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僕達に与えられた使命。…と、新たな日常。  作者: イイコワルイコ
チョコレート戦争
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第1話「新たな参加者」





「よし。これで凪咲さんも参加できます」


「登録簡単だったね。身分証とか必要になるのかなって思ってたのに」


「ルールはどんな理由でも守ってください。簡単に参加できる代わりにペナルティがとっても厳しいので」


「分かった。…楽しみだなぁ」




今日はスーパーイナズマに来た。

憧れの"ミスターイナズマ"は夫婦で特売という戦場に参戦し、必ず大勝利して帰るのだ。


今後のために僕にも…"マスターパーフェクト"にも戦場を共に生き抜く相棒が必要だと考えた。

凪咲さんもこれで特売に参加できるようになる。



「ねぇ真。あの女の人、私達のこと睨んでる?」


「彼女はハンドウーマンです」


「ハンド…なに?」


「ハンドウーマン。異名みたいなものです。特売日に一定以上の活躍をすると店員さんが名付けてくれるんです。以降はお店公認のお得意様になれます」


「…異名?」


「はい。彼女は開店前にハンドクリームを1本使い切って手をヌルヌルベタベタにするんです。そして絶妙な手捌きで商品を掻っ攫う…子育てのために戦う…ん?」


違和感。


「凪咲さん、ちょっと挨拶してきます」


「うん」



近づくと態度が変わった。

ライバルに向ける鋭い目をしている。


「こんにちは」


「あら。マスターパーフェクト」


「ハンドウーマン…何か…何かあったんですか?」


「……何も」


「………?」


一瞬だけ彼女の全身をチェックする…、左手だ。


「指輪…」


「っ…」


「旦那さんと喧嘩ですか」


「いいえ。離婚したのよ」


「離婚…!?」


「子供のために節約をしていたのに!あの人は私のハンドクリームを全部捨てて、節約で浮いたお金を貯めてた貯金箱を…ゴルフクラブに変えたのよ」


「うわ。それはひどいですね」


「散々贅沢してきただろ?クリームばかり買いやがって、俺にも良い思いさせろ。…私のハンドクリームはネットで訳ありの激安品を買い溜めしてるだけなのに!ずっと頑張ってきたのは20万もする棒のためじゃないっての!」


「……え、待ってください。平嶋さ…ハンドウーマンはお子さん4人いますよね?」


「ええ。だから生活はかなり厳しくなった。悪いけど今後は不正を疑われてもおかしくないくらいギリギリでやらせてもらうから。一番上の子がものすごくよく食べるのよ。しかもお肉が好きだから…はぁ…」


手が荒れている。もしかして


「ハンドクリーム使ってないんですか?」


「買うお金が無いんだから使いたくても使えない。頼っていたツケかしらね…イナズマでまともに買い物が出来なくなったら…」


「………」


事情があるし仕方ないのは分かっているが、ライバルが引退間近な状況だと…見ていて少し…寂しいような。


「あの、ハンドウーマン」


「同情?マスターパーフェクトが?」


「……すいません。余計なお世話ですよね」


「そう。ま、あなたが女の子だったら"ガールズデー"で協力することもあったかもしれないけど」


「ガールズデー…」


現代ならでは。

スーパーイナズマの特売は大体いつ開催するか決まっているのだが、不定期開催されるものもある。

その中で比較的多く開催されるのがガールズデー。


女性会員のみ参加可能で、食品などの他に一部のブランド化粧品などが90%オフで売られる。

化粧品目当てに若い女性が参加するも、ことごとく敗北して泣きを見ることで有名だ。


この特売では"2人1組"が攻略の大前提となる…でもこの情報は異名持ちでなければ…


「ほら、彼女が待ってるんだから行きなさい…もしかして、マスターパーフェクトが節約するのはデート代のため?」


「え?え?あの…いや」


「ふふっ。こんにちは」


「凪咲さん」


「あなたがハンドウーマン?」


「ええそうよ。…若いっていいわね。男に困らないでしょう?」


「あなたは不思議に思うかもしれないけど、身も心も美しい人ってパートナーを頻繁に変えるようなことしないんだよね」


「うふふふふふふふふ…」


「ふふっ…」


え。なんだろう。

ハンドウーマンと凪咲さん、初めて会ったばかりなのに…目が笑ってない。


出会わせてはいけない2人だったのか…!



「あなたも会員になったんでしょう?」


「真と一緒に参加するつもりだけど」


「なら、お荷物にならないようにしないと」


「…私が?」「あの…」


「戦場よ、ここは。あなたみたいな若い女の子が泣きながら店を出ていく姿…何回も見たわ」


「ふーん。ハンドウーマン、あなたも泣いて帰ることある?まだ経験無いなら私が」


「そこまでです。凪咲さん、もうやめてください」


「真…」


「ハンドウーマンは4人の子供を育てるシングルマザーなんです。もちろん特売ではライバルになりますが、今日は特売ではなく通常営業です。…だから今は」


「いいのよ。マスターパーフェクト」


「マスター…パーフェクト?」


「あなたの彼氏の異名。知らなかった?」


「……次は月末です。その時にまた」


「ええそうね。手加減しないから」







………………………………next…→……






帰宅。


凪咲さんは興味があるようで色々聞いてきた。



「ねぇ。マスターパーフェクト?ってどんなあれなの?」


「……店内の巡回ルートから何もかも完璧なんです。欲しいものはまず逃しません」


「…パーフェクトだもんね。じゃあ真ってすごいんじゃ」


「いいえ。異名を最初に手に入れたミスターイナズマが最強です」


「ミスター…」


「おじいちゃんなんですけど、昔陸上選手だったみたいで。開店前は先頭に並び、開店直後に欲しいものだけ取って最速で会計まで済ませてしまうんです」


「でもおじいちゃんなんでしょ?」


「生で見たら尊敬しますよ」


「………」


おふざけとまでは思っていないが信じきれない様子。


「せっかくなので、色々と教えておきますね」




紙とペンを用意。


店内図と売り場の基本配置を書く。

肉がメインの場合の巡回ルート、野菜がメインの場合の巡回ルート、

あとは季節物が絡んでくる場合の売り場の特殊配置…その場合の目玉商品確保のための最速ルート…


あと


「待って!そんなに…?」


「マスターパーフェクトですから。事前に分かっていればミスしても柔軟に対応できます」


「……分かった。…勉強だね、これ」



そして要注意人物達。

ハンドウーマンはライバルだから当然だが、その他にも厄介者や曲者が揃っている。



「え、ミスターイナズマとその奥さんのガーディアンは無視でいいの?」


「はい。2人は生ける伝説です。心配は無用ですが、年寄りなのは事実なので無理に争って体調を崩されても…」


「皆無視してるの?」


「ガーディアンは時々争いに参加します。でも無視した方がいいです。他に注意したい人が多いので」


「…そっか。ねぇ。ハンドウーマンってこれ反則じゃないの?」


「ハンドウーマンはあくまでも商品争い中にカゴの中から取っていくので…」


「グレーなんだ?」


「はい。普通に取り合いしても手がヌルヌルなので強いんですけどね」


「…この赤丸でチェックした人達は?」


「参加率が低い人達です。ただ、参加してきた場合は超危険です」


「ハリケーン」


「欲しいものを手に入れるために体の強さで勝負してくる大柄な女性です。僕は個人的に暴れ牛とも呼んでいます。この人が通り過ぎると綺麗に整理された陳列棚がめちゃくちゃになるんです…たまにダメになった商品を弁償することもあります」


「ディ、ディープブルー」


「泣き落としを武器とする女性です。とにかく大泣きするんです。まるでこっちが悪いような…そんな気分になって…どうぞって譲るように…僕この人苦手です」


「ハニートラップ」


「シンプルです。露出の高い服で参加して、争い中に体が触れた相手に痴漢的なことを訴えて商品を渡すよう言ってきます」



「…なんか自信なくなってきたかも」


「凪咲さんは運動能力を武器にしましょう。僕の作戦を聞いてください」


「あ、待って…スーパーからメール来たよ」


「……あ!ガールズデー!!」


「え、なに?」



凪咲さん宛に、ガールズデー特売のお知らせが届いた。


「読んでみるね…開店時間…え、朝の5時?……目玉商品はバレンタイン企画の対象商品全て…えっと70%オフ」


「うぉぉぉ…!」


「あ、化粧品もあるんだ。…え、待ってチョコレート2kgで198円?嘘でしょ?」


「本当です。それがスーパーイナズマの価格破壊なんです」


「………ガールズデーは女性会員のみ参加可能です…真出られないじゃん」


「はい…」


「……真が一緒の方がいいかな。経験者がいないとちょっと不安だし」


「ですよね」


「行ってほしい顔してる」


「いいえ。してません」


「チョコレート食べたい?」


「………」


「あ、バレンタインだもんね。もう少し先だけど」


「無理にとは言いません」


「でも2kgのチョコレートもらっても食べきれないでしょ」


…む、だめか…折れてくれるかと思っていたのに。


「ごめんね。あ、そういえばそろそろいい時間じゃない?」


「あ…そうですね」



携帯ショップの予約の時間だ。

新たに自分のスマホを買い直す。

…ついでに安い布団も買っておこう。

前のやつは…使えなくもないが染みが気になるし。

なんだかんだで凪咲さんと一緒の布団だとぐっすり寝られない。






………………………………next…→……






「ありがとうございましたー」





危うく最新機種を買わされるところだった。

…機種代金で12万円しかもオプションを追加したら…もう思い出したくない。


「とはいえ」


実際に購入したのも7万円する。

中古のスマホを買えばよかったかもしれない。


耐衝撃、防水防塵、とにかく頑丈が売りの機種だ。

しかも万が一破損した場合、メーカーが新しいものと無料で交換してくれるらしい。良いキャンペーンだ。



「…ん。メールが」


電話番号とメールアドレスは前と同じものにしてもらえた。

問い合わせてみるとメールが一気に20件も…



「ダンさんだ」


件名 もしよければ


力を貸してほしい。

突然ですまない。

今私とジュリアはある代行を追っている。

どうやら創造の書の歴史について何かを知っているようだ。

戦闘部族の末裔らしい…



これが届いたのは…昨日か。

帰ったら凪咲さんに相談しよう。



「こっちはサラさん」


件名 見てくだーい!


オヤビンどんどん大きくなります!

ごはん食べすぎですか?

猫のダイエットってどうやりますか?



凪咲さんからアドレスを聞いたのか。

これも昨日のメールだ。

添付画像には…お好み焼きにがっつく黒猫が。




「なんか、いいな」



以前は電話としての機能をほとんど使っていなかった…友達はいないことはないと思うが…。


「いなかった…かも」


今までは。






………………………to be continued…→…


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