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僕達に与えられた使命。…と、新たな日常。  作者: イイコワルイコ
Case16 _ 奇跡の創造
201/443

第9話「REWRITE」








銃声。





銃声。銃声。銃声。





頭頂部から真っ直ぐ心臓までを貫通する、銃声。体の芯に強い衝撃が連続で与えられ、手足が小刻みに揺れる。






銃声。




またしても、銃声。





なぜここまでするのか、分からない。





とっくに弾は体内に、届いてはいけない部位に届いているのに。





連射。連射。永遠に続く、究極の痛み。






死。





ループする。痛みのピークが過ぎると、また最初に戻って痛みが突き刺さる。しばらくして落ち着くが、何度でも。繰り返される。





ああ。なんて、狂おしいことだろう。






「オガルにも変化があった。私達が異能の力を手に入れたように、何らかの強力な力を得た。それにより体を形作る全てを血液に変化させることが出来るようになった。体の一部、もしくは内部を走る血液そのもの…何でも好きなように操る。全てがオガルそのものだ」





狩られた。憎き相手に、





「異能の力が適用されないのは正直絶望しかけたが、サラ達の攻撃が微量ながら効いていたのが引っかかった。今こうしている間も、オガルはチャンスを待っていることだろう。…まだ死んではいない」





答えを探されている。





「血液が全てオガルの中へと戻っていく。腕をへし折れ。両方だ」





荒々しいやり方で。力任せに腕を折られ、骨ごと引っこ抜かれて。





「骨が液体化している。……それだけじゃない。そうだろ、オガルお前は死なない。……"この程度"では」





遅延行為。答えが見つかるまで、体を傷つけ、痛みを与えることをやめない。





「…………」






あきらめて、くれたらいいのに。





じゅんばんをかわってくれたらいいのに。





そしたらかならず、ころす。





かんじょうをもつひまもないくらいはやく、それでいてずっといたみがつづくようにしてあげられるのに。





あなたたちがしたのと、おなじように。






「…相性の問題だ」






げんかいだと、こたえがわからないと、いって。





どうしたらいいとふあんそうにはんなきで、いって。





ぜつぼうして。ころしてあげるから。





おねがいだから。あなたたちをころさせて。





「創造には相性がある。"絶対に殺す"創造と"絶対に死なない"創造がぶつかった時、必ずどちらかが適用されるように。引き分けはない。それを比べるのに必要な情報が、ィァムグゥルが時々口にする"感情"だ。単純な思いの強さ、感情の種類、それが創造に乗る。それが無理を可能にする。創造の書に書き込んだ情報以上の力を発揮させるに至る」





あと、すこしだから。





もうすこし、だから。





すぐ、いきかえる。そしたら、じゅりあのくびをねじきる。





そのつぎに





「オガルは死なない。簡単に死ねないほどの強過ぎる怨念のようなものを創造に乗せている。私達の異能の力ではこうして血液の活動を遅らせることしかできない。オガルの創造を否定しきれていない。感情ごと否定しなくてはならない。だから私は、私達は、相応の、いや…それ以上の覚悟を示さなくてはならない」





銃声。





銃声。銃声。





また、銃声。





「オガル。今、お前の体内には30の弾が撃ち込まれている。…創造の書の白紙のページが、この弾の素材だ。つまり。お前の体の一部は私の創造の書で出来ている…と言える」





………………どういう、こと






「今すぐにお前を超えるほどの強い感情を私達が示すことは難しい。そもそも、私もジュリアも普段から感情を表に出すタイプではない……だから、感情だけで比べればお前に勝つことは不可能だ」





…からだが、あつくて、つめたい





「こんな荒技は1度きりだ。光栄に思いたまえ」






なにを、するの






「対人間に用意した再構築。そして、使者にも適用出来るように用意した再構築。2つを組み合わせ、創造する。医学が滅ぶほどの"強制基準化"……その体で味わえ。お前の創造ごと、私が書き換えてやる…!!」









((READ))






けずりとられる。





けしごむでけされてくみたいに、つよくこすられてる。





おが、おがるちゃ……わた、わたしの





いたみ、くるしみ、うらみ、





たくさんのきもち





だいじな、だいじなだいじなもの





せんせいにもらった、ちから





きえてなくなっちゃう






「これを知ればィァムグゥルも驚くだろう。創造を否定する力とは別に、創造を書き換える力を得たと…知ったら!感情を乗せる対象の創造が書き換えられてしまえば、思いが強いほどそれに縛られてしまう。そう……どこまでも自分はただの人間だと、強くそう思ってしまえば」





ああ、いたい。





いたいよ。どうして。





てがうごかない。ゆびがうごかない。





さむいさむいさむいさむい。





「オガルは、徐々に通常の人間の体に変化している。そうなると元々痛みに強かったのもそうでなくなり、今頃耐え難い激痛と対面…っ、思ったより痛そうだ」





なに、なに、なにこれ、なにか、みえる





REWRITE

この肉体はダン スメラギが定める標準、健康的なものとする。





わたしのからだ。





「血液の色が私達のイメージする赤に変わった。そろそろ、大量出血に脳が気づく。それから少し遅れて」





ふつうに、なっちゃった。





「ショック死する」



















………………………………next…→……







ダンとジュリアが見下ろすのは、仰向けで寝かされた全裸のオガル。



"再構築"により体は綺麗な状態だが




「脳が死を認めるだけのダメージを認識した。終の解放者が使う創造を用いても蘇生は不可能だろう。もう、この体はただの人間のそれだ」


「ご主人様」


「分かっている。これで私が最初に手に入れた創造の書は残り数ページしか余裕が無い。ユキ達の物を使えば……だが、一旦。私達の成長はここまでだ」


「……あれは、どうしますか?」




上には、巨大な敵が存在する。空に浮かぶ終の大天使はまだ顔を見せないが、なんだかダン達を見下して笑っているような気がして。

もう少し目線を下げると、病院の屋上からこちらを見下ろす存在がいる。目が合っているはずだが、なぜか自信がない。



「もう一度同じことを六島に出来るか、というと難しい。それに、あそこにたどり着くまでに必ずもう1人……邪魔をするのが現れる」


「このままでは…」


「……信じてみるか」


「はい?」


「神を。創造の書を託した張本人だ。こんな風に悪用されて人類どころか世界が終わることなど、見過ごすはずがない。ふふ、そうなるとこの戦いそのものに意味が無くなるように思えるな」


「……」


「…う、るさい、で…ワイは、ほったらかしか」


「目覚めたか。オヤブン」


「よう、ころせたな」


「ふ。私もお前に似て天才らしい」


「……にゃふ…サラは」


「問題ない。私が治す」


「はよせえ」


「…ああ」




ジュリアに抱っこされたオヤブン。全く力が入らないのか、ぐったりしたまま半開きの目で彼女と目を合わせる。



「ご安心を。異能の手は解除済みです」


「そこちゃうねん」



ジュリアは、動物と触れ合う機会が少ない。もしかしたらオヤブンを抱っこしたのが彼女の使者人生で初かもしれない。むしろ、そうであってほしい。そうでなくては、困る。

オヤブンはどうにか力を振り絞って



「あたまはわるくないねん…でもな、ひだりてのゆびが…けつのあなにちか、あかんて」


「申し訳ありません」


「ええねん、きをつけてくれたら」


「ですが指を引っかけた方が落下の心配がないと」


「……おまえ、どこにゆびをひっかけようとしとんねん。ぶっとばすぞ、おい」



苦情を告げるが、彼女なりの真面目な考えが折れてくれない。



「けつは…てのひらちゃうねん…うでのほうにのせてほしいねん。おまえのばあいは」


「こうでしょうか」


「あしぶらんぶらんなっとるやん…まあええわそれで」




ジュリアに運ばれる。すぐ目の前ではダンがサラに再構築を使用し、体を回復させていて。




「は、これであいつがきえたらおもろいねんけどな」



「……そうもいかないよ。このィァムグゥルはサラの魂に上書き」


「くそ、ぶじやったか」


「遮らないでほしいね」




サラ…ィァムグゥルが目覚める。起き上がったィァムグゥルは真っ先にオヤブンをジュリアから受け取る。



「なんやねん」


「サラがね。ダンに任せるばかりではよくないと言うから」


「は?」


「君を治すよ」



突然。緑の光に包まれるオヤブン。



「ほわぁぁ」


「心地良いかな」


「あかん、ちょ、まて、」


「君が風呂好きと聞いてね。気持ちいい温度も再現してみた」


「……あ"っ!!お前ら!あれええええ!!見るんやあああ!!」



オヤブンが空の方を示す。状況が状況なので全員が空を見上げる……その隙にオヤブンは腕を離れダッシュ。木の影へ駆け込む。



「オヤブン。特に変化は……どこに行った?」


「ああ。元気になって……その辺に」



「ふぅ、すっき……」



ブルブルと体を震わせて出てきたオヤブン。丁度全員と目が合ってしまって。



「い、言っとくけどな!!ワイは風呂の中ではせえへんねん!ちゃんとトイレまでダッシュする日もあれば、洗い場で仕方なく…しゃあないやんけ!!そういう癖があるんやから!見るな!そんな目で見るな!小便したあとにガン見されるこっちの身にも」










ギャーギャー騒ぐ黒猫を上から見ながら、ふと考える。






「オガルは失敗作だっただろうか……」




解放者は、背後に立つ影に命令した。




「空を暗くしてやる。……あいつらを殺せ。特にあの緑の創造…黒猫の主人を最優先で。まだ諦めていないようだ」




「そうね…いいわぁ。ミスネも、ダルダも…オガルまで死んでしまったもの。ちゃんと仕返ししなくちゃよねぇ」




「フリーカ」




「なぁに、先生」




「お前は、失敗作か?」




「どうかしら。今に分かるわ…」






解放者は終の大天使に無音で呼びかける。


それに応えるように、大天使のハサミがゆっくりと……開閉して。






「行け」






空に輝く太陽に切れ目。その隙間から闇が生まれ、空を黒く塗り潰した。














………………………to be continued…→…


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