は痛くないよ。でも近づいてきた虫とか動物とかは静電気でバチッてなるから…虫除けみたいな効果はあると思う」


「じゃ、じゃあ…お願いします」


「うん」


差し出した左手を凪咲さんが両手で包む。

手のひらを上にして、手首の辺りを擦ると…何かが流れ込むのを感じる。


「魔力だよ。私の」


「優しくてあったかいです」


「ふふっ。もうすぐ効果が出るよ」


「はい…」バチッ!バチッ!


「え?」バチッ!バチッ!バチッ!


「凪咲さん?」


「大丈夫。近くにいたのが今のでいなくなっただけだから」


「あの…まだ小さくバチバチ聞こえるんですけど…」


「いっぱいいるのかな…?」


「あれ、なんでだろう。人間よりも怖いような」


「私が?」


「虫がですよ!こんな草むらに入れば当たり前かもしれませんけど」バチッ!


「効果はしばらく続くから。先進もう?」


「す、すぐ行きましょう!」


「…真が嫌って言うなら草を取り除くってこともできるけど」


「それって焼き払うとかですか?燃え移って大火事になったり…」


「歩きやすくなるように切るだけだよ。風魔法で通る時だけ退かしてもいいし」


「っ!それですよ!風魔法!調整すれば虫も吹っ飛ばせるんじゃ…!」


「分かった。やってみるね」



すぐに僕達の後ろから風が流れてくる。

草を左右へ押し広げて道を作りつつ、小さな音がいくつか…本当に吹っ飛んでるみたいだ。


「でも季節的に寒いですねこれ」


服装がよくない。服だけでも今すぐ創造したいくらいだ。







………………………………next…→……







歩き始めて15分。

下って下って、さらに下って。

凪咲さんに頼りっぱなしで移動を続け、ちょっとした森のような場所を通過し…


「あ、あそこに建物があります…!」


「まだ寒い?私体温上げるからくっついてていいよ」


「す、すみません…色んな魔法使わせてしまって…」


直接触れようとする虫の対策に雷魔法で静電気を。

近くに潜伏している虫の対策に風魔法を。

思ったより強い風で体が冷えたので炎魔法を。

こんなことでは凪咲さんが疲れてしまう。


「大丈夫だよ。このくらいの魔法って全然魔力使わないから。家の中あっちこっち歩き回るのも疲れないでしょ?そんな感じ」


「ありがとうございます…」



稀に都内でも見かける。建物に植物が絡まって壁を緑色に染めるあれ。

大きさからして2階建てか。壁全体が何かわからない植物で覆われていて、破損したドアが半開きになっている。



「私達が探してるのは総合病院だからもっと大きいよね。昔はもっと綺麗にしてたのかな」


「多分…」


「怖い?」


「こんなところまで肝試しに来るって…すごいなって。僕には理解できません」


「まず場所が分からないはずだから、あの女の人のは例外だと思うよ」


「……ですよね」



全壊で瓦礫の山になった民家らしきものがいくつもある。

逆に今でも形が崩れず残っている建物を見ると…まだ誰かが住んでいるのではないかと考えてしまう。



「ねぇ。真。あれじゃない?」


「……うわ」



テレビで見たことがある。

遊園地にある巨大なお化け屋敷のような外観。

向こうはわざわざ怖く見せるために建物の一部を壊したりするのに…こっちは…本物だ。



「真。これスマホで撮ってダンに送って。何かあった時に私達を探せるように」


「…無事に帰れない可能性、あるんですか?」


「帰りのタクシーは無いんだし0ではないよ。GPSの情報も付けてね」


「は、はい…」


送信が完了すると、とりあえずすぐに返信が届く。

ジュリアさんが確かに受け取ったと教えてくれるのだ。




「入り口近くにガラスが散乱してますね。気をつけて入りましょう」


「待って。誰か来る」


「え!?」



僕達が来たのとは違う方向から、病院に向かって歩いてくる2人組が見えた。

服装は現代的で、髪型もオシャレにしてるし…まさか



「あの人達も肝試しに?」


「それ以外ないでしょ。どうする?隠れる?」


「向こうからも僕達が見えてるはずです。今から隠れるのは…」



僕達は病院に入らず立ち止まり、その2人組が近づくのを待った。




「マジで怖くね?」


「ねぇガン見されてるよ?どうする?」



…やっぱり肝試し目的のカップルに見える。



「こんばんは…」



「やばっ、こんばんっ…す」


「えー何ー?こわーっ」



「お2人はどうやってここに?」



「は?別によくね?お前らこそなんだし」


「守って…怖い」



「ここは」


「いいよ。放っておこう?」


「でも…」



「クソキモいんだけど。彼女可哀想~。よく見たら超可愛いじゃん。俺達と来いよ」


「ねぇなんで彼女の前で違う女に声かけてんの?ありえないんだけど」


「いいじゃん。3人で楽しく遊べば」


「えー…」


「てかさ。マジでお前みたいなひょろい男ガチでキモいから。小学生の時にもいたわー」


「ウケる」


「いや、マジで。お爺ちゃんお爺ちゃんってすぐ帰るから友達いねえでやんの。しかもそいつの家めっちゃボロい古本屋でさぁ!」


「キモーい!」


「あいつなんて名前だったっけな…ひ…ひい…ひいなんとか」




「……もしかして"カニ小"ですか?」




「そうそう!カニ小……は?なんでお前が小学校のあだ名知ってんの?」




「僕もカニ小だったんですよ。同級生に確か…三原君って男の子がいたんですよね。その子、目が悪くて眼鏡してたんですけど…ちょっと大きくて。クラスメイトからはトンボって呼ばれてて。ある日、やんちゃな男子グループがエロ本を拾ってきて学校で読んでたら、たまたま三原トンボっていうニックネームで変態写真を投稿してる男性がいて…三原君、学校卒業するまで変態トンボって呼ばれて…」


彼の顔が青ざめていく。

こんな偶然があるのかと僕もびっくりしているが。

まさか同級生とこんな形で再会するなんて。


「…三原君、元気にしてるかなぁ。中学生になってからも変態トンボのせいでいじめられてたって聞きましたけど。…知りませんか?彼のその後」





「ねぇ。どしたの?」


彼女さんが、三原君に問いかける。

どんなに見た目を変えてオシャレしたって、顔を丸ごと変えたって、話せば分かってしまうものなのだ。

……こんな時に思い出すのもどうかと思うが、テレビで見た整形を見抜く方法が活きたのも大きい。




「もしかしたら。今頃は整形して過去を振り切ろうとしてるのかなぁ…なんて僕は予想してるんですけど」




「…思い出した。お前、柊木か」


彼は僕を睨みつけた。


「チッ………。うざっ」


「ねぇって」


「うるさい。行くぞ」


「ええ!?………」



2人は何度も振り返って僕を見ていた。

それで立ち去ってくれればまだ良かったが、そのまま病院に入っていってしまって。




「真。大丈夫?」


「…あ、はい。すみません。見苦しかったですよね」


「ううん。真が言い返さないままだったら私…やってたから」


「あの。やってた…っていうのは」


「スパッと」


「……」


「だって!ムカつくよあんなの!…私の真を悪く言うし」


「心配してくれてありがとうございます。僕は大丈夫なので。ね?三原君達が帰るの待ちましょう」


「うん…」



少しだけ、凪咲さんから危ない気配を感じた。

僕のために怒ってくれたのは嬉しいが、だからって簡単に首を刎ねるようなことがあっては困る。



「いいの。自業自得だよ」


「向こう行って落ち着きましょう」






病院から少しだけ離れた場所に、錆びてボロボロになったバス停を見つけた。


「昔はここにバスが?…半里台総合病院前……一部消えかかってますけど読めますね…1日に6本しかない…」


「こんな所に代行がいるって…なんでだろう」


「え?」


「代行だから人目を避けるとか、分かるけど。でもここじゃまともにご飯なんて食べられないし、人だってまず来ないし。何のためにいるのかなって」


「………確かに」


「さっきの2人。殺されるのかな」


「え!?な、何を…」


「行方不明になって警察が探すとしても、わざわざここまで来る?位置情報がここだと示しても渋るんじゃない?わざわざ地名を隠したいくらいなんだし」


「………それって、…あれ?」


「ん?なに?」


「半里台出身って多分人には言わないですよね。関係者だとも」


「……?」


「あの本屋さんの店主。あの人わざとこの場所を教えてるんじゃないでしょうか。店の立地からして客層は夜の店で働く人達。トシちゃんから聞いたことあるんです。夜の店で働く人達の中には、いなくなっても誰も困らないくらいの人がいるって。家族や友人と縁を切っていたり…多額の借金があったり…。店主はそういう人達にわざとここを教えて、気分転換に肝試しでも…なんて勧めたりして」


「それでどうするの?」


「……殺すんです。きっと。ほら、…代行が」


「……え?じゃあここにいるはずの代行も」


「半里台の関係者。…もしかしたら、ずっと暮らしてるのかもしれません」


「…考えすぎかもしれないよ?」


「だったらいいんですけど。もし当たっていたら…分かります?」


「…店主は代行の協力者」


「凪咲さんが倒したゾンビみたいな使者って、もしかしたら過去に肝試しに来て殺された人って可能性も…」


「……え」


「凪咲さん?」









「キャアァァァァァァーーーーーーーーーーーーーーッ!!!」








思いっきり聞こえた。

女性の悲鳴が。









………………………to be continued…→…


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