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僕達に与えられた使命。…と、新たな日常。  作者: イイコワルイコ
絶望も希望も全て
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第11話「絶対石」









((READ))




書き終えたと同時に宣言され、直後に創造の光が創造者の内から放出される。開いた口、目、鼻、耳…ありとあらゆる穴から黄色の光が溢れ出し……天を目指して伸びていく。



「へぇ。よかった、時間経過速度を乱してなかったら何年かかるんだよってくらい時間かかってたからな。こいつがやり遂げるのをじっと待ってたら"お前ら"もやってらんないよな?」



「海開きはまだまだ先だと思うが、こんな所で何をしている」


「代行"2人"を感知」


「アマゴウラもいるようだ」



「ああ、情けない。毎回登場する時だけはそうやって強者の顔して出てくるのにな。それも数秒後には……2…1」



「海開きはまだまだ先だと思うが、こんな所で何をしている」


「代行"2人"を感知」


「アマゴウラもいるようだ」



もしこの状況を目撃した第三者がいたとして、何が起きているのかを理解できるはずはなかった。

1人の女が光の柱に姿を変え、10秒前後のサイクルで男女の2人組が何度も同じ場所に現れては消えてを繰り返し、さらにはどこからともなく声が聞こえる。



「すっかり時の中で迷子だな」



「海開きはまだまだ先だと思うが、こんな所で何をしている」


「代行"2人"を感知」


「アマゴウラもいるようだ」



「見飽きた。でも自由にしたらこいつら逃げて助けを求めるだろうしな…いや、むしろ逃げろって警告しに行くかもな。戦うって選択肢だけはない。…そうだろ?ダン」



「海開きはまだまだ先だと思うが、こんな所で何を」



これで何度目か。青い渦の中から出てきたダン…その彼の目に向かって



「へへっ」



砂を飛ばす。突然のことで防ぐことも避けることもできず、砂が目に入ってしまったダンは登場して間もなく悶える。ジュリアがすぐに反応して飛び出そうとするも…2人は消滅。それを天の声は笑った。



「いひひひあはは!見たかよ!…こんな所で何を、うがぁっ!?つって!」


「……アマゴウラ」


「ん?…おお、終わったのか」



そこに声をかけるのは創造を終えた柊木 栞だった。光の柱から出てきた彼女は両手で大事に何かを持っている。



「見てて思ったけど、これお前んとこの"マスター"じゃ創造出来なかっただろ。努力家だろうが天才だろうがあんな気が遠くなるような…長時間ずっと創造の書に向き合って書き込み続けるってのは。なんだろうな。でもお前が柊木って聞くと出来るのも頷けるというか」


「あなたに認められても、私の過去は変わらない」


「はは。過去を変えたいならやってやるけど?」


「え?」


「俺様は神だぞ?人間1人の過去の黒歴史を塗り替えるくらい、なんてことない。待ってろ。ちょちょいとやってやる」


「……」



天の声…アマゴウラはおかしな事を言う。栞は驚きの中でも思考は止めず、そんな事をしたらどうなるのか…を想像していた。

過去を変える。つまり、柊木の歴史に手を出すということ。代行業を継がせるために男が生まれることを望み、そうでなければ迷わず殺す…柊木一族が抱える闇はそれだけではないが、何もかもがもし…変わったら。

栞の人生はどうなったのか。殺されることはなかったとしても、代行になる道は?親戚達から仲間はずれにされたりしないだろうか。そもそも過去を変えたら今はどうなる?

ここに栞がいることも、アマゴウラが世界を支配する神になることも、何もかもが、変わるのでは?



「……っ?そうなったら」



偶然にも栞はアマゴウラの倒し方を知った。自身の存在を否定するように、自然に仕向けるだけでよかったのだ。従うフリをして近づき、何かしらの貢献をし、見返りとして過去の出来事を



「終わったぞ」


「っ!?」


「どうだ。胸の奥がスッキリしてきたんじゃないか?あれ、私、何に悩んでたんだっけ?とかさ。なってきただろ。な?」


「……」


「なんだよ。ちゃんとお前の人生弄ってきたって!お前は生まれた後普通の女の子として育ってた。だけど6歳の誕生日に誘拐されたんだよ。柊木の血を引くお前の才能を欲した"デズェウム"の連中にな」


「ぁ……」


「面白い連中だな。自分らは世界を裏で操ってるってのに、その正体はどこにでもいるようなモブ人間。上手く混ざって溶け込んでやがる。幼稚園児に、小学生に、ママさんバレーに……政治家、アーティスト、俳優。老若男女様々だ。どいつもこいつも表向きは自分の人生で精一杯みたいな顔してやがって、さりげなくサインを出して連絡取り合って」


「ゃ、…ゃめ」


「ん?なんか言ったか」



詳しすぎる。その声が語ること全てが栞にとっては呪いの言葉のように恐ろしかった。

自分の過去を変えただけではないのか。どうして知るはずもない他のことをここまで



「まさ、…か…っ」


「なんだよぉ?急にビビり散らかしてるけど何かあったかよ」



その姿は見えない。でも、笑われた気がした。悪魔のような笑顔を浮かべて、何をされたのか気づいた様子を見て…笑っている気がした。

アマゴウラは、栞の過去だけを変えたわけではなかった。



「いやぁ。本当に面白かった。まさかお前が、俺様を殺す方法を探してこっちの世界に来てたんだって知った時は。でも安心しろ。お前が守ろうとしてた世界はもう存在しない」


「ぅふっ、ぐぉぇ!!」


「ただ…そうなると今度こそ、お前の存在を証明する時間が消滅する。都合よく人生を創造するのとは違って、これはお前ら低脳な人間が思いつく"過去を変えると未来も変わる"理論に合ってる。だから、今のお前を苦しめるのは」


「あ"あ"あ"あ"あ"!?」


「限界まで捻った輪ゴムがそのままブチ切れるようなもんだ。世界に正しくあるためその存在は消滅するが、俺様が弄ったお前の人生もとっくに過去のもの。つまり…」


「お"う"お"う"お"う"ヴヴヴヴ!!!?」


「今お前は、捻れたゴムが勢いよく元に戻ろうとしてる状態だ。生と死の間をぐるぐる回転して何度も生きたり死んだりしてる。でもゴムはブチ切れてる。捻れた分だけ暴れた後はもう」


「ぶギギギギぃぃぃ"ぃ"イ"イ"!!!!!!!!!!」


「破裂だな」



パァン!!



風船が割れるように、栞の体が弾けた。血も肉も脂肪も臓器も骨も何もかもを派手に飛ばして、死を感じさせないほど一瞬で肉体は消滅した。



「はあ。人間の言葉に直すと上手く説明できねえなー。まあ、要は死ぬってことだからそれは伝わっただろ。よーし、じゃあ…もらうか。人類最後の希望……"絶対石"」



その時。散乱した死体の真上に透過した腕が出現する。人間サイズの両腕はゆっくりと下がってきて、血の中に転がる黒い石を拾い上げた。



「クレーンゲームみてえだ」



そして拾った石を両手で大切に持って、



「妖精だか精霊だか…喰っといてよかった。これに使うつもりじゃなかったけど、おかげで霊体の手が使えるし……」



その手のすぐ上に透過した顔を出現させ、



「口も使える。…ぁぅむ」



創造されたばかりの絶対石を、アマゴウラは口に含んで…飲み込んだ。



「これでもう、俺様だけがこの世界を支配できる。誰にも邪魔はできない…!」








一通り全てが終わり、アマゴウラが霊体を消した後…それからもずっと



「海開きはまだまだ先だと思うが、こんな所で何をしている」


「代行"2人"を感知」


「アマゴウラもいるようだ」



ダンとジュリアは繰り返す。敗北を知らぬまま、勝利を信じる2人はこのまま永遠に、繰り返す。








………………………………next…→……








「行って、真!私が動きを封じるから」



凪咲の声で我に返った。見れば大怪物は凪咲の魔法により拘束されていて。

…体の大きさに合わない極小のフラフープのような魔法陣を上からはめられて身動きできないでいる大怪物を睨みつけ、僕は創造刀を抜く。


集中力が伝わったのか、創造刀の出現と同時に空気が…世界がピリつくのが分かる。この一振りは…間違いなく、重い。



「足下に鎖が見える…」



あの先にミハル達がいるのか。…すぐに助けてやりたい。



「ドゥオオオオオオ!!」



「そのためにはまず。お前を斬る」



体が動かないから代わりに吠える大怪物。迫力満点で集中が切れそうになるが覚悟を決めて突っ込む。



((EXECUTION))



瞬間移動。…そしてその軌道上に大怪物の首と創造刀を見据えて。

人の体で振るよりも速く、強く…絶対の一撃を浴びせる。



「斬った……」



地上に降りて振り向けば、巨体から頭部が失われているのが見える。頭部は…消えてなくなった。



「凪咲!」


「私は大丈夫!」



落ちてきた凪咲を心配するも、彼女は風魔法を使って安全に着地した。

……ということは



「ふふ。あっさり勝っちゃったね」


「多分凪咲が動きを封じてくれたからだよ。あんなのが自由に動き回って暴れてたらどれだけ苦労してたことか」


「え?伏せて!」



隣にきた凪咲に肩を押され無理やりしゃがまされる。すると、凪咲が大怪物を拘束するのに使った魔法陣が弾け飛んで……



「うわっ!?」


「私じゃないよ。力ずくで外したみたい」


「どういうこと?だって僕は確かに頭を」


「相手は使者だもん。急所が存在しないって言われても驚かない」


「ぁ……!?」



僕は驚いた。てっきり…いや、だって首から上が無くなれば、脳も…え?



「まだ動けるみたい!真!みじん切り!!」


「み、みじんっ!?」



どうすればいいのか。それを凪咲はすぐに教えてくれたが、この刀でみじん切りって



「とにかく斬る!振って振って振りまくるの!消えてなくなるまで!!」


「わ、分かった!!」



瞬間、足下に風が集まったのが分かる。凪咲が魔法でサポートしてくれるようだ。ならば僕はしっかり刀を持っていればいい。



「いっけぇぇぇぇ!!真ぉぉお!!」


「っ!!」



そして風が爆発。人間大砲の弾となった僕は高速で大怪物の体に向かって飛んでいく。刀を構え、まずはこの一振りで上半身…最低でも腕を奪うことを考えて



「はぁぁっ!!「よぉ」



振り抜く。肉を断つ確かな手応えを感じながら大怪物の体を通り過ぎると、その向こうには既に風魔法が待機していて。



「うおおおおおお!?」



みじん切りを成立させるため、今の攻撃を何度も繰り返すのだと察したら変な声が出た。

でも勝てる。勝てるのだから、ちょっと激しい運動くらい別に



「ぁ、待って」



ふと気づく。水泳であればターンがある。水中で向きを変えて蹴り出すことで方向転換できる…が、この状況でターンとは?僕はもしかしてこのまま…下手をすれば頭から突っ込むことになるのでは?



「ひっ!?」



まだ、2回目。でも…見てしまった。凪咲がありとあらゆる場所に魔法を張って準備しているのを。せいぜい10回とかそれくらいを考えていたのに、これでは…100回は想定しなければならない。


……多分、体が持たない。


















………………………to be continued…→…


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