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僕達に与えられた使命。…と、新たな日常。  作者: イイコワルイコ
Case18 _ 柊木家の代行達
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第5話「真の才能」







「ごめんなさい…?」





「あなたに再会した時、僕が最初に言うべき言葉…です」


「再会ねぇ。お前の"マインドボイス"聞いて初見じゃないのは分かってたつもりだけど」


「本当に、ごめんなさい」


「いやいやいや。別にお父さんって呼んだからって土下座までしなくてもいい。足の上にボウリングの球落とされたとかだったら当然だろって思うけどさ」


「いえ。呼び方を間違えたことはそこまで」


「そうか、じゃあその態度に対して土下座要求するわ」


「大事なことなんです」


「……分かってるよ」


「ぃたっ、」


「悲しいことにこの世界でお前をどれだけ痛めつけても全部ここの中の出来事で終わっちまう。お前の現実には持ち帰らせてやれない。でもやらない理由にはならない。まずはその手足の指全部地面に縫い付けさせてもらった」


「……痛みは控えめなんですね」


「痛覚を通常の10000%にでもしたらお前の声帯ぶっ壊れるぞ?喋らなきゃいけないことが山ほどあるだろ」


「はい」


「ここは俺の世界。時間無制限だから好きなだけ話せよ」


「……娘さん…凪咲さんを守れませんでした」


「よし、死ね」













………………………………next…→……







「ほらほらどうした。24回目ともなると首切断じゃ痛がらないか?」


「……」


「ならまた感電死?燃やしてやろうか。俺の妻は本物の魔法が使えるんだ。火力は凪咲と比べれば桁違い。俺はそれを劣化させることなくコピー出来る」


「……何度殺してもらっても、現実は変わりません」


「知ってるよばーか。でもな、自分の娘が連れ去られましたって、泣きながら去っていったって言われた親の気持ち考えてみろよ。お前の雑魚加減なんてどうでもいいんだ。頼むよ。現実戻ったらすぐ死んでくれ」


「……」


「お前見ない顔だけどなに?どこで娘と知り合った?」


「……」


「俺と初めましてじゃないならここに呼ばれる条件も分かってるよな!な!?」


「はい」


「ちくしょう。良い子に育つように愛情だけは欠かさないつもりだったけど良い子過ぎて寄ってきたクソ野郎に懐かれたとか…あぁぁぁっ、もう!」


「ナギさん。痛めつけながらでも構いません。どうしてこうなったのかを話させてください」


「………悪魔相手にそれ言うか普通」


「…始まりは、創造の書。それを手に入れて所有権を得ると代行と呼ばれる存在になります。代行というのは神の代行。元は神の代わりに地球上の全ての生命を管理するという役割を」


「へえ、始めるんだ?勇気あるなお前」


「…ですが。その力を悪用する人達が現れました。以降、悪用する人とそれを阻止しようとする人の争いが…」


「分かるよ。分かる。いいや、続けろ」


「僕の家系…柊木家も創造の書を代々引き継いでいて、ある日から僕が代行になりました。創造の書は代行の能力の範囲内であれば何でもすることが出来ます。自分の肉体を変化させたり、特殊な能力を付与したり、魔法を使ったり…アイデア次第な中で、使者を創造するというのがあります。これは、大昔からあった選択肢の1つで自分の代わりに戦ってもらう存在を創り出すというもので」


「それで凪咲を創造した。でもある日負けて奪われた」


「…簡単に言うとそうです」


「……」


「ナギさんも凪咲さんも、ネット上の小説の登場人物なんです。現実には存在しない。だから」


「俺達には俺達の現実世界がある。俺からすればお前がイレギュラーもいいとこなんだよ」


「…」


「でも嘘じゃないってか。はぁ…。でもさ。矛盾してないか?俺の娘は弱くはない。本当の意味で世界チャンピオン状態の勇魔な俺の娘だぞ?それがなんで代行になりたてのお前が創造できた?オーバースペックだろ」


「創造した時彼女は若い状態で」


「未成年?」


「はい」


「っていうと、高3くらいの頃か。未熟なりにでもあいつが戦えるようになったのは」


「そのくらいの年齢でした。でもその後」


「お前の成長度に合わせて凪咲も成長した」


「…そうです」


「……ふぅ……なるほどな。お前も言ってみれば小説の登場人物なんだよ。漫画のが見栄え良さそうだけどさ。主人公枠だよなー」


「え」


「俺からしたらって話な」


「…」


「柊木家は代々引き継いできたんだろ?代行の血をさ」


「創造の書を、です」


「いやいや。考えてみ?何をもって代行の能力とするのかを」


「……」


「代行だったご先祖さまの血を引くのなら、お前にもいくらか才能があったわけだろ?しかもちょっと聞いただけでもすぐ分かる。その本は間違いなく奪い奪われな貴重品なわけで。それを守り続けて代々だろ?エリートまであるよ?」


「……」


「話がズレてるけど、続けるからな。…お前自分の父親とかお爺ちゃんとかと似てる創造したなーってことなかったか?」


「父親のことはほとんど記憶になくて…秀爺も代行であることは隠していたので」


「巻き込まないように?」


「多分、」


「秘められし力パターンかな」


「才能があったらこれまでに何度も苦しんできたのが嘘になります」


「嘘かもよ」


「死にかけました」


「俺は死んだこともある」


「マウント取りたいんですか?」


「いや。お前にやる気出してほしくて」


「はい?」


「凪咲を取り戻す方法なら目の前にあるだろ。最終手段じゃなくて唯一無二なんだけど」


「僕の能力じゃナギさんを創造するのは」


「自分の限界を自分で決めるのって本当にダサい逃げ方だよな。誰かの限界を勝手に決めつけるのも頭おかしいと思うけどさ」


「分かってください。あなたはめちゃくちゃなんです。フル装備すぎるんです。価格相応の能力でしょうけどとてもコストを払いきれない」


「凪咲の時はお前の"お財布事情"に合わせて創造できたんだろ?」


「……」


「今の俺じゃなくていい。分かるだろ?俺や凪咲が出てくる小説があるんなら、俺と凪咲が初めて同じ場に揃ったあの瞬間のことも載ってるはず」


「その時のあなたなら、創造出来ると?」


「今の俺はレベル"カンスト"だからな。あの時なら100に届いたかどうかってとこだし…戦闘能力は多分足りるだろ」


「……あなたを創造出来たら」


「ちゃんと説明すれば伝わる」


「出来なかったら」


「死んでほしい」


「……」


「俺達けっっこう話したと思うんだけどさ。…お前、」


「…」


「よし分かった。また死ね」









………………………………next…→……








「じゃあ次は凍結からの指1本ずつパッキリポッキリもぎ取っていきまー」


「……」


「話せよ。バレバレなんだよ。お前、俺の娘の優先順位かなり下だろ。ふざけんなよ。現状頼れるのお前しかいないのにそいつの中ですらついで以下なの?凪咲をなんだと思ってんの」


「……」


「知ってんだろ。ここは俺の世界だ。自分で言わないならこっちにも手はあるんだぞ?お前の恥ずかちいとこまで全部強制的に開示してもらうことも出来る。いいのか?」


「説明の手間は省けますね」


「…いい度胸じゃねえか」


「……?」


「なんだよ。うーん?あれれれれ?じゃねえよ。お前今俺に喧嘩売って」


「ちょっと考えたいので黙っててください」


「は?」




ここに来る前。つまり、寝る前。テレビに映し出されたテラの記憶。あれは創造によるものだが……形は違っても覗きの指輪と効果が似ている。記憶媒体の札に触れたから効果が発動して……画面を見ていると分かっていてもテラとの同調が



「おーい。聞こえてんだけど?」



それに、柊木ミコトの創造…あの義手。巨大イカを攻撃する時に変形したあの効果はよく考えてみればアイアン・カードと似ている。


…テラの残したものを秀爺以前の柊木家の代行が保管していた。


それも創造の書と同じように代々引き継いできたから、今家に隠してあったわけで。


……引き継ぐ時に手渡したりするだろうし、住む場所が変われば運ぶだろうし、触れる機会は無くはない。


とすれば、…秀爺も…父さんも…見ていたかもしれない。時期によっては、父さんはテラの記憶を見た後に僕を授かった可能性もある。だとしたら


………テラやミコトの創造のアイデアを間接的に僕が引き継いでいた…?


完全なものではなく、断片が遺伝子レベルで伝わってきていた。のならば、アイアン・カードや覗きの指輪として生まれ変わってもおかしくはない?



「もういい?出来たら説明してほしいんだけど」



自分でどうこう出来るものではないけど、引き継いでいる可能性がある?

…今の僕は、柊木家の代行達の才能を断片的ではあるけど全て



「ん?」


「ナギさん」


「今のがお前の最優先事項?」


「家系の秘密を隠すとしたら、どこですか?」


「…はぁ?そんなこと言ったって…いや、知らん…」


「お墓?」


「聞かれても困る。なに、お前今覚醒寸前?上手く助言出来たらお前ぶっ壊れの超強いやつになれそうなの?」


「か、帰ります」


「お前分かってる?」


「今の僕じゃ無理です」


「はぁぁぁっ!?」


「でも、それが変わるかも」


「……期待で顔がコーティングされてる。糸口が見えて嬉しいのは分かるけど期待しすぎるなよ。下回ったり裏切られた時すんごいヘコむことになるから」


「早くやってください!死は通過儀礼!早く!」


「あーそういうのムカつくはいムカつくー。ネタ完全に分かってて催促するやつマジでホントマジでお前ちょっ、腕引っ張んな!」


「……ナギさん」


「…」




「もしあなたが創れなくても、僕は凪咲さんを助けまベッ!?」


「ハハぁーっ!やってやったやってやった!ドヤ顔キメ顔台無しー!肝心なとこで上唇から上がぶっ飛んだー!どうよぉ?恥ずかちいなぁ?お?お?……………死は終わりでも始まりでもない。ただの"現象"、"変化"だ。きっかけでしかない。死んでも死ななくてもな。どうするかはそいつ次第だ。……次謝ってみろ、覚えてなくても永遠に帰らせねえ。閉じ込めてやる」








………………………………next…→……








「っ。う"ぉぇ」





現実には影響がないのではなかったのか。

目覚めと同時に不快感に襲われる。なんなら、右のこめかみがズキズキ痛む。……多分蹴り飛ばされた。頭部の一部を切り離された後に。



「ん〜…っ、」



起き上がろうとして知花に阻止される。何だこの子は。寝てるとは思えないような力の入り方で僕を抱きしめている。


「知花」


……反応なし。


「ちょっとトイレに」


……離れない。


「起こすべきか…いや、」


寝る前のことを思えばそんなことできない。ぐっすり寝かせて朝起きた時にケロッと忘れていてくれたらと期待することしかできない。


「……賭けてみるしか」



精一杯頭を持ち上げ、位置を確認する。部屋の中は暗いけど…あ!



「ソープ」



使者だけど猫だから。わずかな光も取り込んでキラリと光った目に呼びかけると



「ニャー」


「おいで…おいでおいで」



寝ている僕の顔のすぐ横まで来て、頬を擦り寄せてきた。



「ソープ。明里を呼んできて」


「……ニャー」



普通の猫なら、伝わらない。でも、ソープには伝わる。

トコトコと暗闇に消えていって、階段を下りる音が聞こえる。

少ししてから鳴き声がして……足音が増えて戻ってくる。


よくやってくれた。



奥の方でカチッと鳴って少しだけ明るくなった。それから恐る恐る近づいてくる人影…




「どうしました?」


「明里…!」



小声で状況を説明し、2人で協力して知花を引き剥がそうとする。



「私が腕を引っ張るので、素早く脱出してください……でもこれ起こした方が」


「だめだめ。……3数えたらせーので」


「はい……3、2、1、」


「せーの」



ググッと持ち上がる知花の腕。転がるようにして抜け出るも、執念深く彼女の指が僕の服を離さない。



「分かりました。こうしましょう」


「え、明里?」



そこで明里は僕が抜けた隙間にそっと入り込もうとする。気配を感じたのか、知花は僕を離して明里を待っている……気がする。

さっと布団に入ると知花は僕の代わりに明里をキツく抱きしめた。



「暑い…真くんこれでいつも寝てるんですか」


「寝心地は悪くないんだよね。…そんなことより、」


「いいんです。分かってます。真くんはやりたいことを。私は犠牲になります」


「犠牲って」


「今の私は抱き枕。抱き枕…」


「ごめん。なるべく急ぐから」


「お願いします」




明かりの方へ歩くと、ドアが開いたままのトイレだった。確かに、ここの電気をつけっぱなしにすれば睡眠の邪魔をせずぼんやりと部屋が見えるし歩ける。


足音を消すようにそっと移動することを心掛けて、1階へと下りることにした。


……探し物はきっとそこにある。




秀爺の、定位置に。



忘れかけていた記憶に無理やり色をつけて濃いものにして。



都合のいい解釈をしながら、彼の姿を見ることが多かった"レジ前"を目指す。



店番の役目なんてとっくに失われていたのに、レジ前で待機する理由はどうして?




「……勉強中だったんだね」




1階は明里に任せていた。清掃や本の手入れがされている綺麗な部屋の中…行き場がないままダンボールに入れられた店だった頃の残骸。


……ではなく。





「……感じる。今まで分かんなかったのに、あるって確信した途端…ムズムズして」




額を軽く擦り、頬を擦り…、両目を閉じて、開ける。なんてことない動作だが、目を開けた瞬間…僕は床に目がいって…いた。



でも違う。下の方なのはきっと合ってる。壁、かべ…




経年劣化だとスルーしてしまいそうになった、壁紙の小さな小さな剥がれ。やや浮いていて、捲れそうで、




「……っ」




右手の指で端をつまむ。親指と人差し指に妙な力が入る。少し震える。緊張から来るものだ。



「……ぁ!」




ゆっくり捲りはじめてすぐ、木の板の端?…が見えた。何かあると分かって一気に捲る。



そこには何かを隠すのにちょうど良さそうな穴があって、木の板で蓋がされていた。



……手が、震える。









………………………to be continued…→…


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