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僕達に与えられた使命。…と、新たな日常。  作者: イイコワルイコ
超絶JK、降臨
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第2話「超絶JK、降臨」後編




代行の証。チューリップ。ソープ。



創造の書を使って創造することに成功したものを並べるとこれだけだ。


使者の候補を探しながら様々な異世界活劇を読んできたおかげで、異能力を扱う作品に少しだけ知恵がついた。

"神の代行"だからといって、調子に乗ってあれもこれもと創造していれば必ず悲惨な結果になると考えるようになった。


1人の代行が創造出来る数に上限があるかもしれない。

創造の書の力を使うほど寿命が縮まるかもしれない。



強い能力には何かしらのデメリットや制約がついてくるものなのだ。



大学生レベルの知能を持つセキセイインコとか完全に人の言葉を理解する犬とか、そんな魅力的な"寄り道"を我慢しながら、能力だけを高め続けてようやくたどり着いた。


この眩い光が落ち着く頃には、僕は初めて人間を創造し…



「え、なに?ひゃっ」



まだ眩しい。目を閉じたら普通は暗くなるのに、まだ真っ白だ。

強い光に皮膚が負けて透過して…違う。

声がした。女の子の声だ。



「う"っ!?」



脳天に衝撃。

土下座する形で倒れこんでしまう。

続けて、何かが畳に落下した衝撃音が聞こえて…頭がぼーっとする。

痛みでふらつく。



「…ここ…どこ?ねぇ、あなた…だれ?」


反応が遅れる。返事をしたいのに。口が動いてくれない。


「…あれ?え?だ、大丈夫!?」


反応からして、僕はちょっと危険な状態らしい。

まさか。

人間を創造出来たまではよかったものの、実はコストを払いきれなくて、その不足分が、今、僕の頭に、


「ぶっ!」


冷たい。一瞬の息苦しさ。

この感じ…


「水…?」


「生きてる?死にそう?しっかりして」


「…あ、」


ゆっくり目を開ける。

もう創造の書から光は


「こっち向いて」


顔を上げると僕を見下ろす彼女と目が合った。

手には濡れたグラス。



…本当に、人間が、いる。



「質問に答えてくれる?」


「綺麗だ…」


「え…」



絵のキャラクターが本物の人間になった。

人気マンガの実写映画というのはテレビのCMなどで予告編をよく見ていたが正直あんまりなのが多い。

なのに。彼女は、凪咲は違った。

現実になっても整った顔はそのままだ。

若くて、幼くて、でもどこか大人っぽさがあって。


とにかく、僕はこんなに綺麗な人を初めて見た。



「話聞いてる?」


「制服も…全部そのまま…違和感もない」


「……」


「僕は本当に…!」



感動。創造するという尊い力を行使した。

花も猫も人間も差別化するつもりはないけど、それでも人間を創造したというのは


「おい」


「あぐ」


低い声。

それは彼女から発せられたもの。

ついでに、彼女が突き出した右足が僕の鎖骨付近に押し当てられて思わず変な声が出てしまった。

圧迫感。



「私の質問に答えろ」


胸の辺りがさらに苦しくなった。

押し潰されそうだ。物理的に。


「ここはどこだ」


「はひぃ…はのぉ…とぉほぉ…てふぅ…」


苦しくて上手く喋れない。


「はぁ?」


「くふひぃ…はひ、はひを…」


指をさして足をどけてもらうようお願いすると、圧迫感が薄まった。

どけてはくれなかったが、力を弱めてくれたようだ。


「東京です…」


「名前は?」


「柊木 真…」


「で、私はなんでここにいる?なんで高校の制服着てんの?」


「それは、こ、この創造の」


「私が誘拐されるなんて…信じられないけど、どこかで睡眠薬とか盛られたなら納得出来る。女捕まえて制服着せて、これから何しようとしてたかなんて想像つく。特にアンタみたいなのは」


「誤解です。難しいけどこれは信じてもらうしかなくて!」


「なに!?友達になりたいだけ?っは!ふざけないで」


「話を」


ドンッ!と胸に重いものを感じた。

彼女の足が押し込まれて、僕は簡単に倒された。


「くたばっとけ変態。思いっきり痛くしてやる…!」


「ま…って…」


さすが使者。蹴りすら要らない。

僕の体はそこまで貧弱ではない。普通だと思う。

普通の男性の体をこうも簡単に…って僕は何を。

今は自分の身を守らないと。

自分で創造した使者に殺されかけているのだから。



「ニャァ〜」


ソープが何事かと割り込んできた。

幸福の白猫を目にした凪咲は僕への殺意を引っ込めた…ように思う。


「ねこ…可愛い…」


「ニャァ〜!」


ソープは大人の猫だ。でも小柄な体で、声も時々子猫と間違えるほど幼い。

それが凪咲の足下へトコトコとやってきて、彼女を見上げてもう一度鳴く。


「ニャァ」


「あぅ…どうしたの?」


可愛いからつい…その気持ちは分からなくもない。

彼女の意識はソープへ向けられ、僕を殺すために使われる予定だった足もどけられた。


手を伸ばして撫でようとしている間に、全力を振り絞って素早く立ち上がった。


「その子はソープ。幸運の白猫」


「…聞いてない。…おいで、ソープ」


僕への返事とソープへの呼びかけに温度差があった。

柔らかい笑顔を見せて白い毛に触れて。


「ふふ。柔らかいね」


「ニャァ〜」


ソープに助けられた。

僕はスマホを拾い上げて、直前まで開いていたページを彼女に見せた。


「これを。読んでください」


「俺達が魔法を使う理由…?何これ。web小説?」


「途中まででも、飛び飛びでもいいです。どんな物語か理解して、それから最終話を読んでください」


「………」


猫を愛でることで落ち着いたのか、彼女は一方的な敵意を引っこめて僕からスマホを受け取った。

…が、数秒で表情が凍りつく。


「ナギ…え…ヒカリ…は…?」


主人公とヒロイン。それは後の両親だ。


「バガ……エル…」


仲間達の名前。

ここでスマホを操作する指が速くなる。

恐らく1話ずつではなく話を飛ばしながら読んでいるはず。


「嘘でしょ…これって…」


「分かってもらえましたか?」


「…どういうことか説明して。どうしてお父さんの記憶を…ううん…最終話には私も出てくる…」


「あなたは、この小説の登場人物なんです」


非現実的な会話だ。"実在"しない"架空"の人物を現実に創造し、出典元を見せるなんて。


「……本部の人?も、もしかしてワープ魔法か何かで、私を呼び出さなきゃいけない何かが…?」


その考えは半分正解だったりする。


「僕は全く関係ないです…説明…説明…」


どうにかして一発で理解してもらいたい。

でもどんな言葉が最適なのか分からない。


「嘘つかないで。お父さんにもお母さんにも頼れないってことは、超越種の魔王なんでしょ?」


「ちょ、ちょうえつ?え?」


「分かってる。"ハメツ"の兄弟の可能性もあるんでしょ?それならそうとはやく」


「ま、待って!ストップ!」



彼女は何を話しているのか。

このままお互いに勘違いしたままなのはよくないから、状況を整理する時間をもらった。


とはいえ口で説明するのは限界があると感じて、適当な紙に知ってほしいことを書いていく。



・あなたは小説の登場人物の1人で、本来現実には存在しません

・僕の力で、理由があって小説の中から創り出しました

・とにかく、僕は敵ではないので攻撃しないでください


…なんだ、書いてみれば意外と簡単だった。

これなら口で言った方がいい。



「……冗談じゃない?」


「はい。じゃあこれも見てください。神の代行として預かった創造の書です」


ソープのページと凪咲のページを見せた。

特徴や登場作品などの情報が書かれている。


「創造したんです。これを使って」


「……このソープも?」


「はい。…ソープは代行の能力が創造に影響するという情報を元に、今の自分がどれだけの能力を有してるのか知るために創造しました」


「…召喚じゃなくて?」


「無から創り出してるんです」


「…そう……私は、…私は?え?私…」



今になって気づいた。

創造された側の気持ちに。

創造された側は自分の役目を知らない。

何も知らないまま"生まれて"くるのだ。

ソープは猫だから会話が出来ない…それでも順応してくれたからなんとも思わなかった。

でも、人間の場合は違う。



「私は?私の生きてきた人生は?作り物なの?ただの設定なの?」


存在そのものの在り方から全否定された凪咲は、エラーを起こしたロボットのようにカクカク震えながら言葉を繰り返している。

見ていて胸が苦しい。



「ねぇ。私の人生は嘘なの?…小中の運動会、個人種目で毎回圧勝しちゃって、恥ずかしいから高校ではわざと運動苦手な風にしてたのとか…。18の誕生日にお父さんと喧嘩して、本気で殺しにかかったのとか…。私が魔王と戦ったのとか……。戦いから離れて普通の幸せを求めて一人暮らし始めたのとか…。21歳の誕生日にお母さんにもらった腕時計は?…ねぇ!ねぇ…全部…」


知らないことばかりだ。

驚いた。

小説に書かれていない内容ばかりだ。

そもそも小説には凪咲という存在がいると分かる程度でしか書かれていない。

小学校の思い出なんて一切触れられていない。

まさか、彼女は彼女で"空想"の人生を歩んできた…ということなのか。


17歳じゃないという情報への驚きはきっともう少しあとでやってくるだろう。



「信じたくないっ!!!」


立ち上がった彼女は目に涙を溜めていた。



「そんなはずないよ…私の21年間が全部嘘なわけない…ちゃんと生きてきたんだから…!っ!そう、助けを求めれば来てくれる…」


「え?」


「モモ姉…!助けて…助けてっ!!」


「あっ!凪咲さん!待って!」


ソープが驚いて逃げていく。

彼女は慌てて階段を降りていく。

急いで追いかける…けど彼女が階段を駆け下りるのではなく飛び下りたせいで距離が開いてしまう。


ガチャ。


鍵が開く音がして、僕が1階に降りるとドアが開いていた。



外に出ると彼女の後ろ姿が見えた。



「モモ姉!お願い!助けて!」


外は暗い。街灯が照らしてくれなければ簡単に見失ってしまう。


「凪咲さん!待って!」




夜のおいかけっこが始まった。…こんなはずじゃなかったのに。





………………………………next…→……





運動はあまり得意じゃない。

走るという点では、短距離より長距離の方が好きだ。

得意ではなく好きなのだ。何にせよ足は速くない。


必死に彼女を追いかけ続けて、息を切らす。

喉の奥の方が乾ききって痛くなる。

土地勘もないのに彼女はどんどん遠くへ走っていく。

このまま行けば大きめな自然公園に着く。


疲れて走るのを止めないために、考えておかなければならないことを考える。


それは、彼女が走りながら呼ぶ"モモ姉"という存在だ。

どうやっても間違えることはない。その正体は僕が最初に創造する予定だった【モモ】のことだ。

小説に書かれていない部分で彼女達の人生が、時が進んでいたのなら。モモ姉は数年後のモモだ。


そして、モモは他の代行によって創造されている。


よりによって…とは思うが。万が一ここでモモに遭遇するようなことがあれば、あっ。


顎に感じる激痛。肌に感じるアスファルト。

盛大に転んだ。

考え事に夢中なせいで無防備なまま転んだ。

痛くて顎に触れると指先に血がついた。

他にもジンジンと痛む箇所がある。ということは、そういうことだろう。



それでも僕は走らなきゃいけない。



自然公園が見えてきて、そこに入っていく彼女の姿も見えた。

痛くて走るのが下手になるが、無理やり動かす。



やっとの思いで自然公園の中へ…すると、彼女は立ち止まっていた。

公園内のライトに照らされる…3つの人影。




「こんな時間に大泣きして何してんだ?」


「………」


「お前女子高生だろ?家出か?」


「………」


「黙ってても何もわかんねえだろ!」


「…その本は?」


「あ?これはな。神様の本だ。んで、これは俺の所有物。つまり、俺は神様。お分かり?」


「……それは?」


「こいつか?俺は神様だからな。神様には使いが付きものだろ?神の使いなんだよ。名は、【スライサー・クライ】」


「………」


「クライは俺の代わりに罰を与えるんだ。神に背くやつは悪いやつだからな。お前、なんでこんな時間に出歩いてる?」


「………」


「なんで泣いてた?」


「………」


「親と喧嘩したのか?」


「…ある意味…そんなとこ」


「おいおい…最低だな。親を悲しませるんじゃねえ。クライ」


「んハァイ…」


「罪人だ」


「…殺す気?」


「殺す?いやいや。罰するんだ。…まぁ、結果は同じだけどな。やれぇっ!クライ!!親を苦しめる悪魔の子を罰しろぉ!」




息が…苦しい。

なかなか落ち着かない体を木の後ろに隠れて休ませながら、やりとりを見ていた。

着ている黒のスーツに見合わないボサボサの長髪と伸び放題の髭が特徴の男。

首に下げられた大きな十字架のアクセサリー。

右手に持ってるのは…創造の書だ…!


そして、クライと呼ばれるのは使者だ。

…よりによって、僕の因縁の相手だ。

秀爺の首を狩った、あの、使者だ。

両手両足に鋭く大きい爪を生やした人型の…


どうしたらいい。

今の僕に何が出来る?

何も持っていない。警察を呼ぶことも出来ない。

今出ていったところで、息切れして大して動くことも出来ないし、暴力的喧嘩なんてしたこともない。

戦うことが出来ないから使者を創造したのに。


使者である彼女が…今…危険なのに…




「ハァイっ!らっ!たっ!」


「高校の時の制服…体の感じからして私はまだ何も"力"を持ってない!」


「ここだっ!ハァイ!」


「っは!」



彼女はクライの爪をかろうじて回避する。

攻撃の度に、制服のどこかしらに爪が引っかかり破けていく。

1度反撃を試みるも簡単に弾かれ、その反動で行動が遅れたところを


「んハァっ!…つ・か・ま・え・た」


「ぎぃっ…」


両手で首を掴まれた。

爪がくい込み苦しむのをクライは嬉しそうに見ている。


「面白いなお前。クライが罰するのにこんなに時間がかかるなんて珍しいことだぞ?」


「かっ…はっ…」



駄目だ。殺されてしまう。

助けに行くしか…でも…



「やれ、クライ。懺悔の涙を流させてやれ…とびきり真っ赤なヤツをなぁっ!!」


「んハァイっ!」



「ま、待てっ!!」


とどめ。それだけはと思わず飛び出して、呼び止めた。

動きが止まり、注目を浴びる。



「なんだお前…」


「あぁあ?ぁあ?ぁぁアィ?」


「どうしたクライ」


「この前殺した代行の…爺さんの家にいた」


「殺し損ねたのか」


「いや、確かに首に爪をぶっ刺した」


「ならなんで生きてる」


「さ、さあ…」



「そ、その人を離せっ」



「…?……ああ。なるほど。クライ。お前やらかしたな。代行の爺さんの家にいたってことはそいつは孫ってことだ。…あいつも代行だ」


「ちゃんと紙を見せた。読めないって言ったから普通に殺した」


「殺せてねえし代行じゃねえか!お前が捕まえたその女子高生はあいつの関係者だ!妙だと思ったんだ…クライの攻撃を避けようとするんだもんなあ?」


「お前も使者…かァ?」


クライが爪を深くくい込ませながら彼女に聞いた。



「使者?知らない…!」



「1人で寂しいから若い女を"創った"ってとこだろぉ?悪いやつだなお前も…!そう思うだろ?クライ」


「……んハァイ…!」


標的が変わった。それがすぐ分かったのは使者のクライが彼女を解放したからだ。

こっちに向かってくる。


クライは獲物を狩る喜びに満ちた顔をしていた。

代行の男は口角の片方だけを上げて汚く笑った。


…僕は、死ぬ。

その後で彼女やソープがどうなるのか分からない。

僕は死ぬ。

何も、死ぬ、出来ない、死ぬ、まま、死ぬ、怖い、死ぬ、死ぬ、死ぬ…!!


「情けない」


それは、誰の声でもなかった。

それは確かに、僕の耳元でそう囁いた。



「ぐァぶぇっ!?」


両手を振り上げて、僕の首を狩ろうとするクライの顔が歪んだ。

歪んだ瞬間、その一瞬だけ、桃色の髪が見えた気がした。


クライは吹っ飛んだ。代行の男目がけて。

避けられず激突し2人は地面を転がった。


解放されて立ち尽くす彼女は、ハッとした表情をしてから、素早く深呼吸。




「いっつつ…おい、どけ!」


「んハァイ…」


「チッ!」



「ありがとう」



「んあ?」


「聞こえなかった?ありがとうって言ったの」


「…何に感謝してんだ。頭おかし…」


「あなた達が私を殺そうとしてくれたおかげで。私の人生が嘘じゃないって分かったから」


「……何言って」


「モモ姉がいる。つまり、これは現実。まだ問題は解決してないけど、私は戦える」


彼女はクライの頭を踏みつけて軽く飛んだ。

軽く…と言っても、木よりも高く。


「ま、待て!待て!」



「ゲームエンド。悪いけどもうあなたは攻略済みなの」


そのまま落下し、途中で数回縦に回転する。

そこから繰り出されるのは渾身の一撃。

かかと落とし。



ゴッ!!そんな生々しい音がして、代行の男は倒れた。

満足気な彼女だったが


「んハァイっ!!!」


その隙にとクライが創造の書を拾って逃げていく。


「あ…」


「………消えない。ということは、代行が死んでも使者は消えない」


「……マコト…だっけ?」


「あ、はい」


「襲われたの私なのに、なんでそんな怪我してるの?」


「これは…凪咲さん追いかけてる時に、派手に転んじゃって」


「だっさ」


「………」


「でも、追いついてくれたんだ。戦う力もないのに、勇気を出して前に出てくれたんだ」


「……何も、出来ませんでした…ごめんなさい」


「真。私は、あなたの代わりに戦うために召喚されたの?」


「召喚じゃなくて…その」


「私は納得してない。私は私。生きてきた全てを小説の設定でしたで片付けられたくない。でも、あなたは私が必要だから、召喚した」


「創造…なんです」


「なんだっていい。…協力してあげる。あの本、真も持ってたよね。つまりああいうのと戦ってほしいんでしょ?」


「え、あ、」


「そのかわり。私にも協力して。モモ姉に会いたい」


「へ?」


「さっき助けてくれたじゃん」


「………」




"情けない"


あの囁きの主が【モモ】だったのか。




「モモ姉に会えば、これが現実だって証明になる。私の人生が嘘じゃないって、証明出来る」


「あ、あの…」


そのモモも創造された使者です。と、言い出せなかった。



「夏野 凪咲。よろしくね、真」


「あ、よろしくお願いします…」


彼女は誤解したまま突っ走っている。

今頑張って説明したところで、分かってはもらえなさそうだ。

またいずれ…時が来たら説明しよう。



「こんな格好だし、帰ろう。怪我の手当てもしないと」


「そ、そうですね」


「普通に話せないの?人見知り?」


「………」


そうかもしれない。

ただ、それ以上に彼女が綺麗なのだ。





………………………………next…→……





「ハァ…っ!ハァっ。新しい"神様"を見つけないと」


逃走に成功し、道路の真ん中を走るクライ。

暗闇で光る目は暗視にも対応しているようで。


「本と同じ匂いを探せばいい。問題ない」


再起を決意しニヤリと笑う。


人も通らなければ車も通らない。

交差点の真ん中を大胆に駆け抜けようとしたところで


「んハっ!?」


クライは盛大に転んだ。

何事かと周囲を見回す。

次に足元を見るが


「なんでコケたんだ?」


転んだ原因が分からない。

疲れている…と結論づけてまた走ろうと足を…


「ハァんっ!?」


またしても転んだ。顎をアスファルトに打ち付けて今度こそ痛がる。


「なんでだ…?………あ?ぁあ?」


ふと振り返ると、そこには足があった。

自身の両足が。


状況を理解出来ない。

そこへ


「………」


「な、誰だお前」


桃色の髪。真っ先に目がいった部分から目線を下げていく。


「こども…」


「…おわり」





口に出すことなく、クライは空に飛んだ。

…そうではなかった。

空中から見下ろすと全てが分かる。


桃色の髪のこどもが、首を断ち切ったのだ。

それも、手刀で。

自分が死んだことを理解するのに遅延が生じた。

それだけの斬れ味で、それだけの実力者で。


ボトリ。道路の上に落ちたクライの首を拾って、上半身を掴んで引きずり運ぶ。

道路の端に寄せて置くと、残った下半身を取りに戻る。


「いいよ。これは俺が持つから」


「…分かった」


コクンと頷いて2人はクライの死体を運んだ。



この一部始終は、交差点に設置されていた監視カメラにハッキリと残されていた。


約10日後に、女性2人が指名手配されることとなった。

内、1人は大人で1人は子供。細かな容姿は夜間のため不明。


唯一明らかなのは、殺されたのが人間ではない何かだった…ということ。




………………………to be continued…→…

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― 新着の感想 ―
[一言] 設定は悪くないが、へタレな主人公はマジで要らなかった。 何が創造主だ。 自分の作ったキャラに回されていてナヨナヨした主人公はキモかった。 まるで自尊心が無くペコペコするばっかりの会社員…
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