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僕達に与えられた使命。…と、新たな日常。  作者: イイコワルイコ
Case19 _ 3人の英雄
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第8話「乱入者は降り立つ」






「これがあの真なのか…!?」




真とゼロの戦闘を近くもなく遠くもない位置で見守るダンは、以前の彼と全く違う真の強さにただただ驚いていた。

まず、EXECUTION。これまでィァムグゥルが主力としてきた代行界隈でもインチキと呼べる圧倒的な創造を彼が使っているという事実。何をどこでどうやって得たのか想像もできないが、見ていて分かるのは真はィァムグゥルと同等に使いこなしているということ。サラと同じく人間としての"打たれ弱さ"は残っているから、攻撃を受けない立ち回りが求められるが


「サラにはオヤブンがいる」


パートナー無し。1人で戦う真にはサポートが無い。見えていないものをパートナーが見て教えてくれることも、体が追いつかない時に助けてもらうことも、緊急時に命を守る盾になってもらうことも、できない。


「必要ないと、そう言うのか」



腕を失ったゼロは攻撃手段と手数が減ったものの、超威力の猛攻を続けている。あえて言うなら彼女は橋が壊れないようにわざと力を加減しているようにも見える。その分、セーブした力は機動力に割り振られていて、


「く、真…それでは背後に回られる」


ジュリアほどではないにしろ、人間が目で追うには厳しい速度で動き回っていた。

振った腕や足が空振りに終わっても、打たれた"空気"が悲鳴を上げて痛がる。目に見えない落雷のような轟音と、攻撃を行った特定の場所だけ歪んで見える…錯覚とは違う確かな"馬鹿力"。

ゼロは、


「…強い」



毎回間一髪な回避とタイミングをずらしたEXECUTIONでの反撃、牽制を繰り返す真。彼からジュリアへと視線を移す。

ジュリアもまたダンのように立ち尽くしている形となるが、処刑モードは維持されている。アイドリング状態なわけだが


「割り込むタイミングはない」


下手に混ざれば真の邪魔になってしまう。反応速度も桁違いなゼロにカウンターされる可能性もある。だから、今のジュリアに出来るのは真の"セーフティネット"になること。


「だが、それもまた難しい話だ」



その時。



「……なんだ。焦げ臭い…?」



リムジンのことではなく、全く別の方向から。感じた異変はすぐにジュリアにも共有され、



「ご主人様」


「警戒を強めろ。真は挟み撃ちを警戒していた。他にも仲間がいるかもしれない」


隣に戻ってきたジュリアに指示を出す。すると


「……更に2人の代行を確認しました」


ジュリアの処刑モードの効果により、接近中の敵の存在が疑惑ではなく確かなものとなった。


「2人もか」


ダンは考えた。良くも悪くも。

ゼロとジュリアでは相性がよくない、とまずは考えた。似たタイプのオガルには勝てたが、あれはオガルが強力な力に溺れていた部分があった。わざと攻撃を受けてくれたから、勝てたのだ。しかしゼロは違う。きっと死ななくなる創造はしていない。次が無いからこそ、油断も妥協もない。


「私達はその2人の方へ向かう…」


その2人もゼロと同程度の"性能"だったら。そうなった時はダンの判断ミスとなり2対1の不利な条件で…恐らく殺されてしまう。それでも、このまま何もせず真を見守るよりは。



「行くぞ」


「はい」



真とゼロに背を向けて、走る。










「次は!」


「EXECUTION」


「スルー!はっ!」


「ちっ!」



あまり時間をかけてはいけない。

ゼロは少しずつ僕に慣れはじめている。予想通りスルーの効果時間はゼロが自身で好きなように加減することができるようで、僕がEXECUTIONとフェイクで言ってもほんの僅かな時間しか対応してくれない。

しかもだ。腕を失うまでは一度踏み込んだら一旦離れてくれたのに、


「おらぁっ!まだまだイケるんですけどぉ!!」


今はグイグイ来る。追い詰めて追いかけて追い詰めて…しつこすぎてこっちが攻撃する暇はない。常に向こうの攻撃を受けないように転がったり飛び込んだりしているから、体がすり減ってく気分だ。


「こうなったら」


((EXECUTION))


狙うはゼロではなく、足場。回避と同時に僕が立っていた場所に穴を開ける。大きめに。そこに突っ込んでくれれば、ゼロはそのまま橋から川まで落下する。



「うそっ!?」


かかった。しつこく追いかけすぎたせいで踏ん張れそうにない。足は何も無いとこを踏み抜いて、


「ぁ」


どうにか残されたもう片方の腕を使って、耐えた。

プールから自力で上がれない…みたいになってる様子のゼロは、これ以上ない無防備っぷり。



「でも形状変化って、そんなに簡単じゃないから」


前の僕ならこのチャンスの場面で頭痛だなんだと言って倒れていただろう。でも今は違う。たとえ痛かったとしても気にはならない。


見たまんま崖っぷちなゼロに近づく。右手を向けて


「今スルーって言ったらそのまま下に落ちたりする?」


「…んなわけ、ないじゃん」


「なんだ。じゃあ僕が落としてやるしかないね」



下までの距離はまあまあ。川は流れが速いわけではないけど、高所から落ちれば怪我もするだろうし軽く溺れるくらいは期待できるはず。



((EXECUTION))


「スルー!」


「馬鹿。君じゃなくて穴を広げるんだよ」


「……っ!!」



彼女が掴まっていた部分も消した。パッと、電気をつけたり消したりするくらいあっという間に。消した。そうすればもちろん掴まってられないから。



「くぅ!?おぼえ…」



言い残すこともできないまま、ゼロは橋から川へ落下。水面まで数秒で、相当強く叩きつけられたのか大きな水しぶきが…



「死んでくれたならそれでいいんだけど、微妙な気がする。こういう時って大体生き残ってて後からまた襲ってくるんだよね」



でも、この場では。僕の勝ち。



「ダン達はどこ行ったんだろう」










………………………………next…→……









悪魔との面会。今の状況を言葉にするなら、とダンは考えた。


三剣猫という土地に悪魔が降り立った。


代行という姿を借りて。




「ご主人様!」


「全力だ!やれ!」


((READ))



盾代わりのボディーガードは



「クチチチ!」


「くぁっ、」


1発で食い破られる。すぐに別のを創造しても時間稼ぎにもならない。

だからジュリアもダンの近くから離れられず、ずっと迫ってくる"それら"を1匹ずつ殺すことしかできない。



「チッチッ!」


「っ!?」



まっすぐ向かってくるのもいれば、家や店の屋根の上、壁伝い…様々な方向から集まってくる。

1匹でも脅威となる強さのものが、ほぼ無限湧き。殺しても殺しても次が来る。死ぬまで止めないと言わんばかりに。



「ヒットした商品ってのはアップグレードされたものも出てくるんだよ」



苦戦するダンとジュリアを楽しそうに見ている男。迷彩柄の上着を着て、右の親指の爪を甘噛みしながら、



「ドゥビマ_ダイヤモンドウエポン」



自分が創造した生物の活躍を見守る。


全身がダイヤモンドのようにギラギラと輝くアップグレードされたドゥビマ達は、以前とは比べ物にならないほどの防御力で獲物にガンガン向かっていく。



「でも驚きだ。もう8、いや…9匹も殺してるんだ。十分健闘した」



「ジュリア!「はい、ご主人様」



ジュリアと呼ばれる女の使者は、新たな姿に生まれ変わったドゥビマ達になかなか負けてくれない。顔面を強く殴りつけて怯ませると、素早く胴体に拳を連打してドゥビマを打ち砕いてしまう。両手はもうボロボロだというのに、殴る力は弱くなることもない。


一方で代行の彼はというと、自身に戦う力が無いのか身を守る行動ばかりで。正直つまらない。



…その時だった。



「なんだ?強化したのか?」



出会ってまだ数分。いや、数分も生き残ってくれている。"新商品"を試すのにはちょうどいいのかもしれない…そう男が考え直していると。



「異能の手」



「ほう?」



ドゥビマ達が、次々に死んでいく。一撃で、溶けるように。触れるだけでドゥビマの体が霧散していくのは、どこか悲しさもあるが見ていて爽快でもあって。



形勢逆転。



「全滅させろ」


「…行きます」



男はドゥビマを諦めた。結果は見えているから、創造の書を取り出して次の"商品"を生み出す。



ただ、それまでの間。客を退屈させないためにパフォーマンスを。



「レヴィウド」



その名を呼ぶと、近くの家のひとつが押し潰れる。



ドゥビマは死に続けるが、代行の方は動揺した。




「…2人目か、こんなタイミングで」


そう言って棒立ちのまま考えること14秒。


「…使うわけには」


考えても決断は出来ず、ジュリアに守られ続けることを選んだ。



ならこの2人は、死ぬだろう。

男はそう確信した。









………………………………next…→……








「あー、多分道間違えた」



気配のようなものを感じてる。きっとダン達が戦ってるんだろうと考えているが、曲がっても曲がって行きたい方向への道が出てこない。


「家の並びが絶妙に迷路感」


もし高く跳んだり出来たなら、屋根の上を移動して楽にたどり着けただろう。



「うわ、またここだ。1周しちゃったのか」


右か左、どちらか一方に曲がり続けていたわけではない。…ここで暮らしてる人達は道に迷ったりしないのだろうか。僕が道に迷っていて、その間にダン達が死んでしまうことがあったらと思うと少しだけ焦りが生まれる。



「…もう、どっちだろう」



「ニャーァー!」



猫だ。茶トラの。



「どうしたの「シャーッ!」


「うぉ、」



威嚇された。なんか猫にこんなに敵意を向けられるのは久しぶりな気がして、ちょっとだけ悲しい。


「まあ、万人…万猫に好かれるってのも難しい話だよね」



でも猫は僕から目を離さない。この場から立ち去ろうともしない。…何か伝えたそうにしている…?



「でも猫の言葉は分からない」



創造で動物と話せるようにもなるのだろうか。いや、多分できる。



「やって、みようかな」


もし話せたなら道案内も頼めるかもしれない。人よりも詳しいだろうし。




「ふぅ、…応用かな。重ねて見るではなく、はじめからそうだったと思い込む…」



((EXECU



((EXECUTION))



「ぇぁ?」



割り込み、重なる声。女性の声。直後…僕の両肩に激痛が走り、あまりの"重さ"に立っていられなくなる。支えきれない重さの何かが肩にのしかかってるみたいだ。


「う"ぅ、ぁぁあ"ぁ…」




「やれやれ。新人類ってのは猫相手にも遠慮がないのかな?見てられないよ。こんなに可愛らしい"トラさん"を殺そうとするなんて。妻子持ちだと知ってたかい?まったく」




声のする方に振り向けない。後方、やや上。屋根の…上?





「力を持つことの責任っていうものを教えてあげようか」




着地の音、まずい。まずいまずいまずい!動けない…



「フェアに殺り合う必要はないんだ。代行っていうのはそういうものだからね」



「っ、え、え…」


EXECUTION。創造して何をどうする。砂?砂を舞わせて時間を稼ぐか。



「ん、ん。言わせないよ。やらせないとも。さ、トラさんは家族のもとにお帰り」


「ニャーァ"ー!」


「後でかつお節でも持っていくよ」



僕の前から猫が…トラさんが逃げた。

でもそんなのどうでもいい。


((EXEC



「やらせないよ」



「っ、」



背中を蹴られる。前に倒れるが、手をついても…無理だ。支えられない。



「そうしてうつ伏せになって、どうかな。無力感は?」


「…」


「口は動くはずだよ?まあ、痛みに弱いとかなら難しいかもしれないけどね」


「…負けない」


「そう。やれるものならやってみたらいいよ。このィァムグゥルを相手に、どこまで戦えるのか」


「随分と日本語が上手い…どこの国か想像もつかない名前なのに」


「余裕だね?なら、もう少し厳しくいこうか」







((EXECUTION))















………………………to be continued…→…



僕あた豆知識。

ドゥビマの改良はダイヤモンドウエポンで11度目。アバルバ的にはセレブの番犬として売れると期待していた。

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