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僕達に与えられた使命。…と、新たな日常。  作者: イイコワルイコ
Case7 _ ゴーストハンター
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第4話「ジャパニーズゴースト」







((READ)) ((READ))





「オガルちゃん悪くないもん!」


「私の手間を増やしたのはお前だ!」




「そこまでだ。仲間割れとはみっともないことを」




「だってミスネがオガルちゃんのこと悪く言うからー!」


「もういい。ミスネ。報告を」



「…真理子の怨念というお化け屋敷に代行が。使者召喚型かと。偶然持ち合わせていた懐中電灯のせいで肌が焼かれましてね…」



「オガルちゃんよりひどーい!逃げてきたんだー!」


「その代行の特徴は」


「若い男女でした。電話で聞いた2組の内のどちらか…かもしれません」


「女子高生だったー?可愛かったー?」


「…女子高生というものが分からない」


「ミスネって女の子興味ないのー?」


「私は恐怖を食らうことだけが生き甲斐だ。こうして協力しているのも人類に最大の恐怖を与えるため」


「オガルちゃんはミスネに興味なーし!つまんなーい!」




「糞の役にも立たないやり取りはするな!!」



「……」「……」



「現在、本は44冊回収した。しかしこれまでの相手は代行と呼ぶには弱すぎる者ばかり。そうやって無駄な時間を過ごしている間にも、将来有望な代行達は力をつけていく。オガル、お前はもう1度地方へ飛べ。ミスネ、お前はその若い男女の方を追え」


「…チッ…まーた東京から離れるのかよ。だりーな」


「…分かりました」



オガル、ミスネが暗闇に消える。



「もうそろそろ場所を変えるか」


「あらぁ。珍しいじゃなぁい?あなたが人目を気にするの?」


「……」


「拠点を変えるよりも、あなたはその白衣を着替えた方がいいんじゃなぁい?汚れてるわぁ…」


白衣の男に寄り添う影。

右肩…左肩…ジリジリと白衣を引っ張り脱がせていく。


「この中にリーダーなんていないの…。あなたもただの一員にすぎない…」


「調子に乗るな、フリーカ」


「名前を呼ぶなんて。そんなに機嫌が悪いのかしら?」


「我々は大きな目的のために集まった。それでも指揮する者がいなければ」


「はいはい。もう分かったわぁ」


「次はもっと目立たない場所を用意しろ。お前の役目だ」


「……そうね。ごめんなさい、"リーダー"」


フリーカと呼ばれたそれも暗闇に消えた。




「必ずその時は来る。…焦る必要はない…。この世界が変わる時、頂点に立つのは我々…"終の解放者"だ」










………………………………next…→……





眠れない。

凪咲さんは上機嫌で帰宅して、夜ご飯もしっかり食べて今はぐっすり寝ている。


僕はというと、ご飯は少し無理をして食べた。

というのも少し贅沢なメニューだったからだ。

身が大きくてぷりっぷりな海老を使った海老チリ…良い肉を使っているらしいジューシーな焼売…それに酢豚…安く作ったバージョンなら2品くらいは並べられるが、今回は素材も違うし3品も作った。

食べ残すなんてありえないし、絶対出来立てで食べたかった。



…満腹だから眠れないのか。

というとそういうわけでもない。



今、僕の布団はない。

悲しいことにおねしょをしてしまったからだ。…あれではどうしようもなかったが…。


凪咲さんが一緒に寝ようと誘ってきたが、まだやりたいことがあるからとやんわり断った。


…ならば、布団さえあればいいのか。

残念ながらそうもいかない。



凪咲さんには記憶がないと言ったが。

実はお化け屋敷での恐怖体験をほとんど覚えている。

目を閉じるだけでその場にいるみたいにすぐ思い出せてしまう。

仰向けで寝てしまったら最後、色んな幻覚を…いや、本物を見てしまうかも?いや…そんなことは…うぅっ…


……でも、原因はそれだけではない。



あのお化け屋敷にいた代行のことだ。

たまに客が行方不明になる…みたいな噂があるお化け屋敷に代行がいたのだ。

間違いなく関係しているし、十中八九創造の力を悪用している。

いなくなった客は行方不明どころか死んでしまっている可能性だってあるだろう。


その代行に逃げられてしまった。

お化け屋敷に戻ってまた客を襲うかもしれない。

他のお化け屋敷に行ったか?

そもそもお化け屋敷じゃなくても暗闇に潜めば…。


悪意のある代行を見逃してしまった。

……気になって眠れない。




「…寒い」



暖房をつけてもいいけど…節約はしたいし。

布団に包まれば問題ない。でもその布団はない。


「………でも今更凪咲さんの布団に入っていく勇気はない」



厚着をしよう。

室内だけどダウンジャケットを着て、下もスウェットにスウェットを重ねて…



「着る毛布も言ってしまえばこんなもの…じゃない、か」


重ね着で布団の重さを再現出来ればと思ったがちょっと邪魔で苦しいだけだった。

仕方ない。ここは癒し動画でも見て寝落ちを…



「動画共有アプリ…っと」



音は出さなくていい。

山奥の綺麗な川…その流れている様子をひたすら垂れ流す動画。

焚き火を見るだけの動画。

雨…そよ風…似たような垂れ流し動画を眺める。


良い意味で退屈だ。これならもう少しで寝られそう…


……あ、動画が切り替わった。

黒猫と白猫がじゃれて遊んでる。

どっちも子猫だ…。子猫の鳴き声ってたまらなく可愛い…けどそれは我慢だ。


…あぁっ、可愛い。飼い主の手に2匹が…大人の指すらこの子達にはおもちゃに…甘噛みしてる…。



「…これじゃあ寝れない」



そうだ。凪咲さんに服を創造したみたいに、自分用に布団一式を創造するのはどうだろう。

例えば、お風呂に入ってるみたいに暖かい掛布団とか…眠気を誘う枕とか…。


不要になればページを破るだけで片付けも終わるわけだし…?


そうと決まればさっそく


「何してるの?」


「はっ…」


「言い訳する?」


「し、しません」


「それ脱いで。早くおいで」


「……はい」



僕の思考を読んで呼びに来てくれたのだろうか。

寝てると思ったけど…もしかして起こしてしまったか。



導かれるままに凪咲さんの部屋へ。


「一緒に寝れば怖くないよ?」


「…真理子は家にはいません」


「お化けって憑いてくるって言わない?」


「……言いません」


「取り憑いて、そのまま家まで。今頃お風呂に黒い水貯めてるかも」


「………」


急いで布団に入った。

…あったかい。


「2回目だね。一緒の布団に入るの」


「……話の途中で脅かすつもりですか?」


「ううん。もう言わない」


仰向けの僕に、右から凪咲さんが寄り添って…軽く抱きついてきた。


「だって一人用の布団だし。真は仰向けだけど私は横向いて寝る人だから」


「…ちょっと落ち着かないです」


「私は落ち着く。こっちだともっと落ち着く」


「あ、あの…」


枕じゃなくて僕の右肩に頭を乗せるのは…!!


「枕は真が使っていいから」


「そういう問題じゃ…」


「なんかここからでもドキドキしてるの聞こえるよ?」


「………」


「真」


「はい…!」


「例えばだけどね。私は恋人ってこういう関係だと思う」


「えっ!?」


「しー。ほら、野球部の寮で真が言ってたの…覚えてる?」


「……僕何か言いましたっけ」


「野球部のマネージャーの裸の画像が拡散されてるメッセージを見てさ…こんなのが青春なのか、恋愛なのかって」


「………」


「人間は皆違うから。ロマンチックで綺麗な恋愛をしたいと思う人もいれば、その逆で"動物的"な考えの人もいる。そういう欲を制御できなくて、汚い人間になる人もいる」


「……」


「真にはいつか恋愛…してほしいな。きっと相手のことを思って色んなこと頑張るんだろうなって想像できるから」


「…ごめんなさい。僕の発言で嫌な思いをさせて」


「ううん。あれは本当に悪い例だから。気にしないでほしかっただけ」


「………」


「美味しいもの食べて、遊びに出かけて…疲れて帰ってきたらこうやって一緒にくっついて寝る。真はどう思う?」


「ぇっ!?」


「好きな人とそうやって過ごすの。幸せだと思わない?」


「………」


「なんか、照れてる?」


「い、いえ!あの…かっ、考え事を!」


「私を見て」


「っ!?」


「ふふっ…で、考え事って?」


「あぁ!そのほら、お化け屋敷にいた代行です!逃げられたのが気になって…人を襲ってたし、またどこかで誰かを襲うんじゃないかって」


「うん」


「でで、でも?また同じお化け屋敷に戻ってくるか分かりませんし、どこに行ったかなんて」


「うん」


「………」


「うん…」


「凪咲さん?」


「真がいれば大丈夫…」


「あ、あの…!?」


「おやすみ…」


「………おやすみなさい」



とは言ったものの。

僕の心臓が跳ねるように暴れている気がする。

心音のせいで起こしてしまいそうだ。


…でも落ち着かない。

そもそも、凪咲さんはこういう時やけに優しく話すのだ。

その甘くて優しい声を聞いてると胸が苦しくなって…!

ふふっ…という笑い方も普段は優しいだけなのに今だと妙に大人っぽいというか…

もう、もう、もう。






………………………………next…→……






「………」


どうやら僕は寝ていた。

なんだかんだで寝られたのだ。

まだ瞼が重いが、目を開けると凪咲さんは変わらず同じポジションでスマホを触っていた。


「おはよう。真」


「…おはようございます」


「サラから連絡来てるよ」


「え?サラさん?」


「うん」


「連絡先交換してたんですか?」


「まあね。悪い人じゃないし…頼れる人がいた方が彼女も観光を楽しめそうだし」


「それって、また会うってことですか」


「うん。行きたくなかったら私だけついていくから大丈夫だよ?」


「あ、いや、それは僕も行きますよ」


「やっぱり有名なお寺とか連れてってあげたら喜ぶかな?」


「…そうですね」


「深火は?観光スポットとしても有名だし、深火寺も有名だし」


「人力車とかもありますしね」


「じゃあ誘っていい?」


「はい」


「屋台とかもあるし…あ、さっそく今日がいいって」


「…急ですね」


「予定とかある?」


「ないです」


「もしかして。1日中こうしてたいとか?」


「え……」


寝る前はやたら緊張していたが、実際は嫌じゃない…むしろ嬉しいくらいだった。

今は起きたばかりで頭がぼーっとしているから、緊張もなくただ心地いいだけで…ああもう。これも凪咲さんには全部筒抜けだ。

でもこうして頭で考えることは止める方が難しい。


「じゃあサラとの待ち合わせは昼過ぎにしよっか」


「分かりました…」


「まだ朝の7時前だよ。出かける準備と家のことをやるのに大体2時間あればいいから…3、4時間は余裕があるね」


「そうですね」


「このままくっついて寝てよっか」


「………それでお願いします」


「ふふっ」




「ニャアーー」




…そこにソープが割って入ってきた。

せっかく良い気分だったのに。


布団の上を歩いて、凪咲さんに甘えてる。

くっ……


「おはようソープ。…はい、お手」


「ニャ」


「おかわり?」


「ニャ」


「じゃあぎゅーは?」


「ニャア」


なんだ、ぎゅーって。

凪咲さんの手首にソープが抱きついてる!

お手とかは聞いたことあるけどそんな芸もあるのか…!?


「じゃあ…、あれれー?」


「ニャ…」


「今度は頭抱えて悩んでるじゃないですか!」


「ソープって賢いよね」


「賢いだけでこんなに覚えます?というかお手とかそういうのって犬に教えるんじゃ…」


「いいの。ねー」


「ニャアー」


「息ぴったり…」






………………………………next…→……





完全に持っていかれた。

ソープが凪咲さんに甘え続けて、せっかく一緒に寝ているのに凪咲さんはほとんどソープの相手をしていた。


気づけば家事を終えて、さらに気づけば電車を降りていた。



「深火駅からもう色々見えるね」


「そうですね。有名なだけあっていつ来ても観光客がいっぱいみたいです」



「ハーイ!」



「は、はーい…」


サラさんが合流した。悲しいことに、僕とサラさんではコミュニケーションは…厳しい。

凪咲さんが間に入らなくては互いに何も伝わらない。


「サラも深火は行きたかったんだって。やっぱり深火寺の人気ってすごいね」


「じゃあさっそく深火寺に行きますか…」



「ンー!」



サラさんが何かに反応した。



「ジャパニーズゴースト!」



興奮気味に連呼していて、どうにか聞き取れた。

ジャパニーズゴースト?


「あっち。妖怪屋敷のことじゃない?」


「妖怪……屋敷……!?」



聞き慣れない言葉。


指さす方向を見れば、建物の2階に目玉のついた提灯や傘の妖怪の人形が飾られている。

…中でも目立つのは、長い黒髪で白い布を纏った女の幽霊…って、それは妖怪じゃない…!!幽霊ではないか!



…残念なことに、サラさんはその妖怪屋敷に興味津々だ。


「行きたいって」


「見たらわかります…」




今僕に出来るのは、祈ること。


あの妖怪屋敷がお化け屋敷の類ではなく、ギフトショップであることをひたすらに祈る。

それかカフェでもいい。


とにかく体験型の施設でなければ



「えっと、1人600円。真、これってお化け屋敷…真?」


「………終わった…!」


本当に。終わった。






………………………to be continued…→…


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