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僕達に与えられた使命。…と、新たな日常。  作者: イイコワルイコ
創造神戦争
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第45話「凪咲にゃん」







「…………すいません、うまく聞き取れませんでした。もう1回言ってもらっても」




「少しだけ。代行はお休みしない?」




「……あれ、おかしいな。凪咲さん、もう1回」




「私は真面目に言ってるの。だから真もふざけないでちゃんと聞いて?」




「僕今ものすごーく、大事なことを考えていたんです。代行として凪咲さんと一緒に強くなれるようにって」




「とりあえず目を見て話そ?」




「無理です。まず服を着てくださいぎゃう?」



以前テレビで見た"顎クイ"をされることになるとは。しかも触れずに。クイされた。



「クイされたって何?ふふっ」


「あの…」


「うんとね。…勝ち残るって言うのは違うよね……生き残るために、私達は何度も何度も創造の力で成長してきたでしょ?」


「はい、」


「疲れたわけじゃないよ。でも戦わないように生きるのもいいなって。思う…」


「……」


「ごめんね。自分でこんなこと言うの、どうかと思う。……代行と使者…じゃなくてね?…2人の人間、男と女。そんな関係になりたいなぁ…なんて」


「ま、待ってくださいよ!僕は凪咲さんのこと人間と思ってますよ!?」


「分かってる。そうじゃなくて」


「…」


「そ、その。恋人?らしく…みたいな」


「凪咲さん、顔赤いです」


「真もだよ?」




間違いなく重要な話題だった。代行を休む…この場合、戦闘になるような問題に関わらないようにするということになるが、それをするにはなんだかタイミングが悪いような気がする。

それでも話はここで終わった。かなり遅れて風呂上がりの姿を恥ずかしがった彼女は着替えのため行ってしまったからだ。

一緒に暮らしていれば機会はいくらでも…とも思うが、彼女の願いを聞いた後でそれを拒否したいとは…ならない。


期間を決めない"少し"の休み。戦いを望まない平和な僕達の新たな日常は




「お待たせ」



「…な、凪咲さん、その格好は…」



「変?」



「いや、そんなことは」



オヤブンの力、ゴーストハントを思い出す。似てるようで全然別物なのだが。

モコモコした白いスリッパ。若い女性が好むらしい…これまたモコモコした白い短パン。それとセットの白いモコモコした…そう、全身が白くて肌触りの良いモコモコしたやつで統一されている。それでいて、尻尾が付いていて。猫耳まで。



「にゃーんにゃん。ふふっ」



肉球付きの手袋まで…



「な、凪咲"にゃん"…!」


「そうだにゃん。頭撫で撫で、してにゃん」


「…………」



これをおふざけと言わずして何と言うのだろうか。しかし彼女は真面目にやっている。恥じらいながら全力で人語を話す猫になりきっている。二足歩行の、とっても可愛い、


「僕の…」


「にゃんにゃん…ふふっ」




新たな日常は…今、始まった。







………………………………next…→……









((READ))




「ーーーーーーーーーーーーッ!!」




((READ))




「オガル。我慢。我慢よ…」



半里台総合病院…霊安室。


何も無い部屋の中心に寝かされているオガル。体を大きく仰け反らせ、激しく震え、奇声をあげ、口からはブクブクと血の混じった泡が。

それでも赤黒い光がその体を突き刺す。貫く。包み、焼き尽くす。




((READ))



禍々しい光がその体を壊すのを止めると、今にも死にそうなオガルに人影が迫る。



「それじゃあ先生、手術お願いしますねぇ…うふふふふふふふ!」



フリーカを無視して、真剣な顔の六島悠悟はオガルに手を伸ばす。その手には黒い手袋をしており、切開を必要とせず体内に手を侵入させる。



「破壊を超え、創造に至れ。我らが大天使のために、その生命に新たな生命を」


言葉と共に体内に埋め込まれるのは、赤黒い表紙の本。



「完成品の"超常の書"がやっと正しい使われ方を…どうなるのかしら」



「離れていろ」



「爆発でもするの?」



「上の階に行け」



「心配してくれるのは嬉しいけど、先生…?この体では傷つくことの方が難し…」





「あァ…!!」





「ぅっ…」


「フリーカ。今すぐこの場から消えろ。死ぬぞ」


「先生こそ…!!」



後ずさる六島と、壁際の影に溶け込むフリーカ。

部屋全体の床にヒビ割れが発生し、その原因となる存在が中心に立っている。小さく体を揺らしながら、吐息を漏らし、新たな生を実感している。





「……………ァ」





小さな小さな1音。それだけで、六島の頬に切り傷が生じる。圧倒的な存在感、威圧感。「超常地帯」と六島が名付けたオガルの新たな力のひとつは


「先生、時間を稼ぐわ…外に逃げて」


「もう遅い。お前も」


味方にさえ危機感を植え付ける。





「ァァァ…!!あ"あ"あ"あ"っ!!!」





突然の叫び。割れた声がその体を覆う布を溶かし黒い液体に変える。その黒い液体はやがて体の形に合わせて変化し…



「フリーカと同等の物質変化か…!」


「てっきり前みたいにアイドル衣装にするのかと思ったら…あれじゃあ、まるでウェディングドレスじゃない…!!」





「…ブラッディウェディング。もうオガルちゃんは傷つく必要がなくなった…命も1つじゃない…これからはずっと、ずっと一緒よ。ケンジさぁん…」





フリーカは何かに気づいて思い出す。六島の管理する資料にあった、人間だった頃のオガルの情報を。そして


「先生、あなたまさか」


「そのまさかだ。"無理やり蘇らせた"夫に超常の書の所有権を与え、オガルに権利を移した」


「でも降霊の創造実験は完成前に妨害されたはず…!」


「ミスネが遺した技術だ。それで分からないお前ではないはず」


「なら。今のオガルは…」


「体内に夫を飼っている。あの姿はオガルが自分で創造した最大の形だ」


「最大の形。超常の書の限界ギリギリを引き出したのね…」





「2人で何をコソコソ話してるの…?」




向けられた目。失われたはずの眼球は


「あれも夫の?」


「……」


創造の書を開き、構える六島を見てフリーカも警戒を強める。





「オガルちゃん、強くなったけどわざわざ2人を殺したいとは思わない。でも邪魔だからそこ、」





「どけ」「ぶ」


六島が吹っ飛び壁に右半身を強打する。数秒遅れて



ガゴゴゴ!!!



部屋全体が崩壊を知らせる。軽く腕を振っただけの横薙ぎの威力を間近で見てしまったフリーカはすぐに六島の隣へ移動する。





「じゃあオガルちゃん、ちょっと出かけてくるから」





部屋から出ていく。どこへ?と聞きそうになったフリーカだが、迫力に圧されて聞くことができなかった。

代わりに六島を影で包み、崩れ落ちそうなこの部屋から安全に運び出すことを決める。


「先生。この部屋はもう」


「……構わない」


「"あれ"は?」


「回収しろ」


オガルの気配が消えたのを確認し、フリーカは六島を影で持ち上げ運ぶ。それとは別に伸びる影…



「これだけは失えない」



隠し場所から取り出した、黒い小箱。

全員が退出すると天井が崩れ…霊安室は失われた。







………………………………next…→……







「まぁ、細かいことはええわ。でもこれだけは聞きたい。アイマちゃん、なんで1人だけジャージ着てんねん。緑色のベタなやつやな。アイマって分かりやすく名前も書いてあるし」



旅館の周りを掃除しているアイマ。

探し物があるとサラがなんとなくユキに相談したところ、アイマの能力を教えてもらい早速頼りに来た…が。



「あぁ…えと、…あぅ…」


「なんやなんや。そんな恥ずかしそうに。可愛ええ…!」


「これは…浴場を掃除してる時に…」


「転んだんか?びしょびしょに濡らしてもうたから、着替えがなくてジャージなんか?」


「…す、すみません」


「オヤブン。もういいですか?嫌われて助けてもらえなくなるのは困ります」


「なんや。可愛いって話やん。しっかり者ばかりじゃつまらんやろ。失敗ばかりで辛いかもしれへんけど、それがまた人の役に立ってるっちゅうこともあるんやで?」


「アイマ。わたしは代行を探しています」


「おい無視か!」


「もしかしたらこの近くにいるかもしれません」



「………はい、そういうことなら…やってみます…ぅ」



ほうきを手放したアイマ。目を閉じて胸に手を当て、深呼吸をして集中する。

オヤブンが何か言いそうなのを見たサラは静かにオヤブンの口を手で塞ぐ。


そして



「近くに川があります。そこに行けば…多分」



「んみゃ、ホンマか!」


「ありがとうございます。戸締まり、しっかりお願いします」



「はい…もし見つからなかったら、次はついていきます…ね」





旅館を離れ近所の川へ向かう。

その途中、オヤブンはようやく目的について聞いた。



「ほんで、代行やて?どういうことやねん」


「ミーシャ…じゃなくて、」


「は?」


「クモマンは使者です。でも特別な力は無くて目が変なだけなんです」


「…それをやった代行がおるってことか?」


「はい」


「クモマンは本当に放置でええんやな?」


「それは問題ありません」


「でも代行は探すねんな?」


「はい。よくない人かもしれないのでまずは会ってみないと」


「ふーん」



オヤブンは片目を閉じてサラを見る。



「ミーシャの子供を探しとんのか」


「あ、」


「ワイは天才やぞ。お前が何考えてるかくらい分かるわ!」


「……実は言ってなかったんですけど、オヤブンだけ日本に行ってる間にわたしも色々見つけてたんです」


「聞いたろ。なんや」


「砂漠の国の代行、ミーシャです」


「ふんふん」



サラはィァムグゥルのことは明かさず、知っているミーシャのことを話した。情報源については、家出中にたまたま出会ったツアーガイドからということにして。




「ならミーシャが悪くなくても、その血を継いだ子孫が悪さしてる可能性があるってことやな。わざわざ日本に来て何したいんやろな。まさか観光なわけないやろ」


「最近は日本も大変みたいですから、」


「せやな。代行が日本に集まってて、終の…なんたらがおって、真達やダン達が必死に戦って。ワイらも何かせんとな!」


「はい!」




そんなこんなで橋に到着。

橋から下を見れば綺麗な川が流れている。そこは以前、真やダン達がトゥカミと出会った場所だった。



「お?…まさかあれちゃうよな?」



オヤブンが見つける。

それは偶然にもトゥカミが生活拠点にしていたのと同じ場所。焚き火をして川で捕まえたらしい魚を焼く女性の姿があった。その姿は


「真が見てたエジプトフォーリンラブと同じやん、あのセクシーな格好」


「なんですかそれ」


「んあ、知らんのか。貧乏な子供が主人公で、実は暗殺された王の生まれ変わりやねん。んで、褐色の肌にスケスケな黒い布を着た綺麗な大人のお姉さんに恋すんねん。実はそのお姉さんは…ってこの話は別にええやろ。でも見たまんまやったらエジプトから来たって思ってもええんやろな…」


「ん…金のアクセサリーが目立ちますね」


「頭の飾り物、ネックレス、腕輪、指輪、……足首にもやな。あれは金のサンダル?」


「あれは多分ハイヒールですよ、オヤブン」


「金だらけやな。売ったら大金やで。即大金持ちや。セレブや」


「……オヤブン」


「…ああ、見えてるで。奥から男共が出てきたな。ざっと10人以上ちゃうか」


「……こっち、見てませんか」


「…そうやな。あのセクシーなお姉さんが代行ってことやな」


「…創造で下僕にした男性達は一時的に代行に力を貸すだけの使者です。元はこの近くに暮らしていた人達だと思います」


「…だからって絶対殺すなは無理あるで?向こうはズンズン歩いてこっち来とる。ガチやで?」


「峰打ち、ですよ。オヤブン」


「簡単に言うなや。振らせてんのはワイやぞ」


目を合わせることなく、サラとオヤブンは自分達なりに話をまとめた。

とりあえず。戦う。それだけは確実で。



「やっぱり逃げるとかアカンか?人違いやったって向こうも思うかもしれへんで」


「オヤブン。変身してください」


「…しゃーない!やったる!!」





「…オヤブンソード!」


「んにゃらららぁっ!!!」



ボン!と可愛い爆発を起こし黒煙の中に隠れるオヤブン。そこにサラが手を突っ込み、武器に変わったオヤブンを掴み取る…!!




「んぃイエス!!」



その手には、見事な日本刀。ギラリと輝く黒刃の中、うっすらと黒猫の目が浮かぶ。


「ほな行くで!」


「はい!!」



戦闘準備が完了したサラは、橋の上から飛び降りた。










………………………to be continued…→…


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