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僕達に与えられた使命。…と、新たな日常。  作者: イイコワルイコ
Case17 _ ひとつの国
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第8話「白熊と黒ギャル」






「……」


「…」


「めんどくさい…」



「今日はお客さんが多くて賑やかだねぇ。少し待ってて、美味しい豆大福でも持ってくるから」



若干の無言の間の直後、ヨシ子によって一緒に座らされたシャミア、モモ。

ミーシャはすぐに自身とモモの実力を感覚で比較し、簡単に勝てそうにないことを察するといつもの"めんどくさい"を発動。会話に混ざるようなことはありえない、とシャミアにプレッシャーを与えた。




「…」


この状況で、ひたすらにシャミアは逃げ道を考える。きっとヨシ子をうまく誘導すれば


「シャミア。無駄」


「え」


まさか。まさかのまさか。ミーシャがシャミアの考えを見抜き、却下した。とても味方には思えない発言に驚きを隠せない。


「…モモ」


そして、ふいに口を開くものだから。


「っ、」


シャミアは自分の顔の前で腕をクロスさせ、身を守ろうとする。




「モモ、敵じゃない。…今は」




「…敵じゃ、ない?」


何度驚けばいいのか。相手の言うことが本当であれば


「なんで」


自分達を知っているのか。会いに来たのはどんな理由か。



「同じ。真、守る」



「守るって。…あ!!」


目的が同じだと知り、つい誘惑に負けて任された役割を放棄していたことを思い出し頭を抱える。すぐにでも戻って敵を倒さなくては。手遅れになる前に。そう考えて立ち上がろうとすると



「はいはい…豆大福だよ。さっぱりしてて美味しいから食べて食べて」



ヨシ子が戻る。


「あ、」


行かなくては。焦るシャミア。そんな彼女に


「もう、いい」


モモと名乗る少女は告げる。


「全部倒した」


「……全部?」


「黒い服。真の家、もう来ない」


「ほ、本当に?」


「……」


「…え、」


「……いただきます」


話のペースが掴めない。

ヨシ子に出された豆大福を食べはじめるのを見て、シャミアは迷う。やはり見張りに戻るべきではないかと。



「ヨシ子。美味しい」


「よかったねぇ」


少女と老人の関係も不明だが、見ている限りでは


「悪い人じゃない…?」


「ほらほら、食べてみて?美味しいから」


2人のペースに飲まれ



気づけば。







ヨシ子の家の掃除を手伝い、





近所まで代わりに買い物に行き、





風呂を沸かし、





「……いや、待って」





気づけば、もう夕方。




やっとシャミアが待ったを宣言した時にはヨシ子の料理が完成していて。


"みんなで仲良くご飯"が成立しかけていた。




「あの。ま、守らないと……そう言われてるし」


シャミアは勇気を出して桃色の髪の少女に話しかける。

ついつい…とはいえ、ヨシ子のお手伝いを一緒にした仲だから少しは話を聞いてもらえると


「もう平気」


思っていた。しかし少女は自分のペースを変えず、変わらないトーンで問題ないと返す。


「あなたが強そうなのは分かる。でも敵はずっと……ねえミーシャも何とか」


「めんどくさい」


「そんな……」





結局、3人がヨシ子の家を出たのは19時を過ぎた頃。ヨシ子に使わなくなったマフラーと手袋までもらってしまい、もう寒さはほとんど感じない。



「肉じゃが……」


「肉じゃが、美味しい。ヨシ子の、上手」



ミーシャと少女が食べ物で繋がりつつある。

ヨシ子の料理は美味しかった、それは事実だが…このまま行かせるわけにはいかないと



「待って。モモ」



シャミアは思い切って名前を呼んでみる。こちらを向いたモモは



「真を守るのは、モモの役割」


「え?」


「だからもう帰って、大丈夫」


「で、でもこっちは」


何人も殺した。その間はどうしていたというのか。もし自分達がいなかったら今頃


「見に行ってた。シャミアとミーシャ、戦ってる間に」


「見るって何を…?」


「しろくま」


「へ?」





「シャミアー!ミーシャー!どこですかー!」



返事の詳細を聞こうとしたタイミングで、サラの声が聞こえた。

シャミアはつい振り返ってしまい


「あ、……いない」


視界から外れたその一瞬でモモは姿を消してしまった。




「あー!いました!どうしたんですか?こんなところで」


「そういう細かいことは帰ってからでええやん」


「そうですね」



迎えに来たサラとオヤブン。



「ん?すんすん、…これは美味しそうな匂い」


「肉じゃがとかそのへんやろ。旅館でそこそこ同じ匂い嗅いだことあるで」


「肉じゃが!シャミア、食べたんですか?」


「え。う、うん…」


「羨ましいです…!ホクホクのじゃがいもに美味しさがギュッと詰まったお肉…」


「お前帰ったら絶対ダンにお願いするつもりやろ」


「うーんっ、早く帰りましょう!」



考える暇も与えられず、サラはシャミアとミーシャの手を引いて。



「……モモ。…しろくま」






柊木 真の護衛が終了した。








………………………………next…→……







その日の夜には、東京では1m近く雪が積もった。



「……」



テレビが言うにはまだまだ雪は積もるらしくて。



「…」



座っていたベッドから立ち上がり、窓際へ。外を見れば伝えられた情報通り…もしくはそれ以上の結果を生み出そうとする、創造された雪が降り続けていて。



「マジすげぇんですけど…」



ホテル。寒さとは無縁の室内でゼロは。




「ふん、結局来ていたか。どうだ。儂の創造は」




窓から外を眺める彼女の背に、部屋に入ってきたべダスが声をかける。



「今戻ってきたんだ?」


「人を探していた。見つからなかったがな」


「ふーん」


「で?どうだ。雪は」


「……超キレイなんですけど」


「そうか。良かったな」



振り返ることはしない。降り続く雪から、街を自分の色で染め上げる雪から、目が離せない。



「儂の故郷は、ひとつの国と呼ぶには小さいと言われた。広さだけで語るならもっと狭いのに国と呼ばれる土地もあるのに、だ」


「……」


「それだけではない。世界中にデカい顔をする大国どもがビルだ兵器だと地球を汚してくれたおかげで、儂の国は滅びかけた」


「…おっさんは復讐がしたいってこと?」


「復讐?いやいや。認めさせたいのだ。儂が目指すのは、オラワルドの存在の認知…そして」


「ん?」


「世界をひとつに」


「どゆこと?」


「この世界の全てを儂が統一する。環境破壊を許さず、全ての民が自然に感謝し、」


「あー、天下統一とかそういう感じ?ウチ勉強あんま得意じゃないんだけど」


「難しい話ではない。誰かの居場所を奪う悪人どもを、創造で皆殺しにして、平和な世界を目指す。それだけだ」


「居場所…」


「お前も失ったか」


「自分のせいだけど。ウチがワガママばかりだから、親は」


「子供が欲を口にするのはよくあること。それを叶えるかどうかは親次第。もっとも、叶えられる状況になかったからお前も親も苦しむことになったわけだが」


「この世は金だもん。でも今は創造の力があるから、ウチは生きていける」


「お前達家族を追い込んだのは、お前達の母国だ。貧富の差など見て見ぬふり。国の上層部は誰もが自分の立場を守ることに必死だ」


「…」


「復讐しろと言っているのではない」


「違うんだ?ウチのこと怒らせようとしてんのかと思った」


「今こうしている間にも、お前と同じように苦しむ民がどれだけいるのかを。考えろ」


「…」


「復讐ではない。守るための戦いだ」






「自然を、罪なき生命を、汚れなき…愛を」


「誰かの、居場所を?」


「……ゼロ。儂は認めよう。お前は強い」


「おっさん…、べダスもすごいよ」


「力を貸せ。儂と共に戦え。お前にも思うものがあるなら。オラワルドを、全ての民に等しく居場所が与えられる国を」


「………」




やっと、振り返った。


べダスは真っ直ぐゼロを見つめていて。その手には創造の書を持っていて。


……ゼロも、創造の書を取り出した。




「ウチ、一匹狼ってやつだから。誰かと協力なんてしたことないし」


「代行ならそれは当然だ。儂とお前の間に生まれつつある"何か"は、本来ならありえないものだ」


「じゃあウチらが初めてかもしんないね?ウケる」


「全ての"未来"のために」


「…未来のために」




互いに突きつけ合う。手に持った創造の書が反応を始め、両者の新たな使命を祝福する。


表紙の色、ページ数が更新される。




「様々な色の雪が降る夜空。か、」


「超キレイなんですけど…」


「"その日"が来た時、同じように美しい雪を降らせよう。儂とお前で」


「マジヤバい。絶対ロマンチック」




正式な同盟の成立。

本来ならば絶対に交わることのないはずの、【白熊】と【黒ギャル】…2人の代行の運命はこの瞬間に変わった。








「べダス様」



そこに、部屋に入ってきたエージェントが声をかける。

その手に持つ紙には他のエージェント達の状況が記されており…



「全滅か」


「何があったの?ヤバくない?」



「敵は不明。別の任務で待機中の者まで攻撃を受けたようです」



「連絡は。手がかりは無いのか」



「…予想ですが、柊木 真の関係者かと。全滅直前での状況では」



「もう十分だ。そのターゲットのことを教えろ」


「はい。…こちらを」



エージェントは別の紙を渡す。手書きのそれにはターゲットの住所や曜日毎の外出の頻度などが細かく書かれており、監視役のエージェントが撮影した写真も貼られていて。



「ウチにも見せて」


「…どうだ。お前ならば出会う代行は全て殺しているだろう、見覚えはないはずだが」


「え。待って、ウチこの本屋行ったことあるし。この男も見たことあるっつーか」


「本当か」


「なんだっけ…」




ゼロは記憶を掘り返し、すぐに思い出す。




「ああ。話せないんだよこいつ。それで紙に書いて会話してたんだった。この本屋古いから、もしかしたら創造の書があるかもって見に行ったことあって…。でも」


「なんだ」


「使者の彼女を失ったとか言ってたから、戦えないんじゃね?って思う。誰かに守られてるか、新しく創った使者が超強いとか」


「…ゼロ、お前に任せていいか。儂らの邪魔をする、この男の対処を」


「いいよ。今どうしてるのか気になるし」


「今夜はしっかり休め。万全な状態で…油断するなよ。儂のエージェントは決して強くはないが、情報収集能力は間違いない。それが敵は不明だと伝えるのは」


「分かった。ウチは負けないって。ウチがどんだけ"ヤバい"のか、知ってんじゃん?」


「そうだな…!」



「まこと…ね。ぶち殺して、今度は創造の書ももらってあげる」
















………………………to be continued…→…




来年も頑張って書いていきます!

引き続き、お付き合いよろしくお願いします!

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