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僕達に与えられた使命。…と、新たな日常。  作者: イイコワルイコ
チョコレート戦争
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第3話「凪咲の計画」






……眠い。



「ん?」


「凪咲さん、自分の布団に戻ってください」



そろそろ寝たい。

日付も変わって、朝まで数時間しかない。

長時間睡眠は諦めて短時間でもしっかりと


「やだ」


「………」



この高級なお布団のせいなのか。

凪咲さんは僕が眠る寸前にお布団の中に入ってくる。

それを丁寧に言って追い出す…が、やはりウトウトしてきた頃にお布団の中に入ってくる。


布団の質は関係ない。やっぱり凪咲さんと一緒に寝るのは…ちょっと…。



「このお布団がいいんですか?」


「気持ちいいよね。これ」


「分かりました。今夜は僕が凪咲さんの部屋で寝ますので、凪咲さんはこのままこのお布団で寝てください」


「えー…」




レベル2になってからの凪咲さんは、美少女ではなくなった。

美女だ。幼さが無くなり、大人の体になった。

………色々と緊張して一緒に寝るなんてとても…!



「よし」


覚悟を決めた。

最悪、あの高級なお布団は凪咲さんに譲ろう。

諦められなければ交代制にしてもいい。

落ち着いて寝られるならそれでいい。



「今度こそ…おやすみなさい…」




静かだ。


高級なお布団の後だから落差がある…とはいえ、


「………」


寝れる。




……………。





……………。





……………。




「……そっ…と…あ、まだ起きてた?」


「……なんでですか…」


「一緒に寝ようよ」


「僕それじゃあ眠れないんです」


「そんなことないよ」


「そんなことあります。凪咲さん、大前提として僕達は成人した男女なんです。ひとつの布団で一緒に寝るっていうのは」


「はいはい。でも余計なこと考えなければ、仲良い人と一緒に寝るってだけだよ?子供の時お泊まり会とかしたでしょ?」


「よ、余計なことって!それだと僕がなんか変なこと考えてるみたいになるじゃないですか!」


「そんなふうには思わないけど」


「………」


「……1時40分」


「え、もうそんな時間に」


「そろそろかな。真。自分の布団に戻って」


「………あの」


「戻って」


すごい温度差。

用済みになって急に邪魔者扱いみたいな。


なんだか寂しい気持ちになった。


でも、その後凪咲さんは布団に入ってこなかった。








………………………………next…→……







早朝。



「作戦通り。真はぐっすり寝てる」


「ニャ」


「おはようソープ。私、ちょっと出かけてくるね」


「ニャア」


「うん。行ってきます」



真を起こさないように静かに着替え、凪咲は家を出た。






………………………………next…→……





「朝の4時20分。なのにもういっぱい並んでる…」


「あら。マスターパーフェクトの彼女さんじゃない」


「ハンドウーマン。今来たの?」


「列の先頭を目指せばいいってわけじゃないの。早く来て並ぶのはミスターイナズマの十八番…でも彼は年寄りだから早起きしてしまうだけ。それ以外は自分の腕に自信がない未熟者なのよ」


「開店時間の40分前も相当早いと思うけど」


「あなたスーパーイナズマのことまだ詳しく知らないでしょう?」


「じゃあ私とあなたは丁度いい時間に来たってこと?」


「そういうこと」


「ふーん…」


「………っ、」


「どうしたの?顔色悪いけど」


「あれを見なさい」



ハンドウーマンが示した方向を見ると、誰かが遠く離れた場所で自転車を止めているのが分かる。

凪咲は視線を外さず問う。



「誰?」


「ディープブルー。この寒いのにわざと上着を着ない…あの人開店前からやるつもりだわ」


「えっと…泣き落としが武器なんだっけ」


「なんで知っ…マスターパーフェクトが教えたのね」


「まさか泣き落としで列に割り込もうとしてるの?」


「でしょうね。肉を切らせてなんとやらじゃないけど、薄着のせいでリアリティが増すから初心者は譲ってしまうわ」


「……」




ディープブルーと呼ばれる女性は寒さに身を震わせながら列の最後尾へ。

すぐ前にはハンドウーマンと凪咲がいるが…2人を見て列から離れ、前の方へ歩いていく。



「私の顔を知ってるから避けたのよ」


「…割り込むつもりかな」



そのまま見ていると、ディープブルーは列の真ん中辺りで立ち止まり




「あのぉぉぉ…!!私、私ぃっ!そこ、そこ、そこぉっ…うわあああああああああん!!!」




「待って思ってたのと違う。朝からあんな大声で騒いだら」


「無反応を貫きなさい。耐えればディープブルーは諦める。…まあ、絡まれたあの人はもう無理そうね」




ディープブルーに目をつけられた女性は「だ、大丈夫ですか!?なんでそんな格好を…あ、あの…」つい反応してしまい列から離れてしまう。



「あう!あう!うわああああああ…」


女性の肩に縋るように抱きつき、大泣きしながら女性ごとクルッと回り立ち位置を入れ替わると…スッと列に横入りした。

瞬間、ディープブルーは大人しくなった。


「え…?あの、そこ私が並んでた…」


「………」


「あの。すいません」


「何言ってんだ!列の後ろに並べよババア!!」


ディープブルーは態度を変え、女性に怒鳴った。





「真が超危険って言ってたけど…想像以上かも」


「あんなのディープブルーの被害じゃ優しい方よ」


「追い出された人、誰にも助けてもらえないね」


「諦めて帰るしかないわ。ああなったら居心地悪いし」


「これが当たり前なの?」


「アレが常識はずれなだけよ」


「………ハンドウーマン。あなたを先輩と思って聞いていい?」


「どうぞ。後輩ちゃん」


「…あの大きい"肉団子"、まさか女性?」


「え………嘘でしょ…」


「何、今度は誰?」


「ハリケーンよ…」


「ハ、ハリケーン?あれが?…真…あれは大柄って表現じゃ足りないよ…!!」



歩く度に大地を揺らしそうな太い足。

自然な状態でも両腕は下に伸ばせず、腹に押されハの字になっている。

茶色のダウンは今にも弾けてしまいそうで…



「あの人上着要らないでしょ」


「脂肪を着てるものね。ふふふふ…」


「…え、列に並ばないの?」


「ハリケーンはあの体が武器。泣き落としよりも確実に効果がある…見てなさい」





ハリケーンは列の先頭へ。

そこにはカイロを揉みながら寒さに耐えている女性が。


「…な、なんですか」


「どけ」


「無理です」


「どけ」


「……」


ディープブルーの泣き落としを見ていた女性は、関わるだけ損だと考え無視をすることにした。




「ハリケーンが相手の場合は無視しちゃ駄目よ。…ああなるから」





「うぅんっ!!」


ハリケーンは女性に突進。

車にでも激突したのか…そう思わせる吹っ飛び方で女性は列から離れた。




「今回は大変な回になりそうね。…改めてようこそ、スーパーイナズマの"戦争"へ」


「その気になれば全然怖くないけど。…でも毎回こうなの?真はいつもこういう人達とやり合って…それでもマスターパーフェクトって異名を?」


「ええそうよ。通常回ならハニートラップが男性陣にとって1番の天敵だけど」


「今日はいない?」


「ハニートラップはガールズデーでは雑魚だから」


「…ガールズデーに限定したら誰が強いの?」


「物理的に強いのは見てわかる通りハリケーン。売り場でもあの体が猛威を振るう…。それと、ガーディアンもすごいわね」


「ミスターイナズマの奥さん」


「そう。その次はツネさん」


「ツネさん?え?異名?」


「抓るの」


「……」


「想像してみなさいよ。ほしい商品に手を伸ばしている時に、手の甲とか薄い部分を思いっきり抓られて…慌てて手を引いたら青黒い痕が残ってて…商品も売り切れ…最悪よ」


「…確かに」


「マスターパーフェクトはガールズデーについてはあまり詳しくないから。彼の知らない強敵は多いのよ」


「ハンドウーマン。あなたは…どうなの?武器のハンドクリーム、無いんでしょ?」


「もう手はガサガサだわ。それならそれでやるしかない。子供達を満足させてやりたいもの。本気よ」


「開店までまだ時間がある…はい」


「…あなた…どういうつもり?」


凪咲はハンドウーマンにある物を差し出した。


「昨日、スーパーイナズマから帰る途中にドラッグストアに寄ったんだけど、2本セットでお試し価格だったから買ってみた」


「ハンドクリーム…敵に塩を送ることになるわよ?」


「ふふっ。私の"彼"はマスターパーフェクトだよ?初参加だからって何も準備せずに来たわけじゃない。ちゃんと下調べはしてある」


続けて凪咲はスマホの画面を見せた。


「…これ、イナズマの店内地図じゃない…しかも売り場ごとに特売品を書き込んである…!」


「見て。角の特設売り場は化粧品…20本限定でハンドクリームも売ってる。これ相場は1本598円なのにメールには63円って書いてたよ」


「でも売り場は入り口から遠いし、目玉のバレンタイン企画の売り場からも離れてるわ…無理ね」


「私、やる気を出せばミスターイナズマよりも速く動けるよ」


「……何が言いたいのかしら」


「なんだかんだ言っても私は初心者。商品の取り合いになった時、ルール違反が怖いからどうすればいいか分からない。でもあなたは知ってるし、経験豊富」


「うふふふふ…!マスターパーフェクトのライバルよ、私は。協力しようって言いたいの?」


「ハンドクリームさえあれば、マスターパーフェクトのライバルを名乗れるほど強いんでしょ?私はマスターパーフェクトが最強だと思ってるから」


「裏切るかもしれないわよ?」


「それでもいいよ。次回からちゃんとあなたにも敵意を向けるだけだから」


「……このハンドクリームはもらうわ」


「うん。使って。それは協力を持ちかける材料じゃなくて、シングルマザーと聞いて応援したくてあげただけだから」


「…余計なことを……でも…ありがとう」





ハンドウーマンはゆっくりとハンドクリームを手に馴染ませていく。

その横で凪咲は開店時間を待つ。





「うわぁ…。連絡、連絡。今日は厄介なのが2人います……はい。お願いします」



警備員が1人。

凪咲達の横で誰かに連絡すると、並ぶ客全員に声をかけて列を整え、同時に注意も行う。



「えー、もう間もなくスーパーイナズマは開店します。えー…、店内ルールを守らなかった場合、我々警備の者が退店をお願いしますので従ってください。えー、本日はガールズデー特売となりますので、男性の方がいましたら参加はご遠慮ください。……えー、あとは…」



「緊張する?」


「全然。帰ってどれくらい得したのか調べるのが楽しみ」


「それでいいわ。…開くわよ」


ハンドウーマンはクリームを使い切る。

それと同時に列が動き出した。






………………………to be continued…→…


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