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僕達に与えられた使命。…と、新たな日常。  作者: イイコワルイコ
Case23 _ 混血の怪神
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第15話「偽者何者」








「少しずつ賑やかになってきた」


「それぞれに個室があってよかったですね…特にべダスのことは。寒くないと気が済まないようで、さっそく自分の部屋だけ室内を凍らせていました」




トゥカミに、べダスに、キャロライン…そして僕と栞。

少数精鋭的な考え方をするなら戦力は十分に集まったとも言える。でも栞の顔を見れば小さく首を横に振って…



「こういうものは、余るくらいに準備するのが正解です」


「"もの"扱いはしないであげて…」


「今は私も含め全員があなたの"手駒"ですから」


「そうかもしれないけど」


「それで、キャロラインの方は」


「ああ…彼女も自分の部屋にいるよ。多分べダスと同じくらい、自分からは外に出てこないんじゃないかな?」


「引きこもりを2人も捕まえてきたということですか」


「まあキャロラインは僕の言うことなら聞いてくれるみたいだし、戦闘が予想できる時は連れていけると思うよ」


「そうですか。……これで、"動物特化"に"冬特化"、そして」


「"感情特化"?なにこの尖った戦力達は。自分で選んだとはいえすごいな」


「次は夏特化でも探しに行きませんか?部屋の外までべダスの冷気が漏れるようになったら打ち消せる相手が必要になります」


「……さすがに熱いのが得意そうな代行は知らないかな…それこそ、凪咲が炎系の魔法をよく使ったりするけど。その繋がりで"お母さん"を創造すると色々ややこしい事になりそうだし…」


「また母親が出てくるんですか」


「キャロラインのとは違うけどね。凪咲の母親は炎魔法特化だから、べダスとバランス取れそうだけど…。でもキャロラインが魔王とか名乗っちゃうレベルだから、魔王と戦う話に出てくる人がいると仲間内でモメるよね」


「ちなみに、次に誰を複製するのかは決まっていますか?」


「それなんだけど……」


「はい」


「多分べダスより厄介なんだよね。思えば実力は間違いない代行なんだけど、簡単に会えるか微妙だし……捕まったら最悪」


「私達が逆に捕まる?」


「宗教団体的な組織のトップ。それだけ聞けば色々考えられない?」


「あなたの顔を見ていると、その捕まった後のことを体験済みなのではないかと思えるのですが」


「体験済みだよ?」


「…最悪の中でも最悪だったようですね」



なぜか、僕と栞の定位置は冷蔵庫前になっていた。適当に話しながら近くにあるものを物色してみたり、飲み物を用意してみたり。匂いの強い食べ物を引っ張り出すと近くにいるトゥカミが毎回反応してくれてちょっと面白かったりするが…



「今関係ないことを考えてませんか」


「そりゃあね。思い出したい記憶ではないから…」


「そこまでなら逆に知りたい気も」


「じゃあ見せようか?」


「……遠慮します。今ちょうどこれを食べようと思っていたので」


「フルーツゼリー…ね、」


「なんですかその意味深な…」


「いや、別になんでもない。召し上がれ……。僕はちょっと買い物行ってくるよ。人が増えたし色々買っておいた方がいいでしょ」


「1人で平気ですか?」


「結構疲れてるけど、この時期ってあまり強い代行と出会ってないんだよね…当時の僕は。だから割と平気だと思う」



雑に店の金から10万円をもらって、外出の用意をする。

トゥカミにはチョコレート、一緒にいる狼は…しばらく大丈夫かもしれないけど一応大きい肉を買っておくか。

そしてべダスには…酒と肉?ガスコンロとか用意すれば自分で焼いて食べてそうだし。



「キャロラインは何食べるんだろ…」



自分で創造した白装束を着る…これは全員が持っているので、もうチームコスチュームみたいな感じだ。

適当に向きなんかを直しながらキャロラインに与えた個室のドアをノックする…と。



「なんだ」


「あ。今から買い物行くんだけど、キャロラインって普段食事はどんなの食べてるのかなって。今要らなくても後でお腹空いたら食べれるし…」


「……任せる。簡単に食べれるものでいい」


「うん、分かったよ」



ドアは開けてない。でも常に背後を取られているような…不思議な圧を感じた。

…思ったより反抗的な感じがしないのは僕的には朗報だった。



「よーし。行こう」



今日は多分特売日でもなんでもないだろうが、いざ…僕の"最初の戦場"へ。










………………………………next…→……









スーパーイナズマ。平常時。




「特売のあの雰囲気もいいけど、こうしてのんびり買い物するのもいいよね…」



今思えば、僕はこの手の買い物でかなり鍛えられている気がする。いつも帰りは大荷物で、最初の頃は手指にビニール袋がくい込んで痛い思いをしていたが…今となっては



「なぜかくい込むこともなくなった。手も痛くないし、片手で持てる量も結構…」



「あら、珍しいわね。特売意外であなたを見かけるなんて」



「え?……っあ!!」



本気で、びっくりした。この店で出会った人は何人もいるが、その中でもこの人だけは…



「元気してるの?」



「"クレオパトラ"…!!」



「あらあら。今でもちゃんと覚えてるのね。安心なさい。もう"あんなこと"どこの店でもやってないから」



彼女は…"クレオパトラ"。スーパーイナズマで与えられた異名の中でも特殊で、シンプルに"容姿が店員にどストライク"だったというだけで売り切れた特売目玉商品を特別に用意してもらったという伝説がある。

そして彼女の言うあんなこと…というのは、その容姿で引っかけた男達を連れて特売に参加するという大暴挙。その"下僕達"は皆クレオパトラに貢献しようと全力だったため、本当に…あの日は最悪だった。

チキンナゲット2kgの恨みと絶望は、忘れたことにして胸の奥にしまっていたのに。



「今はチラシを頼りにコツコツやってるの」



「どうして…?」



「人生で初めてってくらい好きな人ができて、異名を持つくらいセール好きの女って知られるのが嫌なの。節約家程度ならいいだろうけど、さすがにクレオパトラは引かれちゃうでしょ?」



こうして見ると、僕の周りの女性陣は本当に容姿のレベルが高いんだなあと思う。でも、彼女達がいなかったらクレオパトラの容姿は僕の中でトップ3に入っていてもおかしくはない。普通に美人ってやつだ。これでたしか…まだ20代とかだったような。



「どうしたのよ。そんな見つめちゃって。悪いけどだめよ?あなた…あなた、」



「え、なに」



「ううん。なんか…」



急に気まずそうにしている。



「……あなた、霊感ってある?」



「霊感?無いけどなんで…」



「実は」



「クレオパトラにはある?」



「だけじゃないの。今あなたを見たら、ちょっと顔の周りが…ううん、目の辺りが白いモヤモヤで隠れてたような気がして」



「それは…………」



ピンポイントでそこを突かれるとは。でも、普通の人間にはそう見えるということなのだろう。僕の目の奥の華は…創造の力を知る者でなければ見ることは叶わない。



「お祓い、行った方がいいと思うけど。すぐに行けないならとりあえず目に注意した方がいい」



「そ、そうする」



「それじゃあそろそろ。デートに遅れちゃうから」



人に怖いこと言っておいて意外とサラッと行ってしまった。

でも、そうか…イナズマの特売にいつの間にかクレオパトラが参加しなくなっていたのは、好きな人ができたから……。


過去に戻って当時の僕とは別行動をしているからこそ知れた情報だ。ある意味貴重だ…当時の僕からしたらとんでもない敵が1人減ったとなればバンザイして喜ぶニュースだから。



「今となっては、どうでもいいかもしれないけど。ん、2つ目のカゴ取りに行こ」




必要だからと出てきたわけだが。僕が買い物に来たのは、この日常を再び味わいたかったからだったりする。

もうこんな風にスーパーで商品を見て選んで買うなんて、出来ないと思うから。

僕は未来を知ってる。大きく変えられる可能性だってあるのに、大筋は変えないつもりでいる。つまり…多くの人間が死んで…日本も世界もほとんど滅びかけるような未来を迎えようとしている。



「…僕は、今の自分がどうなるか分からないから……自分を守るためにそうしようと」



事実だ。僕は自分か世界と大勢の命という2択で、自分が犠牲になることを嫌った。


相当な悪だな…僕は。



「ダンとかサラなら、迷わず自分を犠牲にして…今頃とっくに未来を救ってたんだろうなあ…」



だからって、僕は考えを変えるつもりはない。




世界が滅ぼうが、9割以上の人類が死滅しようが、僕は生き残りたい。




「"今の僕"にはその資格があるし。……ぇ?」




ふと漏らした自分の発言に、自分で驚いて…引いた。












………………………………next…→……










「おお…結構買った」




左手、大袋2つ。右手、大袋3つ。大きいペットボトルの飲み物も酒も大量に買ったから、間違いなく右手の負担は10kgを余裕で超えてる。



「持ち帰るのが大変なんだよね。特にたまごとか買った時は」



ただ重いだけじゃなく、買ったものが割れないように、崩れないように、気をつけないといけない。



「栞が自分からフルーツゼリー食べようとしてたの珍しかったし…多分そういうのが好きというか、興味あるんだろうな…」



なので"大玉"を買った。これはスーパーイナズマのオリジナル商品で、みかんやももが丸々1個ゼリーの中に入っているというもの。これで通常時の値段が118円なんだから、やっぱりこのスーパーは頭がおかしい。いい意味で。



「いつまでもあってほしいな……世界が滅亡したとしても」



「……柊木 真。探したぞ」



「え、……え?」



「どうかしましたか?」


「この顔を忘れたわけではあるまい」



買い物帰りの僕の前に突然現れた2人組。…というか、ダンとジュリア。



「なんで2人がここに」



いや、別に僕の家の近所を2人がうろついていてもおかしくはない。僕を探していても、全然普通だけど…



「突然ですまないがお前の力を借りたい」


「あたし達と一緒に来てくれませんか」



「力を借りたい…?」



こんなこと、過去にあったか?……いや、なかった。そうだよ。そもそもこの日に当時の僕がスーパーイナズマに来てたならクレオパトラのことも知ってたはずだし。

…あれ?今もう1人の僕はどこで何をしてるんだろう。



「ああ。人探しだ。どうしても見つけなければいけない人物がいる」


「そのために君の協力が不可欠なのです。真」



「…………そう…」



困ったな。こんなに分かりやすい"偽者"…扱いに困る。近くにいる人達を追い払えば戦って殺すこともできるけど。


でもな…買ったものが……これだけでも拠点に置いてこれたらいいのに。



「どうした。柊木 真。一緒来い」


「君がいればどうにかなります」



後で待ち合わせとか言っても、どうせ僕の後をつけてくるだろうし…。


というか、この見た目だけは完璧な2人…一体何者なんだ。














………………………to be continued…→…


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