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僕達に与えられた使命。…と、新たな日常。  作者: イイコワルイコ
Case8 _ 呪いの源泉
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第3話「心霊パワースポット」






突然スマホに変化が起きる。

画面には霊が映り、こちらに声をかけてくる。

会いに来て…その後、いくつかの景色が映される。


分岐その1。

…ここで画面から霊の手が出る。

自力で逃れる術はなく、無抵抗なまま首を絞められ死ぬことになる。


分岐その2。

…改めて霊が声をかけてくる。

会いに来なければ殺す…そう言い残して…



パターンとしてはそのまますぐ殺されるか、本当に会いに来いと伝えてくるか。


これはスマホに映る霊を見た者にしか分からないこと。


気になるのは、僕と凪咲さんはスマホから出てきた手を見ることができたし、攻撃することも出来た。

電車内で襲われた男性の周りにいた人間は誰も気づかなかったのに。


全員が見られるわけではない。



「私達は代行と使者。創造されたものって考えた方が自然だよね」


「僕達はたまたま目撃と被害の両方を経験しましたが、ラーメン屋のあの人は…」


「店主は代行で犯人。または、店主も代行で私達みたいに偶然巻き込まれた。…飛び抜けた答えとしては、ラーメン屋の店主も霊も創造された存在で予告と実行を担ってる…黒幕の代行が別に居る…とか?」


「…着きました。準備中ですけど入りましょう」


この方が邪魔が入らなくていい。




ガララ…。


入店すると、店主はスープと睨めっこしていた。

準備中なのだから自然な光景だ。




「すいませんねお客さん、まだ店開いてないんですよ」



「創造の書を渡して」


凪咲さん?



「お客さん、ちょっと何言ってるか分からないんですけど」



「渡さなければ、あなたを殺して探すだけ」


…凪咲さん、何を



「物騒なこと言わな…あ、誰かと思えば」


客の顔を覚えているようだ。

とはいっても僕達はかなり最近の客だ。


「真。指輪」


「はい!」


電車内で指輪を着けておいた。

…そうか。創造の書という単語を聞かせ、殺すと脅し…店主に意識させる。

そして僕が触れて覗きの指輪の効果で…これならわざわざ聞き出す必要はない。



厨房に侵入。


「ちょっと!お客さん!何やって」


タッチ。












………「やっ、やめてくれぇ!」



尻もち。

これはラーメン屋の店主の視点だ。


ちょうど…この厨房。

床を四足歩行で素早く移動してくるのは、スマホに映し出される霊…だ。

迫ってくる霊に怯え、カウンターの向こうに


「な、なんでもする!だから殺さないでくれえ!!」




「なんでも?…なら従え」



霊がジリジリとこちらに迫る。

ほんの少し手を伸ばせば簡単に触れられる距離だ。


異質な存在。髪の隙間から見える目が恐ろしい。


霊は店主の体に触れる。

腹…胸…それから鎖骨をなぞり…首に手をかけ…店主に跨る。

逃げられはしない。その気になれば簡単に殺せる状況。



「お前は人々に伝えろ。話を聞いた人間はまた別の人間に…伝染していくだろう。100の死を迎えた時、お前を解放する」


「……ひゃ、ひゃく…?」


「この紙に書いてあるものを伝えろ」




……ずっと霊に睨まれている。

動けない。声の主が店を出るまで…ずっと…ずっと…









「……見えました」


「何なんだお客さん!け、警察」


「あなたも霊に呪われているんですね」


「っ………」


「何者かに指示されたんですよね。スマホに取り憑く霊の話を言いふらせと。100の死…おそらく、被害者が100人になるまで」


「どうしてそれを…!!」


「あなたは普通の人。なのに目撃と被害の両方を語れるのはそういうことなんですよね」


「じゃあ代行の仕業?」


「…はい。目的は不明ですが」



店主に助けてくれと縋られた。

でも約束は出来なかった。





………………………………next…→……





ラーメン屋を離れ、僕達は深火寺付近の屋台へ。


再びやってきたのは僕のわがままだ。




「焼きとうもろこし2つください」


「はーい!600円!ちょうどですね、まいどありがとうございまーす!」



手がかりは…代行が犯人だったということだけ。

霊も使者ということになる。


でもそれだけだ。

ラーメン屋の店主も被害者で、代行の居場所は知らなかった。


呪いを解くためには言われた通り…指定された場所に行かなければならない。

その場所もどこか分からない。



これからの大変さを考えると、今のうちに自分を元気づけたいと思った。


これは前倒しのご褒美なのだ。




「醤油のしょっぱさがたまらないです…付いた唇を舐めたくなるほど…ん〜…」


「美味しいね。………」


「代行の仕業だと分かった今、想定しておかないといけない展開があります。それは分岐その2に該当するのは全員代行か使者であるということが必須条件ですが」


「……待って。頑張って場所を特定しても呪いを解くことは出来ないってことだよね?それ、呪いを解いてほしかったら創造の書を渡せって」


「でしょうね。代行なら助かるかもしれません…でも使者なら本の所有権が移るので生かされるかは…」


「そういう取り引きって…映画とかだと結局皆殺しにしてない?」


「ですね。無防備になった相手をわざわざ逃がすのかというと…。でも行かなければ呪いが残る」


「スマホを見なければ助かったり…」


「多分テレビからとか、鏡とか、どんな形でも出てきますよ。どうせ。霊ですから」


「真…」


「わざわざ…噂するようにラーメン屋の店主に指示したり。代行かどうかを選別したり。そして、自分達の有利な場所に誘導したり。…効果は強力だけど、そのための手間が……うーん…もしかしたら、直接対決には弱いタイプってことは考えられませんか?」


「……こちらが上の立場だって主張することで従わせようとしてる…感じはする」


「霊といっても使者です。戦って倒すことも可能なはず。…その場所には必ず代行もいるはずです。姿を見せたら速攻で相手の本を破壊する…それで創造の効果を破棄すれば」


「呪いを解ける!」


「僕達にしては珍しいですが、暴力的に解決しましょう」


「うん…!」





………………………………next…→……








「田舎寄りで、森みたいなのがあって、破壊された鳥居…あと蓋が割れた井戸…」


ヒントは多いようで少ない。

インターネットカフェに入り2人で検索を続けること2時間。



「心霊スポットだと…井戸なら見つかるんだけど…」


「鳥居ってそう破壊されるものでもないですからね…」


結局は場所が特定出来ないと話は進まない。


「…あっ…違う。これは井戸がない」


「でも、見つかりにくいということは似た場所は他にないということになりますよね。…ちょっと雑誌コーナー見てきます」



DVD、漫画…初めて来たが色んなコンテンツが用意されている。

特に雑誌。毎日のレシピ集やら刺繍アレンジやら…猫の飼い方も。様々なジャンルのものがある。

そしてもちろん、


「最恐心霊スポット大全集…行ってはいけない心霊スポット特集…実話を集めた心霊スポット体験談…」


当然のように置いてある。

肝試しで心霊スポットに行く人達が少なくないからだろう。


…ペラペラ捲ってみると、立ち入り禁止などの表示には従うようにと注意もしている。



数冊取って戻ると、凪咲さんはため息をついていた。



「大丈夫です。必ず見つけます」


「ありがとう…少し休んでいい?目が疲れちゃって」


「はい」


凪咲さんが休憩している間に見つけられたらいい…が。



心霊とは関係ない、ホラー映画から引用したお化けの画像がたくさん掲載されている。


……しっかり読むのは避けたい。





県別心霊スポットベスト3。


………都内の隠れ心霊スポット。


……近づいてはいけない廃病院。


…2度と帰れない(かもしれない)最恐廃墟。




「ねえ、サラからメール来てる。オヤビンにおすすめのトイレありますか?だって」


「猫用のですか?…僕はネットの評判を基準にしたので…」


「というかオヤブン喋れるしトイレくらい人間のでも使えそうだよね」


「たしかに…!」


「じゃあ人間のを使うようにって返信してみるね」


「………」



楽しい話題からどん底へ。


…まさか自分から心霊だなんだと書いてあるものを読むなんて。



「…ん?」


心霊スポットとパワースポットは紙一重!?怖さを力に変えろ!心霊パワースポット!


なんて特集記事だ。

肝試しついでに!ってなんだ。

一石二鳥!なわけがない。




………あ、あれ…?




「凪咲さん」


「どうかしたの?」


「これ…」


「なになに?」




森の奥地に存在する超心霊パワースポット!!


現在は合併により地名が欠月に変わったがスポットは健在。

過去に大地震で壊れてしまった鳥居が特徴的で、修復のために派遣された人々は全員謎の呪いにより死亡してしまったとか。

この鳥居の存在は地元民にも謎で、奥には井戸がポツンとあるだけ。

井戸の中に神がいる…または、悪霊が…なんて噂されている。



「これ以上ぴったりな場所ありますか?」


「ここなのかな…」


「早速行きましょう。欠月って場所に」




行き先が決まった。

出る前に雑誌コーナーに戻しに行こう。




「よかった。それっぽいのが見つかって…あとは凪咲さんと協力して代行を倒す心構えを」



「あ、すいませんそれいいですか」



男性だ。金髪で…まだまだ"遊びたい"という雰囲気が伝わってくる。

それにしては似合わない丁寧な話し方。

僕の片付けようとした雑誌を読みたいようだ。



「どうぞ…」


「ありがとうございます。これこれ、廃病院。どうも」




肝試しの場所を求めているのだろう。

……理解できない。






………………………………next…→……






電車移動は混んでいなければ嫌いじゃない。


長い時間座席で揺られていると、駅弁を箸で突っつきながらのんびり…とか想像してしまう。

少なくとも今はそれを叶えたいとは思わないが。



「ふぅ…」


「凪咲さん。戦闘に関してはやっぱり凪咲さんの方が理解してるので、何かあった時は指示をお願いします。僕は僕で気づいたことがあれば"考えて伝える"ので」


「うん…」


「不安ですか…」


「私の世界では…ね。極端だけど、死んでも時間が経ってなければ生き返らせることができる。それぐらい魔法の力に頼ってた。時限爆弾を体に巻き付けられたとしても、体の一部を丸ごと切断して爆弾を外すことも」


「なんか、グロいですね…」


「でもここではそうはいかない。私にちょっとでも何かあれば急に過保護になる家族はいないし…魔法でどうにかっていうのも出来ない。失敗出来ないんだって思うと」


「………」


「強い使者が相手なら倒せばいいだけって考えるけど。呪いだもん。時が来る前に解決しないとって」


「凪咲さん…」


「私がピンチになるってあまり考えてなかったんだよね。代行同士の戦いなら基本的に使者より代行を優先して攻撃するだろうし、私は真を守っていれば」


「凪咲さん、ちょっと」


「ん?」


「あれを」



電車の中からでも見える。


目的地に着いたのだ。



田んぼが広がっていて、少し遠くに森が見える。

不思議だ。巨大なブロッコリーのような見た目の森…こんなに離れてるのに、嫌な感じがする。


「あそこなの?」


「結構広そうですね」


「地元の人に聞いてみようよ。大体の行き方を教えてもらえるかも」



ヴヴヴ…ヴヴヴ…



スマホが着信を知らせる。

でも今はタイミングが悪い。

凪咲さんは取り出そうとしたけど寸前でやめた。



「真のスマホ、新しく買わないとね」


「あ…そうですね」


「ふふっ。なんか面白い」


「え?え?急にどうしたんですか?」


「だって、お化け屋敷で気失うくらい怖がってたのに。今から本当の心霊スポットに行くんだよ?なのに真がすごくしっかりしてるっていうか」


「………」


「今回は私が頼ることになりそう」


「変なこと言わないでください。どうせ後で僕から凪咲さんに泣きつくことになるんですから」



まだ、ここに目的の代行がいると決まったわけじゃない。

なのに僕達は確信していて、2人でじっくりと心の準備をしていた。





「えー、次はー、次はー、欠月ー、欠月ー、」







………………………to be continued…→…


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