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僕達に与えられた使命。…と、新たな日常。  作者: イイコワルイコ
創造神戦争
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第34話「ネタバレと前払い」







「ナギサ、どうしてあんなにショックを受けてたんですか?」



全く同じことを考えていた。

朝、食事中に箸を落とした凪咲さんは一気に口数が減って元気じゃなくなって…サラさんに必要なものを買い揃えるのに皆で出かけようって話だったのに、家で家事をやっておくからと…せっかく近所じゃない店を選んだのに。



「ん?貝殻ユリカってたしか…」



あの子によろしくのA子役。主役だ。…自然に思いつくのは、めちゃくちゃファンだった可能性。異性の芸能人が熱愛発覚して騒ぐファンはよく見かけるけど同性だし…いや、凪咲さんが女性にも恋愛感情を…待て待て、そしたら僕はどうなる?



「ユリカ?ナギサはユリカのファンですか?」


「まだ分かりません。というかサラさん、オヤブンさんは?」


「ナギサのために一緒にお留守番するって言ってました。あ、帰りにカリッカリなたい焼きを買ってきてってお願いされてます」


「ん…」



そういえば。

島でドラマの話になった時、凪咲さんとオヤブンさんで盛り上がっていたような。

じゃあやっぱり大ファンって考えるのが…



「わぁ。お店ってここですか?」


「…はい。とりあえず夏物と秋物…下着類…あと靴ですかね」


「ありがとう!マコト!」



この場所は事前に凪咲さんから伝えられていた。

シンプルなものから主張の強いものまで様々な衣類を扱っている4階建ての…



「おぉ!!マコト!見てください!3階にアニメ・マンガって!」


「中にいくつもお店があるタイプなんですね…分かってはいたけど女性客ばかり…」


「まずは3階!レッツゴー!」


「ご、ごー…」



エスカレーター、エレベーター、階段。サラさんは迷わずエスカレーターを選び、首が取れそうなくらいキョロキョロしている。まぁまぁと落ち着くようにお願いして目的の3階へ。



「ダイナソー&ダイナミックカウボーイ&ダイコン…略してダイダイダイ…!今こんなのが流行ってるんですか!?」


「マコト!わたしあっち見たいです!」


「わ、分かりました!」



コスプレ衣装もあるし、コスプレとまではいかないがそれっぽいTシャツもあるし、とりあえずロゴを入れたものやキャラクターを入れたものなど…す、すごい…これを着て外を歩けるか…僕には無理だ。恥ずかしさが勝る。



「おおー!!見てください!ヒーローが集合してます!」


「ユーシャーズ…あ、勇者の集まりってことなんですね。やっぱり真ん中には剣を持ったのが」


「わたしはこの斧のヒーローがカッコイイと思います!」


「すごいテンション高い…」


もし僕がこれを着たいと思ったなら、部屋着限定だろう。サラさんの場合はどこに行くのにも着ていそうだし…かっこよく見えるのだろうが。


「でもあれですよ。ここだけで買いすぎないようにしないと」


「マコト!これどうですか!?宇宙人はそば職人〜タイムスリップで世界を救う!?〜の宇宙人、ソバタロウです!」


「え、ええ…!?」







………………………………next…→……







なんだろう。凪咲さんと買い物する時はそうでもないのに今回はかなり疲れた。



「帰ったらファッションショーします!楽しみです!」


「喜んでもらえてよかった…です」



こっそり凪咲さんにお土産を買った。

エプロンだ。薄く黄色が入った白い生地に、色んな品種の猫がプリントされた"ネコダラケ"エプロン。

猫好きの猫好きによる猫好きのための…なんかそんな名前のお店が建物の中にあって、凪咲さんはこの店を見たかったんだろうなあと思った。

今度は凪咲さんを連れてこよう。絶対に。






「待てよ、おい!!」






「マコト?」


「今の声…」


何事か。考えるより先に体が動いた。

サラさんに買った物を預け、ポケットから取り出すのは



「ジョーカー・グローブ」



聞こえた男の声、こっちに走ってくる足音は2つ。誰かが追われてるか、2人組の何者かが迫っているか…

何にせよ。



「悪意を感じる」



僕が何か変わったという話ではない。

近づいてくる何者かの悪意の主張が激しいのだ。

それこそ、出会った人間は誰であっても殺しますと大声で叫んでるような




「っ…、」



「マコト!女の人が走ってます!」


「追われてる…!?僕行ってきます!」


一般人が相手なら。刃物を持っていようが、ボディビルダーのように筋肉の塊だろうが…なんとかなる。はず。

少しは戦い方を学んでいるし、命懸けの戦いの経験だってそれなりだ。



「おい!っくそ、ヒールのくせに走りやがる…!」



男の声は近い。



「はぁっ、はぁ…」


女性とすれ違う。

息は乱れていて何度も後ろを振り向きながら逃げている。なら、その視線の先には。




「………」



髭が濃い。男を見て真っ先にそう思った。黒で統一した服装で、色んな所にチェーンが垂れ下がっている。チャラい系だ。髪も金髪だし、顔が顔だからかあまり似合っていないし。



「何ジロジロ見てんだお前」



標的が僕に変わった。

男はさっきの女性より体力的に余裕があるらしく、息は全く乱れていない。

僕を睨みつけながらポキポキと指の関節を鳴らしている。とても分かりやすい脅しだ。



「手袋の表面を熱する…」


輝石を握り、拳を強化する。

殴る力を最大まで高めて一撃で決めたい。



「やる気か?ヒョロいくせに。女の代わりにサンドバッグになってもかっこよく見えねえのに」



「困ってる人を助けるのにかっこよく見えるかどうかを気にする時点ですでにかっこ悪いです。あと、女性を追いかけ回してるあなたもかっこ悪いです。とっても」



「あ?」



スイッチが入ったようだ。

向かってくる。走ってくる相手をよく見て弱そうな部位を探す。そう、例えば



「走り方…綺麗じゃない。左足がおかしい」



男は過去に左足を怪我した可能性がある。それか、体のバランスが悪いのかもしれない。

どっちにしても、左足が"弱点"に見えるから



「おらぁっ!」



「よし、」



勢いを殺せず、よろけながら右腕を振ってパンチを繰り出す男。前に出ながら姿勢を低くしてやや右方向に回避し、左膝を狙って左の拳をぶつけてやる。



「あぃ!?」



「正解ですね。しかも膝が悪いのなら今の一撃は相当重いはず」



案の定。男はもう立っていられない。こちらを睨みつける顔は怒りに満ちているが、悲しいことに男の両手は打たれた膝を心配するので忙しい。

あえて言うなら、代行を相手にしたのがよくなかった。知るはずもないだろうが。



「くっ…そ、お前…代行か…!」



「っ…。なら」



お前もか。と返したくなるところだが、男が代行だと分かれば最優先でやるべき事がある。



「んぶ!!」



「もう一撃。次で膝を完璧に壊しますよ?」



「…やれるもんなら」



「やります」



頬を雑に殴り、がら空きになった左膝に再び攻撃をする。



「はぁっ!!」



「んぃぃぃっ…くっそが!!」



衝撃で逆方向に足先が跳ねる。なかなか痛々しいものだが、ここまで遠慮なく攻撃できるのは島での戦闘のおかげだろう。



「まだです」



男の手を掴む。もう片方の手は男の手のひら全体…指の腹までピッタリ合わせて…熱する。



「ちっ!?や、焼ける!?お前っ」



「まずは右手。左手もすぐに焼きます」



手を大火傷すれば創造の書を触れない。

膝を破壊され、右手も焼かれているというのに涙目で耐え続ける男の根性には驚かされるが



「ぢぃああああっ!!!」



「創造の力を悪用する代行は見たことがあります。なのでなぜ女性を追いかけていたのかは聞きません。創造の書を差し出せば殺しはしません」



「は、はあ、は、いてぇ…ってえよおお!!」



「………」



ふと周りを見れば近くにいる人間はサラさん…その隣に追われていた女性。他には誰もいない。異常地帯なら女性も逃げるはずだが…いや、まさか女性も代行?

代行同士の争いに割り込んだのか、僕は。



「創造の書は」



「っ!持ってねえよ!あの大きい本のことだろ!?」



「その反応、少し気になりますね」



「俺は持ってねんだよ!!持ってんのは、…」



「勢いのまま言いそうになって、止めた?」



「…殺すなら殺せ。でもな、言っておくぞ。お前が守った女は殺さなきゃいけないんだよ…!絶対に!」



「………ふぅ。体、調べますね」



創造の書を隠し持っていないか調べるため、男に触りまくる。ジョーカー・グローブが熱されているので、触る度にこの男は火傷をすることになるのだが…



「ぐ、ぐ、…くそ…、っか!!」



「ポケットにはスマホと財布…だけ」



…パキッ!!…ジュッ…!



しまった。取り出してそのまま持ったらどちらもダメにしてしまった。

ここまでするつもりはなかったのに。



「あ、すいません。スマホの画面…財布も焦げちゃって」



「……覚えてろよ」



「わざとじゃないんです」



男のそばに置いて、その場を離れた。

戻るとサラさんは小さめに拍手をして興奮気味に出迎えてくれた。

女性は…気味悪がってる。当然の反応だ。




「すごいです!マコト!」


「いえ。それより、大丈夫ですか?」



「……一応」



サングラスにマスク…今気づくのもあれだがちょっと怪しい格好だ。

顔を隠したいのは…あ、追われてたことに関係するのか。



「他に追ってきてる人もいないみたいですし、外しても大丈夫ですよ」



「…いい。…ありがとうございました。じゃあ、これで」



冷たい反応だ。でも助けてくれと頼まれたわけでもないし、僕が勝手にやったことだし…そのまま行かせて



「ん?待ってください!もしかしてあなた…」



「う、」



「サラさん?」


「マコト!この人、貝殻ユリカです!!」


「なっ、」



「…なんで!?」


背を向けて立ち去ろうとしていたのに、振り返ってサラさんを睨んでいる。

いや、正解だとしても…分からない。怪しいとはいえ、サングラスとマスクを着けた変装はかなり効果が期待できる…わけでもないのか。サラさんにバレてるわけだし。



「どうして分かったんですか?」


「右の耳たぶの小さいほくろが隠れていませんでした!」



「えっ!?」



僕も同じ気持ちだ。

そこなのか!?顔じゃなくて!?という驚きが場の雰囲気を支配した。

女性は慌てて言われた通りに耳たぶを触り…諦めたようにサングラスとマスクを外した。




「…あ、綺麗」


「やっぱりユリカでした!」



「はぁ…」



生の芸能人。大人気女優。脳内では目の前の女性と出会えたことの価値を高める言葉がポンポン浮かび上がって。

数秒で



「大ファンです!握手してください!」


「マコトもファンだったんですか?」



「…分かった」



気づいてジョーカー・グローブを慌てて外す。

面倒くさそうに差し出された右手を両手で迎えて包む…ひんやり。柔らかい。スベスベ。



「おぉ…」


「マコト、嬉しそうですねー」



「もういい?」



「もう少し…」


「ユリカはなんで追われていたのですか?あの男は…あれ?いない」



「もう、もういいでしょ…?」



「あっ」



振りほどかれてしまった。

ほんのり良い匂いがする。香水というよりハンドクリームのものだろう。



「途中で抜けたから撮影に戻らないと…」



「撮影?もしかして"あの子によろしく"のですか!」


「なんですかそれ?んー…」



「そうだけど………、見に来る?」



「え"っ、いいんですか…」



「そっちの彼女を帰らせてあなた1人でついてくるなら」



「……サラさん、」


「マコト。なんか目が…怖いですよ?」


「っ。これ!タクシー代です!最寄り駅まで行ければあとは帰れますよね!?ね!?」


「あ、あ、大丈夫…でもナギサにプレゼント買ったのに」


「大丈夫!大丈夫ですから!!」


「わわ、オーケーオーケー。落ち着いて…あ、気をつけて帰ってきてください…」


「僕のことは気にしないで!!」


「あ、…」





あの、貝殻ユリカさんと一緒にその場を離れた。

あの、貝殻ユリカさんと。貝殻ユリカさんと。一緒に。






………………………………next…→……







「いい?撮影中は静かにしてて。その辺で怪しいやつが来てないか見張ってて」



「わっかりました!!」



「はぁ…」



なんとか第2…なんとかなんとか…スタジオとユリカさんが言っていたから、スタジオなのだろう。

連れて来られた広い空間の奥には作られたホテルの部屋がある。大きなベッドにピンク色の照明…部屋を囲うようにカメラやら何やら機械や人が…ドラマの撮影ってこんな感じなのか。




「あぁユリカ。おかえり。問題ない?」


「すいません遅れちゃって。もう大丈夫です」


「あの彼は?」


「え?あ、同じ学校だったんです。そこで偶然会ってせっかくだから見て行ったら?って誘ったんです」


「そうなんだ。でもいいの?今から撮るシーンだと」


「大丈夫です。大丈夫。すぐ準備します!」



ユリカさんは監督っぽい男性と会話した後、駆け寄ってきた女性スタッフにメイクを直してもらいながら…あ、気づいた。作られたホテルの部屋に制服が脱ぎ捨てられている。あぁ、じゃあベッドに座って待ってる男の人は共演者か。ならあっちは



「君。セットには近づかないでくれるかな。見学ならここから動かずに。ね」



「え、あ…」



若い男性。整った顔からして彼は俳優だろう。

僕の隣に立ってセット?を眺めている。



「ユリカの友達?」



「…あ、そんなとこです」



「今から撮るのはベッドシーンだよ。第2話の頭に流れる掴みのシーン。…見てるんだよね?」



「は、はい」



見てないから知らない。掴み?ってなんだ。






「はーいじゃあユリカちゃん準備できたんで早速行ってみようか!!」






「監督、大胆な人でね。リハは全くと言っていいほどやらないんだよ。練習を重ねるほど自然な表情や感情が薄まるからってね…」



親切な人…だ。何も知らない僕に色々教えてくれようとしている。






「っはい!」




監督の声の直後…静かになった。撮影が始まったのか?






っ!?ユ、ユリカさん…上下…下着姿で男の人に…うわ、あんな…うわ、キス!?キス!?





「A子ちゃん。今更ダメって言っても遅いからね。俺は、君が欲しい」


「ん…D男さん…寂しいよ…」


「もう寂しくさせない。俺が君の傍にいるから」


「お願い…して…?」




うわ!!!ベッドに押し倒されて…はっ!?し、下着を外そうと…ひゃ!?あっ!?


「…落ち着いて」


耳元。限りなく小さい声でそう言われて、なるべく冷静でいようと思った…のだが。そう簡単に切り替えることはできない。

だって、今ユリカさんは下着姿で押し倒されて胸を揉まれて激しめなキスをしてなんかもうみ、見てられない!!




「A子。…A子…!」


「あ、…あ、」




うわーーーーーーーー!!!もうやめてええええええええ!!!






「はいっ!!カットぉ!!いいよ!1発OK!!!」





「さすがだね。見た?ユリカの顔。寂しさのあまり、求められることに喜びを感じてる顔だった。彼氏役だからか余計に悔しい気持ちにさせられたよ」



「彼氏役…えっと…B男」



「静かに。次のシーンだよ」



「あ、」






何が、とは言わないが色々と終わった後のようだ。

ベッドで抱き合いながら、D男にお、お尻を撫でられている…





「あぁ…っ、めちゃくちゃ良かったよ。A子ちゃん」


「…うん」


「彼氏よりも良かったでしょ?」


「………したこと、ないよ」


「え。そうなんだ。じゃあ俺が初めて…かな」


「………」


「嬉しいな。A子ちゃんの初めての相手が俺で」


「…ねぇ、D男さん。このあと」


「ああごめん。仕事まだ残っててさ。また空いてる時に連絡するから」


「…あ…、」


「大丈夫だよ。A子ちゃん可愛いし、これからいっぱい可愛がってあげるって」


「うん…」






「はいっ!!カットぉ!!いいよ!1発OK!!!」





「…なんてことに……!」


「D男は出会い系で知り合った男だから。最初から体目当てでA子に近づいたんだよ。ヤリ捨て前提の最低男。…あ、君はネタバレしても平気?」


「…え?全然、大丈夫です」


「そか。ならセットチェンジしてる間に特別に教えてあげるよ。ここは邪魔になるから…こっちに」





案内されたのは控え室だ。

入口に名前の書かれた紙が貼ってあって、彼がヨゾラという俳優だと分かった。

誘導されるままヨゾラさんの隣に座ると、彼は台本を手に取った。



「当たり前だけど、誰にも教えないようにね。分かるよね?」


「はい…」


「じゃあ1話から順番に…」





A子とB男は高校2年生から付き合い始めた。

付き合い始めは何も問題は無かったのだが、3年生になり進路関係で互いに忙しくなるとデートなども出来なくなっていった。別々の大学へ進むのだから今のうちに絆を深めたいと考えるA子はB男に何度も連絡するが…無視されてしまう。

耐えられなくなったA子は泣きながらB男に留守電を残す。このままなら別れるべきだ、互いに違う相手を見つけて幸せになろう。と。

しかしB男はB男で本当に忙しく、留守電に気づくのに1週間もかかってしまう。卒業式の練習のため放課後も学校に残る必要があったある日、B男はようやくA子に声をかけることができた。しかしA子は無視してすぐに帰ろうとしてしまう。手を掴んで無理やり引き止めるB男だったが、A子はもう遅いと怒った。何度も謝罪し、必ず埋め合わせをするから…と、約束しようとするB男。しかし…。涙目になりながら、今度他の男とデートをする約束をしたと宣言したA子はショックで力が抜けたB男の手を振り払って去ってしまう。

そして、A子は学校をズル休みしてD男と会った……





「……濃い、」


「ん?何か言ったかい?」


「あ、いえ。……」


「ユリカのスケジュールがなかなか合わなくてね。色々あって今日第2話の撮影が再開したんだよ…」




D男は優しかった。食事をして、買い物を楽しんで…A子は常に手を繋いでくれるD男に身を委ねていた。

その結果、2人は体を重ねてしまう。D男のことを新たな恋人として見ていたA子だったが、事が済むとD男は急に素っ気ない態度になった。

しかし、ほぼ毎日のように呼び出してくれるのでA子は喜んで会いに行き、寂しさを埋めてもらうために毎回抱かれた。

それから時は過ぎて。

大学生活をスタートさせたB男だったが、彼はずっとA子のことを想っていた。卒業式を欠席し、あまり家にも帰らなくなったらしいA子のことを心配して彼女を探すことにする。

彼女がいるはずの大学で聞き込みして情報収集をしていると、彼氏と会うのに忙しいという話を聞けた。目撃したという場所に向かい張り込んでいると…A子が現れた。隣には知らない男の姿も。2人は仲良さそうに手を繋ぎ、人の少ない所で何度もキスをし、向かった先はラブホテル。

絶望するB男だった…がすぐにA子が1人でホテルから出てきた。大泣きしている彼女に駆け寄るとA子はその場で崩れ落ちる。B男に気づいたA子は何度も何度も泣きながら謝った。…そして、妊娠したことを告白する。




「…ええ…!?」


「驚いた?」


「当たり前じゃないですか。B男はA子のことを嫌いになったわけじゃないのに…ずっと会えないまま…やっと見つけたと思ったら…A子はD男との子どもを…ですもんね」


「実は脚本を書いてる人と付き合いがあってさ。台本はまだだけど続きを知ってるんだよね」


「うう、し、知りたい…!!」


「じゃあ…条件がある」


「へ?」


「君、ユリカの友達なら…この後僕と彼女が食事できるようにセッティングしてくれないかな」


「………」


「分かるだろ?"共通の友人"ってやつ」


「……あ」


「よし、決まり」


まだ返事はしていないのに。



「B男は探偵を雇ってD男のことを調べさせたんだ。そしたらD男には本命の彼女がいた。そう。今まで出てこなかったC子のこと。それを知ったB男はA子に頼んで、A子とD男のメッセージのやり取りと出合い系サイトに登録したD男のプロフィールのスクショを証拠として渡してもらうんだけど…」


「ま、まさか」


「そのまさかさ。C子に証拠を突きつける。でも視聴者はここまでだとC子とD男の関係をぶち壊すための行為だと思うわけなんだよね」


「違うんですか?」


「B男はC子を悲しませた後、自分も被害者だと言って慰めるんだよ…2人はあっという間に肉体関係に発展する」


「そんな!!」


「ただ別れさせるんじゃB男の気が済まなかったんだよ。それくらいA子が好きで、愛していたから。しかもC子との行為を隠しカメラで盗撮した。C子はそれを知らずに気持ちを爆発させてB男との子どもを妊娠したいとまで言っていてね」


「うわ。うぅわ」


「B男は盗撮した動画を保存したSDカードをD男の家のポストに投函した。もちろんD男は中身を知らずにその動画を再生して…」


「ひぃぃ…!?」



「ちょっと。なんで楽屋にいるの?」



「あ、ユリカ。お疲れ」


「ユリカさん…」



控え室に戻ってきたユリカさんは…バスローブ姿だった。

首をやたら気にしているのは、あ。そうか、撮影中その辺に相手の俳優さんが顔を埋めていたから…



「出ていって。見張っててって言ったのに」


「す、すみません」


「早く」


「はい!」



「ユリカ、さっきの」



「ヨゾラさんも!着替えるから!」



「おっと。ごめんよ」








………………………………next…→……







外に出るとやっと落ち着いてきた。

…なんであんなにユリカさんユリカさんってなってたのか分からない。でも"あの子によろしく"というドラマが23時過ぎに放送される理由がなんとなく分かった。えっと…Aと…D…Bと、C…で、互いに相手のパートナーと…動画を見た後はどうなるのだろう。これ以上となると殺人とかになりそうだが…




「……」



「何ボーッとしてるの?…どこ見て、…何も無いのに」



「え、あ。ユリカさん」


…綺麗だ。あ、すごい綺麗だ。

黒髪に限りなく近い茶髪…サラサラで


「…ねぇ。ヨゾラに何か頼まれた?」


「…あ。はい。…えっと」


「言わなくていい。付き合う気なんて無いし」


「そういえば。熱愛…」


「するわけない。相手誰だか知ってる?」


「あの…えっと」


「………もういいや」


「え」


「あなた…」


「真、です!」


「真。……んでしょ?」


「はい?」


「…代行、なんでしょ?」


「はい。そうで………、」



目玉がこぼれ落ちるかと思った。

驚きすぎてこれ以上ないくらい見開いた。



「守って」


「え、守る?」


「そう。守ってよ。狙われてるから」


「…誰に……あ、さっきのむ、」


「ん……」




……………………え。

いや、え。え?え。え、え?え??





「ボディーガード料。やっぱ無理とか言わないでね」


「い、いい、い、いま、き、ききす?きす?え?」


「はぁ…馬鹿なの?ん、」


「ん!?」



2度のキス。


彼女の突然の"料金の前払い"をどうすることもできず受け取ってしまった。


………なんてことだ。









………………………to be continued…→…



僕あた豆知識。

貝殻ユリカを好きになる事は、"男"なら当然のこと。

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