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僕達に与えられた使命。…と、新たな日常。  作者: イイコワルイコ
絶望も希望も全て
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第7話「ショッキングピンク」







ミハルの頭部……アフロから発生した白い光。それが途中から雷へと変わる。これが実は単純な"仕様"の問題で、創造の発生地点をアフロに設定しただけの攻撃であることは誰も気づかなかった。




「むぅっ、が、」



読み外したおかげでまともに雷撃を浴びてしまったミヌ。激しい痙攣と麻痺に襲われ、体の自由を失う。

そもそも、人間が雷を浴びたならまず無事では済まない。それが1発や2発ではなく、少なくとも10は超えるとなると



「あんな攻撃…致命傷どころか間違いなく、死……!」



みかん先生はミヌの即死を確信した。それもダメージの大きさから察するに"最低保証"として。そしてミハルへと視線を移せば、攻撃を終えた彼は



「まだまだ。こんなもんじゃない」


「はい!?冗談でしょう!?」



黒のアフロをピンクに変色させ、"次"を宣言していた。



「がふっ、……がふ、」



みかん先生は今の創造だけでも自分たちには再現不可能な桁違いなものだと感じていた。しかし、その攻撃を受けてもキカヌは数発殴られた程度の反応を見せるだけだった。

咳き込みながらもミハルの方へしっかり体を向けて構えるキカヌ。



「お前も聞こえてれば楽に終わってたのにな。…へっ」


((READ))



名前からしておそらくキカヌの耳は聞こえていない。だからミヌのようには釣られなかったと考えるミハルは、わざわざキカヌのために追撃を決める。

創造の瞬間、変色したアフロがまたしても光を放つ。同じ攻撃は受けない……顔に覚悟が出たキカヌは



「………………」



誰にも聞き取れない音量でブツブツと呟く……その、口の動きを見ていたミハル。



「"助けてください"?馬鹿言うなよ」



次の瞬間。ミハルのアフロは、爆発した。

それはまるで煙玉が破裂したように、ピンク色がミハルとその周りを覆い隠してしまう。



「ショッキングピンク…」


((READ))



先の雷撃のために消費したハンマーを補充するために創造。そして、準備が整ったら……ハンマーで自分を覆い隠すピンクを振り払う。



「ぶは!……」



それと同時に、キカヌが苦しみだす。



「き…こえた……!?ぉぅぇっ」



嘔吐するような動作。しかし吐き出るものが無いのか、何度も同じことを繰り返すばかり。

そして、ただ見守ることしかできないみかん先生は目撃する。1人でこの場を支配しつつあるミハルの、



「どうなってるんですか彼は……!これが、代…行……っ!?」



「すぅー…ふぅー…」



「せ、せ、背中から…腕がっ…3本、」



新たな姿を。


首に近い位置に1本。そのすぐ下に2本。計3本の腕が、それぞれハンマーを握っている。当然のように動きが独立しており、その自由で滑らかな5本の腕の動作は見方によっては。



「5本の指みたいだろ?…あいつに影響されたみたいだ」



次の瞬間、その場からミハルの姿は消えていた。そして苦しむキカヌが立っていた場所が



ッ!!!!



「ば、爆発っ…!!これも、ミハルが?」



跡形もなく吹っ飛んでいた。瓦礫も何も残さず、ハンマーと同じ丸型にそこだけがへこんでいて。

何が起きているのか理解が追いつかないみかん先生は、自然とミヌの姿を探した。雷撃により身動きが取れなくなったミヌは、今、



ッ!!!!



「同じ………」



姿を消した。信号機は綺麗に潰れていた。



「先生。先生、」


「はっ…」


「代行2人はまだ生きてる。でも重傷だよ」



思考停止。本物の強さに思わず息の仕方まで忘れそうになっていたみかん先生は、トムに声をかけられ正気を取り戻す。

直接戦闘に参加せず救出を優先していたトムは、創造したぬいぐるみを使って人命救助に成功していた。見ればぬいぐるみの隊列が既にこの場から去ろうとしているところで、大きくなったゾウのぬいぐるみの背には救出した仲間たちが乗せられていた。



「み、見ましたか…?見てください…見るべきですっ…」


「先生?」


「彼です!ミハルは、あのミヌとキカヌを」


「…………ぁ」



トムはみかん先生の向こう側にそれを見た。偽りのアフロが揺れる5本腕の化け物が、"見かけたら戦わず逃げること"と指示が出ている敵2人を背中から伸びる2本の腕で捕縛していて……



「直接お前らに恨みがあるわけじゃない。でも…殺す」



頭を鷲掴みにされて動けないミヌとキカヌ。どちらも全身に大ダメージを受けており、抵抗する力も残っていない。とっくに勝ち負けで済む話は終わっていたのだ。



「ソウル…クラッシュ」



そして。2人の頭の間に差し込まれたハンマーと、左右から全力で振られるハンマーによって



ガシュ。



ミヌとキカヌの頭部がついに叩き割られる。骨の強さをも無視した攻撃は簡単に2つの命を奪った。



「パクってんとちゃうぞ…この童貞。…とか言われそ。……はは。童貞じゃね、」



勝利。感情の暴走を見事コントロールし、新たな力で敵を圧倒。その余韻に浸るミハルを、彼の視界の外から襲いかかって瞬時に飲み込む衝撃波。




「なっ……」


「ぇ?」



トムはみかん先生を引っ張り逃げ出す。その瞬間を目撃してすぐに体が動いて、先に行かせたぬいぐるみ達に追いつこうと必死に走る。



「待ってください!トム!」


「もう彼は助からない!」


「何を言って…」


「くっ!?」



トムの行動が理解できないみかん先生は、引き返すよう彼を説得しようとする…が、何かに反応したトムはみかん先生を押し飛ばした。



「ト……」



名前を呼ぼうとしたその時、みかん先生はトムが衝撃波に左から右へ攫われるのを見てしまう。



「っ…!!!」



何に彼が警戒していたのかを知り、それから自分を守るために犠牲になったことも知る。悲しむ余裕などなく、すぐに立ち上がり振り返る。もうそこにぬいぐるみ達はいない。道路の真ん中に放り出されている救出対象…走り出しながらそれを見て



「私の素の力ではせいぜい女性1人が限界…しかし生存者は全部で5人…代行は2人……!」



冷静に分析する。自分の無力さに泣きたくもなるが、今はそれどころではない。立ち止まったりしてグズグズしていたらせっかく助けられたこの命も失いかねない。



「ここは…、メモ帳!!っ、間に合って…」



取り出したメモ帳。そこから紙が数枚飛び出し巨大化する。そして同時進行で紙に折り目が生まれ、瞬時に尖りの強い紙飛行機が完成する。



「次はのり!そしてホチキス!」



ジェルタイプののりが紙飛行機をコーティングし強度を高める。そして紙飛行機の"持ち手"となる部分にホチキスで救出対象の全員を留める。



「飛びなさい!!」



仕上げに強く声をかければ、人を運べる大きさに育った紙飛行機が自動操縦で飛んでいく。あっという間にわずかな風を味方につけて遠くへ逃げていくのをみかん先生は走りながら見届けた。



「これで後は私が戻れさえすれば…」










………………………………next…→……









「どうしてこんなことに」



突然現れた大和 希子さん。彼女のペースに空気感を乱された僕達は、気づけば彼女に言われるままに車に乗せられていた。



「いいよ。少しだけドライブに付き合ったら、ね?」



隣に座る凪咲は僕に向かってウインクをした。僕達は後部座席、運転する彼女は運転席。そうだ。問題が起きた時、彼女はすぐ僕達に何かをすることは難しい。万が一僕達にとって都合の悪い相手だったとしても、問題ない。いざという時はさっさと瞬間移動で逃げられる。



「どうっすか、パトカーの乗り心地。意外と普通っすよね」



「ま、まあ…」


「それで?どこに向かってるの?」



「…今はこれ以上人を乗せられないっす。だから一旦戻って…」



聞かれたことに素直に答えようとしてくれる。しかし途中で話を遮るようにザザッと無線が音を出した。



「うっす」



「…………」


「…わざと、かな?」



それに応答するが、聞こえる音は鮮明ではない。全ての音にバ行が上から被さっていて何を言っているのか全然分からない。凪咲はそれを盗み聞き防止と考えたようだが…



「うっす。じゃあ合流するっす。うっす…」



「話は終わった?」



凪咲が遠慮なく聞いていく。



「終わったっす。申し訳ないっすけど、ちょっと寄り道を」



「詳しく理由を話して?」



「あぁえっと、仲間が戦闘中っす。敵はミヌ、キカヌっていう政府も警戒してる新人類で、まずCチームが救助要請を…それで編成会議前に向かった……はっ、」



今度は自分で喋りすぎたことに気づく。が、もう遅い。



「そこまで話したなら最後までちゃんと話すべき。そうじゃない?」


「…凪咲?」



特に威圧しているとかではないのだが、凪咲の目が違う。そしてふと凪咲と目が合ってしまったらしく…



「…編成会議前に救出に向かったトム、みかん先生、ミハルの救出チームが戦闘中。のはずっすけど、信号が途中から消えたって話っす」



簡単に最後まで話してしまった。多分これも魔法…なのだろうと思いたい。



「って、ミハル?今ミハルって言った?」


「真?」


「相手がミヌとキカヌで新人類、それで向かっていった…つまり戦いに行った代行がミハルってことは」



「うっす。ミハルはウチらの希望になるかもしれない人っす」



「…アフロだった?」



「ん、知り合いっすか?」



そこまで聞ければ十分だった。ミハルは僕が知ってる彼で間違いない。旅館から…今まで、この人達に協力していたのか?

…いや、何にしても。



「ちょっと、車急いで」



「え?いいっすけど」



あのミハルなら。しかも、彼女は言った。ミハルはウチらの希望とかなんとか……それが本当なら。



「仲間だけど、だからこそ彼の実力じゃ難しいかもしれない」


「…」


「僕と凪咲でさえ、タタカヌとケラヌに苦戦したんだから。ミハルを最高戦力に数えるくらいで突っ込んだらどうなるか…」


「ミヌとキカヌが弱いことを祈るしかないね…」


「……」



凪咲のそれを聞いて、決めた。



「先に行く。凪咲、」


「うん。いいよ」



「え?先?」



「EXECUTION」



ミハルを目指して、飛ぶ。












「……………………え、」



















………………………to be continued…→…


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