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僕達に与えられた使命。…と、新たな日常。  作者: イイコワルイコ
Case7 _ ゴーストハンター
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第5話「香ばしい匂い」





運命とかいうやつは、とても意地悪だと思う。

チャンスを求める者には目もくれず、ピンチを嫌がる者にはやたらと関わってくる。



「…耳栓と眼鏡を創造しよう。不要な音は聞こえなくて、どんな暗闇でも真っ昼間みたいに明るく見えるように」


「真。妖怪屋敷なんだけど、2人1組でしか入れないんだって」


「……え?え!!」


「すごい嬉しそう」


「だって、だって」


「ほら。入場制限。観光スポットにあるから人気みたい」


「凪咲さん」


「うん。サラのこともあるし、悪いけど真は外で」


「何も悪くないです!存分に楽しんできてください!!」




もう色々と撤回しよう。

これが運命。僕はこのふざけたお化け屋敷には入れない。そういう運命。

うん!うん!


僕の思考を読んだのか、中に入っていく前に凪咲さんが僕を見てちょっと笑った。




「……待ってる間何をしていようかな」


出てくるまで長くても10分くらいと仮定して、近くで和のスイーツでも堪能しようか。

いや、それよりレトロなおもちゃを扱ってるお店も…

ああ…僕は今ものすごく気分がいい。



「着物フィギュア?あ、面白そう」


人を避けながら店に近づく。

ショーウィンドウには見たことのあるキャラクター達が着物姿のフィギュアになって並べられていた。

老舗の着物店がコラボして実現したようだ。

国内外問わず様々な作品とコラボしているらしい。


「……凪咲さん、着物似合いそう」


ピンク気味の甘い赤?爽やかで上品な青?黒系もいい。

……ん。


「フィギュアは1万円前後だけど着物はさすがにそうもいかないか…」


1点限り訳あり特価品という安くする言い訳を限界まで並べた着物でさえ11万円。

探せばもっと手を出しやすい着物は見つかるのだろうが、このお店の着物はそれなりの……


「んぅ?」


突然体がブルッと震えた。



「お兄さん。そこのお兄さん」


「………僕です、か?」



着物を着てる。あ、店員さんか。

洋服店で客にくっついてひたすら商品を勧めてくる店員みたいなことを想像した。



「さっきから見てましたけど、お兄さん…」


「……な、なんでしょうか」


「ちょいとこちらに来てもらえます?」


「………」


なんだろう。店の奥へ案内された。

…うわぁ、さすがに奥の方まで来ると売り物の価格帯がすごいことに…。


「お兄さん、幽霊とか信じますか?」


「はい?」


「見た目こんなんですけど、これでも霊感があるんですよ?」


見た目は普通に着物を着た40代くらいの女性だ。

……まさか霊から身を守る力があるとか言って着物を売りつけるなんてことは


「霊感って言っても、色々あるんです。よくあるのは幽霊が見えるとかですけど、例えばその人が近いうちに亡くなってしまうとか…そういうものを」


あ…もしかしたら真面目に聞かない方がいいのかもしれない。


「この店からお寺も近いでしょう?だからうちにもそういう力が」


結構おしゃべりな人だ。…外から着物を見てる人はいっぱいいるのに店内には客がいないのはもしやこの人のせい?


「それでね。お兄さん、あまり良くないことが近々起きそうなのよ」


「え?」


「よーく、よーく、気をつけてほしいなと思って声かけたんです。前にも同じ雰囲気の人が車に突っ込まれて酷いことに…」


店選び、間違えたみたいだ。

大人しく和菓子とか団子とかにすれば


「目」


「っ…!?」


いきなりなんだ。


「目。…それしか言えないけれど。…そうそう。これ持ってって」


そう言ってお守りを差し出した。


「気をつけている間は大丈夫。でも忘れた頃にやってくるから」


「あ、ありがとうございます…」



ようやく解放されて店を出た。

とにかく意味深な雰囲気を全面に出してた人だった。



そろそろ妖怪屋敷の近くに戻ろう。



ドン。


「………」


「あ、すいません」



ぶつかってしまった。

……相手はそのまま行ってしまった。

観光客の中では少し目立つ格好だった。

なんというか、真っ黒。

後ろ姿を人混みの中でもずっと追えるくらい。






………………………………next…→……






「あ、真ー!」


なんだかんだ20分くらいだったか。

…お化け屋敷に20分?本当に入れなくてよかった。


「中どうでした?」


「全然。妖怪屋敷というか、妖怪展覧会?」


「それはどういう…」


「こんな感じ」


中は撮影OKらしい。

……日本の妖怪を、イラストレーターが描いて…それと一緒に残ってる文献とかを…中は普通に電気もついてるし、なんならバスガイドみたいな人が案内してるような。


「で、入場特典でこのシールもらったよ」


河童ガール?河童なのは分かるが、どういうわけか絵が美少女化されて…


「擬人化みたいなことじゃない?」


「…サラさんも?」


彼女が見せてくれたのは天狗…でもスーツを着ている。

…No.1ホスト、TENGU。…うわぁ。


でも…サラさんは満足してるみたい。



「じゃあ今度こそお寺に」


「真。サラが」


「……じ、自由だ」


大きなおもちゃ屋さんに来た子供みたいに目を輝かせてどんどん勝手に歩いて行ってしまう。


ワーオ!とか、オーマイガー!とか、そんなのが聞き取れた。


「でも結局お寺の方に向かってるみたい。やっぱり海外の人にとっては面白いんだろうね。日本のこういう…」


「凪咲さん?」


「ううん。なんでもない。迷子にならないようにサラを追いかけようよ」



その後は、結局僕達も楽しんだ。

かなり遅れたけど初詣としてもここに来られてよかったかもしれない。


…お寺の外観を気に入ったらしく、サラさんは周りをぐるぐる歩き回りながら何枚も写真を撮ったりしてた。

携帯なら手軽に撮影出来るけど、彼女はきちんとしたカメラを持っていた。



「サラがお腹空いてきたみたい。屋台もいっぱいあるから私達も何か食べる?」


「ですね!」


寺の正面にはズラーッと屋台が並んでいる。

行きは仕方ないと思っても帰り際にはついつい買ってしまう…上手い配置だ。


焼きとうもろこし…いいなぁ。


「裏のとこにテーブルとかあるよ。色々買ってそこに集まろ?」


「あ、はい」


「真。私の分もお願いしていい?」


そうか、凪咲さんはサラさんに付き添わないと…。


「分かりました。食べたいものはありますか?」


「真と同じのがいい。お願いね!」


「…はい」


なんとなく、言い方が…ドキッとした。



「よし、色々買っておこう」


なんならサラさんも後から他の食べ物に興味が出てくるだろう。

最初からシェアすることを想定して…



「あい!まいどー!」


焼きそば。定番だ。目玉焼きが乗っていて期待が高まる。


「はいよー!ありがとうねー」


焼きとうもろこし。この香りがもう…素晴らしい。


「おう!いらっしゃい!」


肉巻きおにぎり。家ではまずやらないメニューだ。甘辛旨ダレ…楽しみすぎる。


「あざまーす!」


じゃがバター。寒い時期には体に突き刺さる美味さだろう。


「ほい、おまけね!ほらこれも焼けたばっかり!おまけ!」


8個入りのはずのたこ焼き。

おまけはたこではなくウインナーやチーズが入っている。

最終的に14個で1パック。500円。やりすぎだ。




さすがにこれ以上は持ちきれない。

というかとっくに持ちきれなくてアイアン・カードをお盆の代わりにしている。


「もう戻ろう」



確か深火寺の裏に…あ、本当にテーブルと椅子が並んでる。

休憩スペースにもいい。



テーブルの上に並べてみるとなかなか買ったなと思う。

3人で分けても…完食は厳しいか。


「つい買いすぎた…」



あとは凪咲さん達が戻るのを…あれ?

サラさん?…奥に消えていく。まさかまた寺の周りを歩いて回っているのか。

よっぽど気に入ったんだろう。


「真!サラがどっか行っちゃった!」


「え?サラさんなら今そこに」


「本当?」


「僕行ってきますよ。凪咲さんは先に食べちゃっててください」


「うわ…いっぱい!あ、じゃがバターだ…これ食べたかったやつ!」


「すぐ戻ってきます」


「うん!」



ずっとサラさんのサポートをしていたからか、じゃがバターにものすごくテンションが上がっていた。



あとはサラさんを呼び戻すだけ。

きっとジャパニーズフード!とかそんな感じの反応を…



「………あれ?」



……サラさんを見つけた。でも、彼女は寺に夢中…ではなかった。


知らない人についていってる。

全身真っ黒な格好でやけに目立つ…ん、さっきそんな人とぶつかったような。


「寺から離れてる?ちょ、サラさん!サラさーん!」



人が多いからか呼びかけても反応してくれない。


仕方なく小走りで追う…サラさん達は寺の敷地から離れていく。

…っ、地味に距離があるせいかなかなか追いつけない。



「でも姿は見えてる。見失わなければ大丈夫」



そこからさらに少し離れて、よく分からない建物に2人は入っていった。

…第2深火ビル。特に店があるわけでもなさそうだ。

サラさん、騙されて連れてこられたとかだろうか。


「あ、やばい」


遅れて中に入ると階段とエレベーターのみ。

エレベーターは2つ。…4階と5階。どっちだろう。いや、階段で上がった可能性も。



「………」


ふと、食べ物の良い匂いがした。

サラさんは屋台に行っていたから服に匂いが移ったんだ。


それによれば。


「エレベーター。4階」





乗り込むとエレベーターの中にも匂いが残っていた。


4階のボタンを押して、扉が閉まって。

妙な緊張感。


怪しい壺とか買わされていないだろうか。

もしかして。何かしらの反社会的勢力のアジトみたいなことは…考えすぎか。

いや…でも…


チーン。


「っ……」


エレベーターが4階に到着し、扉が開く。


……暗い!!


外の明るさを完全に遮断している。

真理子の怨念よりも暗い…。



「そ、そうだ。スマホのライトで」


めちゃくちゃ明るい。

これなら大丈夫そうだ。


エレベーターを降りる。

周りを照らすと…4階全体が1つの部屋になっているみたいだ。



「ヘールプ!」



「っ!」


今のは分かった!助けを求めている。

サラさんだ!



「サラさん!どこですか!」


「ヘルプ!ッッ!?」


とにかくよろしくない状況なのは分かった。

部屋中を探せばすぐに見つかる。そしたらすぐにエレベーターに乗って。



「何者だ」


「ヒィィぃ!?」


左耳に息がかかった。つまりはそれだけ近くから話しかけられたということ。


「邪魔だ。失せろ」


「彼女を連れて帰ります!」


「それはならない」


「ならないってなんですか!そもそもあなた…誰なんですかっ!」


声のする方へスマホのライトを向け…いない!?


「今すぐ失せろ。でなければ殺す」


「ウヒャアアアアア!?」


今度は右耳に息がかかった。

慌ててライトを向けてもそこには誰もいない。


「っ、サラさん!」


「ヘールプ!」


なんにしても1人は嫌だ。

呼びかけ、声のする方へ全力で走って



「痛っ」「アウッ」


「あ、サラさん!」


激突してしまったが無事見つけた。

彼女も僕が来て安心したらしく


「ヘルプミー!」


「お、おうけい!おーけー!」


抱きついてきた。

ソースの香ばしい匂いがする。



「…っ、サラさんどいてください!」


嫌な気配を感じ取れた。

彼女を突き飛ばすとちょうど僕にだけ鈍い衝撃が


「ぁがっ…!!」


「1人も2人も変わらない。死ぬがいい」


「げほっ…ぅぅ」


これまで味わった痛みとはレベルが違った。

体の深くまでグンと響く痛みが…



「さぁ、見せてみろ。お前の恐怖を」



((READ))



なっ


暗闇に一瞬変化が起きた。

それは僕の耳に問題がなければ"創造"により生まれた光によるもの。

でも、光というにはそれはあまりに黒かった。



ヒタ。


「………」


足に何か触れ…


ア"ア"ア"ア"ア"…


「えっ…!?」


スマホのライトが消えた。

慌ててスマホを…電源が入ってない!?充電は問題なかったのに!!


「何も見えな」「フフフ…」


「ひゃっ…」


女の人の声?でも男っぽいような。

どちらでもいい。問題なのは僕がここに来て聞いたサラさんともう1人の男の声と…どれでもないこと。


じゃあ…誰の声?



「どうして?どうして助けてくれないの?なんで?なんで見捨てたの?」


「早口ぃっ!?ああああああっ!!」


何者か予想がついたところで、両手首を掴まれた。

ものすごく冷たい…氷みたいに。


……首筋に息が…右耳に近づいてる…!


「や、やめ、やめっ」



「もういい。お前は…死ね」「死ね」「死ね」「死ね」「死ね」「死ね」「死ね」「死ね」「死ね」






………………………to be continued…→…


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