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僕達に与えられた使命。…と、新たな日常。  作者: イイコワルイコ
Case17 _ ひとつの国
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第9話「マジ、ウケない」







「力なきもの、神にいのる。ってんなら力があるやつはどうすんだって話だよな。ったく、創造の書はメモ帳じゃねえんだよ。…まあ元の所有者はとっくに死んだろうけどあえて言わせてもらう。力があるやつが、神に祈るんだよ。これからあなたが嫉妬するほどデカいことをやってのけます、許してねってさ。だから今後は……全員、俺に祈りを捧げろよ?……嫉妬はしないけど許しはくれてやるからさ」











遠くから、声が聞こえる……気がする。


それは"空耳"と言われることもある。時には"幻聴"とも。


そしてほとんどが聞いた人間に何かしらの問題があると考えられる、のだが。










「これからは、俺が、神だ」









その日の朝方。自分こそが神だと宣言する内容の空耳、幻聴が聞こえたと日本中で多数報告があった。


しかし誰も、その声を真剣に聞き入れなかった。




……現時点では。







………………………………next…→……








柊木家前。





「どうしよっかな。別に話さなくてもいいけどちょっと気になるまであるし」




明らかに、周りと違う。それは容姿の話だけではない。


通勤通学中の人間達がその同種と思われるはずの存在を避けている。

力の差が本能に作用している。関わってはいけない。同じ場所にいると知られてはいけない。存在していることを感知されたなら、その時はどうなるか分からない。


顔にも声にも出さない。生命そのもので危険を感じ、無意識に脳が退避命令を出す。



「っは、てかさ。この家。なんか守られてない?」



早朝。誰にとっても予想外なタイミングで、ゼロは姿を現した。

味方のべダスにさえ、昼前に行くと話していたのに。



「……ん」



((READ))


【白熊】とお揃いの表紙。創造をして



「ヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバい…」



早口でキーワードを連呼する。言えば言うだけ、自分の代行の能力の範囲内で力が強化されるこの創造。


「12回。あと8回でウチの最大。これなら壊せるっしょ」


彼女が把握する限界は20回。これは言った後に気を失った回数であり、実際に体を動かして…となると19回が実質の限界で。

12回言った今、彼女が力加減を間違えると1歩踏み出す度に大きな地割れが発生してしまうほど強化されていて。



バチッ!!



「…っつ。は?何これ触れないんですけど」



それなのに、柊木家のドアに触れることができない。


静電気を感じて咄嗟に手を離したような感覚。


今度はドアに対してやや不意打ち気味に素早く手をかけようとするが、やはり同じように弾かれる。



「…何これウザ。どういう創造?」



家を守る創造。それにはすぐに気づいた。だから創造で自分を強化して、見えないバリアでもなんでも強引に突破しようと考えたわけで。


ならば。



((READ))



「スルーで行くしかないっしょ?」



壁や物をすり抜けることができる創造に切り替え、突破を試みる。

予定ではこれでさっさと中に侵入し、油断しきっている柊木 真を



バチッ!!



「ぁふ」


回転ドアが突然逆回転になったら。そんな強い衝撃がゼロを襲った。

抜けられると確信していたのに、結果に裏切られた。


痺れるような、ズキズキビリビリとした痛み。


どこが痛いではない。どこも痛い。


ゼロは頭を軽く振り、鼻がツンとする感覚から垂れるより先に手をもっていく。

受け皿にした手のひらに鼻血が溜まっていく。



「これって」



想像以上。

以前"彼"に会った時のことを思い出すと、この展開は考えられない。



「使者の女を失ってショック受けてただけで、実は超強かったとか?…」



信じられないといった様子で。

ふとドア横のインターホンに目がいくが


「…触れない。近づきすぎるとまたアレになる」



ならば仕方ない。さらにやり方を変える。



「…」



ふと拾い上げるのはポイ捨てされていた缶ジュースのゴミ。

ゼロはそれを下投げでドアにぶつけようとするが、


「うっそ。ウチが触ったものでもダメ?」


次。


「すぅ…はぁ…っ…!!」





「出てこい!!真ぉぉっ!!」




大声で呼び出す。ここまでわざとらしく大きな声を出したのはいつぶりだろうか。



………。



「反応ない?無視だったらマジでぶっ殺すんですけど」




代行に対する防御策。

腹は立つ。が、それは相手がそれだけ上手くやっているということでもある。となるとやはり柊木 真の実力は



「じゃあ待つだけじゃん?」



ゼロは柊木家を見張ることにした。周りを見れば、見張るのにちょうど良さそうな場所がある。家と家の間の細道だ。

あとは守られている家から出てくるのを待てばいい。


出てきたらすぐに駆け寄って、殴り殺す。今のゼロならば一撃確殺なのだから。







………………………………next…→……








3時間後。




「ありえないんですけど。誰も出てこない…」




超、大誤算。


家は守られている。しかも中から出てこない。これではどうしようもない。




…威圧を解いてそこら辺を歩いている一般人に呼び出してもらえばいい…という発想は彼女にはなかった。

元の"一匹狼"のやり方が染み付いてしまっている。

何をするにも自分の力だけでやりたい。そんな考え方が、今のゼロを作り上げた。




ガチャ。




「あっ」




その時。柊木家のドアが開く。中から誰かが出てきそうで、なかなか出てこない。外の様子を伺っているのか、中の誰かと話しているのか…とにかく待ちきれない。


「来い…来い…来い…」





「それじゃ、アサリとマカロニ買ってきまーす!」




柊木 真…ではない。女が出てきた。元気なのが見てすぐ分かる。ジャージにスニーカー…服装はなんとも言えないが



「へえ。顔は良いじゃん」



がま口財布に買い物袋持参。…細かいことはもういい。おつかいがこの女の最後となるわけだ。



「あいつを殺せば心配して出てくる」



道の真ん中に飛び出し、まずはここまで待たされた分…女の背中にキツい一撃を




「させない」


「っとと…」



女まであと5歩。距離を詰めていたというのに。

急に目の前に飛び出してきたのは



「子供?ちょっと邪魔なんですけど」


「モモ、分かる。…代行」


「ああ、そういうこと」



桃色の髪。テディベアがプリントされた服…髪色はともかくザ・子供な見た目をしたこれもまた



「ウチと同じなんだ?」



なるほど。容姿で敵を騙していたわけだ。まさか子供が…と油断させ、殺す。だからべダスのエージェントでさえも



「敵って分かればウチは気にしないけど」


「…」


「っ!!」



子供は目の前に突っ立っている。なのでゼロは右足を大きく振って蹴りを…、と思わせ器用に左の拳を振る。蹴りを繰り出すと認識させるような動作で相手の視界の外から殴る。当たればもちろん、



「防御」


「ありえないんですけど!」



拳も、追撃の蹴りも、防がれた。しかも棒立ちで。触れることができなかったような。ということは



「家に何かしたのも?」


「モモ。守る」


「どけ、ガキ!!」



ゼロが攻撃するより早く、子供は姿勢を低くして"回る"。超高速の回転は、武器を持たないのにゼロの太ももに切り傷を与えた。


「全然痛くないんですけど」


「…」


しかしゼロの攻撃は


「ん!!」


「…」


やはり子供には届かない。

上から殴っても、横から蹴っても、前蹴りも、どうしても触れられない。


「ムカつく」


「っ…」


「は」


苛立ち。瞬間、子供の姿が消える。

どこへ消えたかを目で追う…そう脳が命令を出したのと同時に、


「イーヴィル…イーター」


頭上から声がした。


「ヤバっ」


回避は不可。しかし、こういう場合に備えてゼロは"カウンター"を持っていた。


((READ))


「っ…!?」


「今のは当たったっしょ。だって"マジ"だし」



マジ。言葉によるトリガーが必要ないこの創造は、無意識の絶対反撃を可能にする。

これにより、ゼロもまた攻撃を受け付けない状態になった。


上からの攻撃に対して肘で返す。


軽く吹っ飛んだ子供は、空中で再び姿を消した。




「どこから来ても無駄なんですけど。、」



ゼロの体が反応し、自動で反撃する。下がりながらの膝蹴り、回転蹴り、回転の威力を残した状態でやや上方向へのパンチ、下方向への頭突き。



「……」


子供が姿を現す。反撃には成功したようだが怪我はない。このままでは決着には至らない。防御を破らなければ。


「ならこれしかなくね」


((READ))



「お互い攻撃効かないとかマジ"ウケる"」



べダスを苦しめた、強制的に笑わせる創造。これならば直接攻撃が届かずとも…勝手に笑い死んでくれる。




「………」


「…え、マジウケる」


「……なに」


「は?いや、え、マジウケる。ウケるっしょ?ウケる。ねえ、ウケる」


「……?」


首を傾げられてしまう。


「嘘じゃん…ヤバ」




勝てない。が、負けもしない。


さすがに初めての展開。


ゼロは。



「考えなきゃ…」











………………………to be continued…→…


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