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僕達に与えられた使命。…と、新たな日常。  作者: イイコワルイコ
Case17 _ ひとつの国
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第2話「エージェント」






女が1人、男が2人。この場合性別に意味があるのかとィァムグゥルは疑問に思った。この3人組は既に人間ではなくなっている。何者かに使われるだけの命ある道具でしかない。


「考えるだけ無駄かな」



((EXECUTION))



どちらが先攻でも関係ない。ィァムグゥルの攻撃は相当な実力者でもない限り、



「むぐ、」「ごぐぅ」「むぇ!?」



「……お前、即死やんけ!!どうすんねん!!」


「忘れたのかな。周囲の人間は」


「ワイらに気づかないんやろ!?でもコイツらのことは」


「大丈夫だよ」


「なんでそんなこと言えるんや!すぐに…」


「同じだ」


「…あ?」


「彼らにも同じような創造が働いているんだよ。無視される存在同士で殺し合いが起きた。それだけだよ」


「……同じやと?」


「ミーシャ、シャミア。この3人の持ち物を調べてくれるかな」


「…はい」「調べるって」


「何者か分かるような情報や創造の書を持っているかどうか…まぁ、特別な物は持たされていないだろうけどね」



道のど真ん中で大きく口を開けて干からびた3人組。死んでもその顔には迫力があり、シャミアは近寄るのを少し嫌がる。ミーシャは指示に従いポケットに手を突っ込み所持品を漁る。


その隙に、ィァムグゥルは


「待て待て!ファミレスに入ろうとしてるやろ」


「ダメかな」


「ダメに決まっとるやんけ」


「どうして?」


「そんなもん真がお前を見たら……」


「もう、ずっと見られているよ。叫ぶのも忘れて、」


「ィァムグゥル」


「入ってもいいかな?」



店内にいる真達と目が合いっぱなしのィァムグゥル。なぜ入店したいのかを聞くより先に、オヤブンは



「…入ってもええ…、てか入れ!早く!!」


猫の視線の高さで気づいてしまう。他の人間に気付かれず、床を這いずり、真達に近づくスーツ姿の存在に。


「それには気づかなかったよ。許可をもらえたし、さっそく中に入ろうかな」


ドアを開け、入店。唯一こちらに気づいている真達にィァムグゥルは軽く微笑んでやると、


((EXECUTION))



すぐそこ。真の足に手を伸ばそうとしていた"それ"を即死させる。生命が枯れるまでのわずかな時間のうめき声に知花が反応する。



「え。う、うわぁ!!真さん!?誰!?これ誰ですかー!?新手の盗撮ですかー!?」


「……た、立って…皆立って!ににに、逃げないと」


「真くん?汗が」


「さっきから真っちゃんの様子が変…家に帰った方が」



「4人。オヤブン。悪いけどトイレに行ってきてくれるかな。男性用の方に」


「…嘘やろ?」


「君なら雑にやっても勝てる。サクッと片付けてきてほしいな」


「しゃあないな!!」


ィァムグゥルはまだ仲間がいることを見抜き、オヤブンに任せる。その間に席を立った真達に接近し



「少し、いいかな」



「ひっ……」


「真さん?…この女の人とお知り合いですか?」


「い、いや」



「……」



「あのー、真さんのお知り合いの方ですか?」



真を庇おうとする知花だが、ィァムグゥルは彼女の声を無視して真を見つめる。


「……残念だよ。もし君だったなら、あれは奇跡の創造だったはずなのに」



「奇跡?…」


「知花ぁっ!!逃げないと!逃げないと!!」


「あわ、は、はい!」


パニック状態の真はテーブルに1万円札を叩きつけ、知花の手を引く。そのままィァムグゥル…サラのすぐ横を通り抜け、すぐ後ろを芽衣と明里が早足でついていく。



「無力だ。力は持っているのに…その辺の子供の方がよっぽど強いよ」


現在の真に低評価。そんなィァムグゥルの発言を明里は聞き逃さず、店を出る直前に1人だけ振り返り……



「真くんは誰よりも優しい人です。相手を傷つけられるかどうかが強さじゃない」


真の代わりにそう言い返した。




「なんやねん!!あいつら意外と……ん、真はどうしたんや」


そこに戦闘を終えたオヤブンが戻る。


「帰ったよ。オヤブン、この後サラと話をしてくれないかな」


「あ?何事や」


「部外者より関係のある君たちが決めるべきだと思ってね」


「…はぁ?」






………………………………next…→……







「ンー…」




「分かった。新たなエージェントを向かわせる」


ホテルの一室。


「…どうした」


「いえ。邪魔が入ったようです。問題ありません」


「……」



黒スーツの男が跪き、電話の理由を説明する。それを聞くのは全裸の男。身長は2m近く、手足はボディービルダーのように美しい筋肉がついており、胸と腹は厚く膨らんでいる。さらに全身を白の体毛が濃く覆っていて、その姿はまさに……【白熊】。



「…邪魔とは」


「ターゲットの捕獲直前に他の代行が割って入ったとのことです。女の3人組で、実際に妨害してきたのは1人。その1人もどのような創造かは不明でして…」


「…問題ないと、言えるのか」


「……は、はい」


「儂の目を見ろ」


「…はい」


「儂は誰だ」


「はい。偉大なる国、オラワルド…その国王。我らが王、べダス様です」


「その王たる儂に恥じることなく言えるか。問題ないと」


「……問題、ありません。すぐにエージェントを送り、必ず柊木 真を」


「そうしろ。儂はもう待つことはしない」


「……どちらへ」


「外だ」


「でしたら」


「儂に文句があるのか」


「いえ。そうでは……護衛は」


「不要だ」


「では…こちらをお持ちください。べダス様の新たなIDとクレジットカードです」


「ああ」


「それと着替えを用意しますので」


「ああ…」



新たな身分証を受け取るべダス。当然のように偽造されたもので、自身の顔写真の横にはトーマス・マクサリーという偽名が。


「…」


年齢、57歳。アメリカ国民。他にも色々と書いてあるが。


「年齢だけは嘘がない」


フン、と鼻で笑い部屋を出るとホテルの従業員が着替えを持って立っていた。








………………………………next…→……






外に出てきたべダス。

歩いている若者を見て、小さなため息。


「日本人というのは貧弱だ。どうして創造の書はこの国に集まるのだ」


男は体の細いのが多い。中には大きいのもいるがそれはシンプルな肥満。女も女でべダスからすれば健康的には見えず、特に


「服を重ねて着るのに足は出す。意味が分からない」


「べダス様、こちらを」


そこに部屋にいたのとは別のスーツ姿の"エージェント"が現れ、持っていたスーツケースを開ける。中には創造の書が入っていた。


「儂のだな」


灰色に白の点々。特殊な柄の表紙のそれを開き…


「この国を変えよう。もうすぐ儂のものになるのだから」




((READ))




べダスは創造した。本が発光し、空から降るのは…雪。



「夜には戻る」


「は。お戻りになるまでにターゲットを捕獲します」


「……そうしろ」



エージェントに見送られ、迎えの車に乗り込んだべダスは…東京の街に消えていった。






………………………………next…→……








「まだ決まったわけちゃうねん。でもそう思ってもおかしくないっていうか、ィァムグゥルも同じことを」


「オヤブン。本当に、マコトが狙われてるんですか?」



ファミレスを離れ、近くのファーストフード店へ移動。ィァムグゥルの"都合の良い創造"により、猫の入店も拒否されることはなく、さらにはフライドポテトを注文し…



「これなに?」


「フライドポテト。ここのは太くてホクホクしてる。別の店だと細くてカリッとしてたりジュワッとしてたり」


「……ん、美味い…!」


話し合いの間暇になるであろうシャミアとミーシャに食べさせる。



「スーツのやつら、真がいるファミレスに向かってたやろ?しかも店内にいたやつらも真に近づいてた。これ以上ないやろ」


「でもどうしてマコトなんですか」


「そんなもん本人に聞かな分かるわけないやん。でも、ィァムグゥルは真のこと、あの時から気になってたみたいや」


「…覗きの指輪をもらった時ですね」


「せや。ィァムグゥルが気になるってことは、他の代行が目をつけるのもありえるってことやろ?」


「マコトには特別な力がある…とか?」


「知らん」


「……」


「真は…確実ではないにしても、狙われとるんや。あの黒スーツのやつらの目的が分からんから、もしかしたら代行なら誰でも狙うんかもしらんけど。…でも、真はワイらのことを怖がっとるのも事実や。見知った相手でもそうでなくても、代行やって分かると一気にビビりが発動する……面倒なやつや」


「でもマコトを守れるのは」


「あいつの使者じゃ無理やろ。あんなんどう見ても趣味用って感じやしな」


「なら」


「守るか?拒否されるで。嫌われるで。近寄れば近寄るほどにな。……ワイがお前から逃げた時も似た気持ちやった。お前が探し回ってるって猫の噂で知って苛立ってたくらいや」


「…オヤブン」


「真の気持ちが変わるきっかけがあれば、っていうのは甘いで。守るんやったら嫌われようが拒否されようが強引に関わるしかあらへん。覚悟はええか?」


「大事な友達です。相手にどう思われても、守りたい」


「……そうか。ま、お前ならそう言うとは思ってたで。じゃあ…ちょっとィァムグゥルに代われ」


「オヤブン」


「なんやねん」


「よしよーし」


「にゃぶ…急にどうしたんや」


「愛情表現です。いっぱい頭撫でさせてください」


「……しゃあないやつやな」



その後、フライドポテトが無くなる頃には真を守るための作戦が大体決まった。




「……というわけやな。ダンは話せば動くやろうけど、この前の戦いで燃え尽きた感あるし今回はワイらだけでやったらなアカンねん」


「なるべく気づかれないように、というのは面白いね。代行に気づかれない創造というのはなかなか難しい。ほとんどの場合、脅威と思わせることが良いとされるからね」


「戦闘狂みたいな意見は要らんねん」


「守るべき対象の近くにいること。対象を狙っている敵を撃破すること。ダン風に言えばこの2つが必要だね」


「真のことを守るんはミーシャとシャミアに任せたいんや。さっきの感じからして、あのスーツのやつら以外の敵はおらんと思う。個々は弱いけど数で押したいタイプや。それなら2人でも負けへん」


「敵の撃破は」


「もちろん力があるワイらの役や。探し出すのもワイらのが向いてるやろ?」


「……さっきの彼は、サラにとって」


ふと会話に入ってくるシャミア。オヤブンが頷き、それに応える。


「初めての友達って言ってもええな。ワイよりも先に出会っとるし、ワイもあいつのことは良く思ってんねん。……力、貸してくれるか」


「うん。…分かった」


「……」


「ミーシャには今回だけ、強く言っておくよ。見張りの途中で文句を言うこともないようにね」






そんな彼女達を…店の外…さらに遠くから双眼鏡で監視する、黒スーツの男。


「…エージェントC。追跡を頼みたい。対象は代行……、名は不明、性別は女。よく黒い猫と会話をしている」


「んニャぁ。行ってくるニャニャん」


呼びかけに応じて姿を見せるのは、世にも珍しい青紫の毛の猫。スーツを着ない猫の耳には通信機器が付いていて。


「殺してもいいニャん?」


「既にエージェントを何人も殺している。構わない」


「ニャん〜」


オヤブン同様に人の言葉を話すエージェントCは、一声鳴くと……瞬時に透けてその場から消えた。











………………………to be continued…→…


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