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僕達に与えられた使命。…と、新たな日常。  作者: イイコワルイコ
絶望も希望も全て
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第4話「2人1組」








「……」





「海開きはまだまだ先だと思うが、こんな所で何をしている」


「代行"2人"を感知」


「アマゴウラもいるようだ」





「わざわざ追ってきたのですね。無駄なのに…。ダン、ジュリア。あなた達はもう敵と呼ぶこともできない」




突然発生した青い渦の中から現れたダンとジュリア。それを1人で出迎えた柊木 栞。ため息混じりに2人へ冷ややかな歓迎の言葉を向けるが、目を合わせることもしない。遠くの海を見つめるだけで座ったまま動こうともしない。




「ご主人様、空気中に違和感が。接近は危険かと」


「守られているようだな。…時割れに囲まれて」




肉眼で捉えるのが難しい空気中の波。それの変化を確認したジュリアは栞から最低でも8mは離れるようにとダンに伝えた。海を眺めるだけの彼女は、砂浜のど真ん中にポツンと座っているだけ。見えない力に守られながら…まるで場所取りを任されて暇を持て余しているような格好で、どこか寂しそうにも見える。




「ふ。……直接触れるのが難しいというだけで、攻撃自体は不可能ではない」



ダンは目の前に青い光を発生させ、その中から銃を取り出す。さすがにそれには栞も反応し、ようやく2人の方を見た。



「異能の力は創造を否定する。時割れの壁など容易に貫通する…お前は守られているようでそうではない。逃げられない…ただの的だ」



両手に銃。同時に連射されれば人間の速さではまず回避は不可能。栞の力であれば、そもそも当たらないという状況は創れなくもないが…。



「今度はそうはいかないのでしょうね」



「理解が早いな。これ以上の成長は無いと諦めていた私達をも異能の力は否定した。この究極の力は、もう何者にも防げない」



「"向こう側"にはそんな力は存在しません。まあ、あなた達からしたら同じことを言いたくなるのかもしれませんけど。……」



「……?」


「戦う気は無いのか、反撃どころか身を守ることすら諦めるとは」



「それで殺せると言うのなら、そうしたらいい。…ただ、1人代行を殺したところで…と、あの方に言われるのがオチです」



「ジュリア」


「はい。気配は感じていますが、特定が難しく……」



「ある意味で同じだから」



「なに?」



「どこにでもいて、どこにもいない。私と同じ。ここにいるけど、ここにはいない」



「神出鬼没というわけではないな」


「オラワルドでも似たようなことが。ですがあの時はまだ細かい所まで位置を特定出来たはずで…」


「…まさか、」





「そう。そのまさかだ」





空から、声が降ってくる。だからといって空を見上げたとしても何も見つかりはしない。かと思えば今度は2人の背後から





「よく見つけたよな、ここだって。そのジュリアも優秀だったってわけだ。すぐそこの道路渡った向こうのコンビニ…店前のカメラが不自然に動いたのもお前の仕業だろ?いやー…さすがにキモい」





「アマゴウラ…」





「ダン。"お荷物"から役立たずへの成長、おめでとう。栞を撃ち殺したいなら別にやればいいけど…どうする?」





「…下手な誘導だな」



ダンは銃を取り出した時から脳内で何パターンものシミュレーションを重ね試している。そして、その全ての結果で"命ある者"を殺した時にアマゴウラが創造で関与することが導き出されていて。



「ジュリア」


「はい」



アマゴウラはこの場で栞、ダン、ジュリア…誰が死んでも間違いなく時間操作を行う。

それがダンの出した答えだった。そしてジュリアもそれに間違いはないと同意していた。


"あれ"に勝つには、柊木 栞の創造を攻略する程度では足りない。そして、勝てなければ。



「もうお前らのことはしっかり覚えた。どこに逃げてもついて行くからな」



「ついて行く…か」



逃がしてくれないことは簡単に想像できる。ダンが不安に思うのはもう一歩先だ。



「それはそうと……見つけた」


「そうですか。ではここまで運んでください」


「なんだけどさ、難しいんだこれが。お前が来いとも言えない」


「…?」


「でもちょうどいいとこに体が頑丈そうなのが」




「当たったな。理由こそ違うようだが」


「……申し訳ありません。まだ位置の特定には」


「やるしかない」



ダンの不安は的中した。それは、アマゴウラがジュリアを奪うという展開。元々は真が凪咲を奪われたという前例があるから、"あれ"には強い使者を奪い集める癖のようなものがあると考えていたのだが…。



「せめて結子としてお前らの前に立てればいいんだけどなあ。それはもう無理なんだよ。なんてったって俺様は神だから」


「私はここから出られませんから。"神様"が勝手にやってください」


「はははは…せめて応援くらいしろよ。お祈りとか」


「別に。大丈夫です」


「冷てえ信者だな」



タイミングが掴めないが、戦闘開始の瞬間が迫っているのは確かだった。ダンはどうすればアマゴウラを殺せるのか、ギリギリまで考え続ける。ジュリアはオラワルドでの経験を思い出して、アマゴウラに直接攻撃が当てられるようその位置を特定しようと必死になっていた。



「……馬鹿ですね」



「っ?」



しかし、ふいに栞がそう呟いたのを聞いてダンの集中が乱れる。


























………………………………next…→……







斬る…!!!



頭上から、一撃必殺。結果としてまた凪咲の出番はない。でも少なくとも今はそんなことどうだっていい。一緒にいたい人と共に生き残る…その結末以外は求めていないから。


抜いた創造刀が2人の敵を直線上に捉えて、ついに世界ごと斬っていく…



「……は?」



のだが。僕の目の前に拳があった。突然のことで反応は周回遅れ。だって完全に予想外だ。こんなの。



「っっっっっぶ!!!!!」



そして案の定、拳は僕を打った。しかも鼻を折りつつ横に流れて頬まで……痛みが、衝撃が、そのまま右目まで広がっていく。


僕の攻撃は中断され、しかも創造刀を消してしまった。両手で顔を覆って痛みを受け取るのが精一杯だからだ。


熱い。熱い熱い熱い。殴られた瞬間…あの時、僕も拳に突っ込む形になっていた。攻撃の動作的に仕方なかったが、そのせいで威力が倍増していたように思う。



「えぐず…」



すぐにでも創造で治そうとした。

でも聞こえた。フッと風を切る音が。



「ぉ"っ」



重い。腰に一撃。撃ち落とされる。かと思えば、鋭いものに下から…腹を突き刺される。直感的に逃げられないことを察するが、同時にこの痛み共の相手をし続けられたなら…きっと凪咲はフリーだ。僕を攻撃しているその隙に彼女が敵を殺してくれればそれで



「ブレイズ・エクスキューション」



ほら。聞こえた。これで、この魔法で敵は。

少しだけ。開いた指の間から覗けば



「っ……おっ…かしいよ、腕が無いんじゃなかった…?」



凪咲の魔法は宙に浮かぶ両手によって受け止められていた。獄炎が大剣の姿をしていて、横薙ぎ…に失敗していた。威力は間違いない。だって



「押し負けたりしない…!」



彼女が諦めないほど、獄炎はより激しくなりその度に炎剣は爆発を起こす。あれの熱は高いところにいる僕まで届くし、直接見たらこの攻撃が見せかけだとは誰も思わない。



「ごふ、」



…僕はまだ凪咲と合流は出来そうにない。重力に従って落ちようとする体を下から打ち上げてくる。…足が。今だってしっかり胸を足の裏で押し蹴られて、衝撃で一瞬呼吸が止まった。



もしかして…こいつら……



(直接は)叩かぬ、蹴らぬ。



ということか。

本体についてる腕や足ではなく、無い方のを遠隔操作する形で戦う…のだとしたら。

今僕を相手しているのがケラヌ、凪咲の魔法を受け止めているのがタタカヌ…!

全距離対応の戦い方。しかも、攻撃方法がシンプルだからか攻撃の威力もかなりのものだ。



「運良く生き残っただけの弱者よ」


「今こそ死に滅べ」



反逆者から弱者に降格。相手からしたら僕達は思ったより強くないという印象なわけだ。まだ攻撃を当てられてないから…仕方ないかもしれないけど……でも



「決めつけるにはまだ早いんだから。…来て、"フェニックス"」



まだ始まったばかりだ。

そして、凪咲はまだまだ戦える。これまでの攻撃魔法…防御魔法…それらとは違う新たな魔法を使うからだ。



「"超召喚魔法"。その目にしっかり焼きつけてね…!我が名において命ずる。永遠の炎で邪悪を燃やし尽くせ…グラントロ・ブレイズ…フェニックス……!!」



遥か上。天上から赤の熱光線が降り注ぐ。あっという間に僕の視界は真っ赤に染まって、全身が柔らかな熱に包まれて…



「ぅぉぉ……」


「焦がされ、る……」



敵2人が苦しみだす。僕を攻撃する足は消えた。

だけど僕は苦しくない。むしろ体がむず痒い…



「生死を永遠に繰り返すフェニックスはそのどちらの力も自由自在に扱える。敵には永遠の苦しみを与える死の炎を、味方にはいかなる傷も病も治す生の炎を…!ふふっ…じゃあ、改めて。ぶった斬るね?」



炎剣を受け止めていた手が消えると、凪咲の攻撃が再開。またしても横薙ぎで2人を仕留めようとした時、僕は早くも全回復していた。



((EXECUTION))




やられっぱなしは嫌だから、地面に向かって落ちていくのも構わず攻撃を選択した。


タタカヌからは足を。ケラヌからは腕を。体についてる部位を、奪う。


天上、頭上、正面。回避不可で防御不可な攻撃が同時に迫る。万が一殺しきれなかったとしても、これで無傷で済むことはまずありえない。



((READ))

((READ))


「「我ら、新人類こそ世界の支配者なり」」



最速で僕の攻撃が届く。2人の体を削って、どちらも見た目では両腕両足を失う。そして本物の足を失ったタタカヌは体の支えを失ったのだから当然倒れ…



「弱者よ、愚かなり」


「いざ、参る」




「それも…!」


「ありなんだ…!」



倒れない。なぜなら、ケラヌの足がタタカヌの体を支えているから。そう。そういうことなのだ。

この2人は…2人1組で戦うことを前提にした代行x代行のコンビ。僕と凪咲のような代行x使者とはまた別の、特殊な例なのだ。

相性が悪いわけない。そして弱点となりうる可能性はもちろん潰してくる。

この2人は今、創造で創った手足を持っている。しかも自分の分だけではなく、ちゃんと2人分を用意している。



「っく…」



そしてまたしても凪咲の攻撃は…今度は4つの手によって止められる。

でもまだフェニックスの攻撃が残っている。今は僕達の攻撃の対処のために我慢しているのだろうが、すぐに全部放り出して回避を優先するはず。



「え」



どっ。


ちゃんと経験したことはないが、もし車に正面から突っ込まれたらこんな感じなのだろう。猛スピードで、避けられなくて、顔からつま先まで衝撃に押し潰されて、そのまま吹っ飛ばされる。

僕の身長よりも大きい足に蹴られた。しかもこれは片足。もう片方は…まさか



「潰れろ、虫けら」



ケラヌの勝利宣言が聞こえた。















………………………to be continued…→…


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