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僕達に与えられた使命。…と、新たな日常。  作者: イイコワルイコ
Case16 _ 奇跡の創造
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第12話「神」






手は伸びたのではない。




「放たれた」




大人が懐かしがるような古いアニメで見るような"ロケットパンチ"が最も近くイメージしやすい。リラックスした状態、余計な力を加えずに、開いた手…それが終の大天使に向かって放たれた。




「…、」




ダンは自分の視覚を疑う。正しく見えているはずだが、




「指が…6本あるように見える」






「そんな細い腕1本で何ができるっ!?大天使はただ大きいだけではない!!17万の負の感情を孕んだこの世の"終"そのものォ!!腕も、まとめてその体ごと!滅んでしまええええええ!!」






勝利を望み、結果を固定するように声を荒らげる。解放者の感情はそのまま上空の大天使へとパスされ、光のその人へハサミを向ける。



「それでも、叶わない。創造ができる人間では到底……触れることすら」


ダンは気づいた。


「……真の姿なのは、私のためだ。私に分かりやすいようにあえて人の姿を借りている」


まだ、2つの力は衝突していない。それでも


「六島は敗れる。私達が一切疲れていなくても、全員で立ち向かっても……この創造には勝てなかっただろう。それでも、六島は……」


終の大天使のハサミの先端が光の粒子に変わる。大量の粒子がゆっくり飛び散る…スローモーションの絶景を見つめるダンの目は光が映り込み輝く。


「創造を書き換えることが出来たのは私の力ではない。この力に影響されていた…。だが、これは書き換えているわけではない。なぜ自然消滅する?六島はこの創造を維持できるだけの能力を有している。……何が、何が起きているんだっ…」






「この生命だって賭けてやる…足りないなら!!」





押され、消滅まっしぐらな大天使を見て解放者が吠える。





「生者の魂で足りなければ、無限の死者を継ぎ足してやればいい……そのためにこの創造があるのだから」



((READ))



「六島の創造…死者の、使者」



「お前なんかの言う事を聞いてどれだけの生命が一方的な終わりを迎えたか…!!水に溺れ!!火に焼かれ!!土に埋まり!!雷に撃たれ!!毒を喰らい!!寒さに!!暑さに!!挙げ句の果て…………っ、」



「時間。そうだ。そもそも、代行など必要なかった。どれだけ足掻いたところで、時間が生命を殺す。……」



「最初から時間の制限があるのにどうして間引きを必要とする!?なぜ必ず終わりが来るのに、生命は互いを喰らい合うことで生き残るよう定められている!!人々が考える平和すら間違っている!!最初から!!何もかも間違っている!!お前はなぜ!!なぜ生命を創造した!!!!答えろ……答えろ!!!」



解放者の体に縋りつくように無数の腕が出現する。そして肌には小さな小さな顔が数え切れないほど大量に浮かび上がり、恐らく全身を埋め尽くす。



「空腹、睡眠、争い……この俺なら変えられる。定められている時間を平和に生きるための生命の改変が。人間もそれ以外も一切のハンデを持たずに生まれ、時間の許す限りを自由に過ごす。家族や友人が必要なら群れればいい。1人を望むならそれでもいい。余計な要素を取り払ったなら、言葉の通じない生き物と殺し合うこともない……猛獣と、人喰いと、恐れられる種とも友好的にぶぐっ、……がぁ……」



「六島の生命を使者が奪い合っている。従わせないのか…?まさかそのまま死ぬつもりなのか…!」




高速の巻き戻し。飛び散った粒子が結集し、消えかけていたハサミが復活する。その間にも放たれた手は大天使の腹部に触れそうになっていた。




「なぜ……なぜ生命は、死ぬ…?そんな欠陥品を創って…お前は何を思う?答えろ…創造の神……!!!」




「……手が、届いた。決着だ。六島…………お前の」




「あ"あ"あ"ア"ぁ"ァ"ッ!!!」




解放者の体に最後の変化が起きる。内側から腹を突き破るいくつもの手が彼の体を2つに引き裂いてしまう。縦半分に別れた体は赤黒い煙に変わり消滅……しかし





「ここでお前を殺してみせる!!死魂となっても覚悟は変わらない!!」




声は変わらず聞こえる。




「私、俺、僕、何者でもあり何者でもない……人間の総意を引き継ぐ力で、お前を殺す」




自分こそが真の正義だと、彼は宣言し乗り移る。奇跡の創造…"終の大天使"へと。









「それでもまだ無知と変わらない。なぜ真実を見ようとしない」







「……」


光のその人が最後に話した言葉をダンは無言で聞き、確かに記憶する。






ダンは見上げた。六島の、終の解放者の最後をしっかり見届けるために。


光の手は、大天使にただ…触れた。それで十分だった。過剰だったかもしれない。


再び、ダンの目には絶景が広がった。






それの前では、いかなる存在であっても無力。


それには、何らかの目的がある。


それは、本物の、



















………………………………next…→……








「神」




「なんやねん。1分もかからんといきなり喋って、神?そんだけか?なんやねんお前。なんやねん」


「オヤブン。まずはダンの話を聞きましょう」


「ご主人様、体に異常はありませんか?」




「……ジュリア」



「はい、ご主人様」



「私を連れて帰れ」



「…はい?」




棒立ち。何を見たかを話すより先に帰りたいとだけ伝えて。




「おいおいおいおいおいおい……!?」


「ダン!?ジュリア!」


「ご主人様!!しっかり!!」




ダンは倒れた。ギリギリでジュリアが受け止めることに成功したが、今度は耳…鼻…口…目……あらゆる部位から出血。あっという間にジュリアの着ているメイド服を赤く染め、床に血溜まりを作る。



「っ、やれることはやらないとね」


サラが慌てるより早くィァムグゥルが主導権を奪い、両手に緑の光を生みながらダンに触れる。


「不謹慎だけど。笑えるよ…このィァムグゥルの創造を少しも受け付けない。拒絶しているなんてね。…これなら、どう、かな!?」


頬に手のひらを這わせ、創造。緑の光がダンの頬に侵食する……が


「すぐに弾き出してしまうね。治せない。手は尽くしたよ」


「……ご主人様…、すぐに、帰りましょう」


「…っ、そうするべきだね。さ、そうと決まれば…走ろう」




ィァムグゥルは創造で瞬間移動すればいいと提案しかけるが、創造の拒絶を目の当たりにしてそれをしない。


便利な力を持っていながら、"アナログ"なやり方で。



「帰ろう」









………………………………next…→……








「知花。知らないだろうけど、この世が終わるって騒ぎになったことは何度かあるんだ」


「ええ!!そうなんですか!?」


「その度に人々は絶望して、大慌てで、後悔しないように善人になって」


「はい!それからそれから!」


「いざとなって……何も起きなくて」


「え」


「いつもと変わらない毎日が続くと知らされる。それで、この世が終わるなんて言ったやつは誰だってこれまた大騒ぎになって」


「あの。真さん。夜中の1時にコンビニデートに誘ったのは」


「今回もそうなったんだろうなって」


「もう!!」


「え、なに?」


「本当に終わっちゃうんだって、気にしないようにしててもずっと…ずっと考えちゃって」


「うん」


「真さんの言う通り、後悔しないようにってあの……」


「どうしたの?そんなモジモジして」


「真さんのばかあ!!」


「えー…」


「ん。ん!!」



コンビニからの帰り。手を繋いでゆっくりゆっくり、ゆっくり歩きながら。

本気で信じてたのに裏切られた僕達は、



「袋だけ渡されても…そういえば知花は何買ったの?」


「だから、見てください。中を」


「はいはい……きっと新商品のプリンでしょ?生クリームかかってて、真ん中にストロベリーソースでハートが描かれてるあれを……あ、雑誌も買ったの?……」


「お小遣いぶっこみました」


「……知花?これ…」


「ええそうです。今どき珍しいエロ本です。男の子の夢が詰まったエロ本ですよ」


「なんで買ったのかは聞いていいの…?」


「そんなの!何もかも全てが跡形もなく消えちゃう前に真さんとあんなことやこんなことをするために決まってるじゃないですか!!あたしがどれだけ恥ずかしい思いをしながらレジまで持っていったことか!!店員さんに5度見くらいされましたよ!?お前本気かって顔されましたよ!?」


「あ、あぁ…そうなんだ…?」


「はぁぁ……これじゃあ、あたしがただのドスケベってだけじゃないですか…今度からそこのコンビニ行く時どうするんですか?気まずいなんてもんじゃないですよ?同じ店員さんがレジやってたら?あ、この人この前エロ本買ってたやつだ!って毎回思われて、いつの間にか噂が他の店員に広まって」


「それはさすがに考えすぎだと思うけど」


「もうお嫁にいけません!!」


「知花。さすがに声が大きいって」


「真さんのせいですよ。責任取ってください。エロ本の代金も請求させてください」


「お小遣いの返金は却下します」


「なんでですか!!……ん?責任は取ってくれるんですか?」


「そりゃまあ……これからも僕達の生活は続くわけだし。知花達は使者だから、ほら、身分証とかも作れないし役所とかに記録があるわけでもないし……出ていかれても生活できるかっていうと難しいし」


「…ちゃんと考えてくれてる…んですね?」


「うん…まぁ、」


「明里ちゃんが影でコソコソやってるのも関係あります?」


「多分」


「ん……う、んと」


「なに?」


「そ、その将来的に?真さんもその、子孫を残したい的なことも」


「子供?ああ……考えたことないけど」


「あたしが」


「ん?」


「あたしがその…子供の……今肉まん食べるんですか?」


「肌寒いなって思った時から肉まんのシーズンだからね。特にこういう、夜に歩いてる時とかあったかい食べ物はいいよ…いただきます」


「…………」


「はい、知花も半分」


「ありがとうございます…」


「考えておくから。色々と」


「言いましたからね?責任取るって」


「まぁ、知花がドスケベ大魔神なのは変わらないんだけど」


「だ、大魔神なんていつくっついたんですか!!」


「はいはい」


「はいはいじゃないですよー!そのエロ本で勉強して、真さんを虜にしてやりますから…覚悟しといてくださいね!!べーだっ!!あむ!!」


「ちょ、なんで半分あげたのに僕のを食べ、あー!」


「むっふ!はんぶんのはんぶんたべてやりまひたよ」


「しかも具がほとんど残ってない…仕返しだ!」


「わー、たいむ、たいむ!」


「食べてる途中で話さない!飛んでるから!」


「わー!わー!」



今度は未来を信じて、馬鹿になった。















「こちらエージェントD。代行らしき人物を発見。監視対象に加える」






幸せを味わう2人を遠くから観察する黒のスーツを着た男。

鞄からカメラを取り出し、撮影…画面で確認する。






「柊木 真……」















………………………to be continued…→…


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