表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
僕達に与えられた使命。…と、新たな日常。  作者: イイコワルイコ
創造神戦争
144/443

第19話「オヤブンvsクラブの女王」






エレベーター。

代行が創造したものだと知ると途端に信用できなくなるのは、職業病のようなもので。



「だ、大丈夫やんな?」


「途中で誰も乗ってこないといいですね」


「怖いこと言うなや…」



エレベーター内、上部には普通のそれと同じように階層のランプがある。

今どの階にいるのかがランプの点灯によって分かるわけだが、



「知ってました?僕達が乗ったのは3階なんですよ。隠し通路の入り口は地下だったのにいつの間にかそんな高さまで」


「なあ」


「はい?」


「お前はその手袋で戦うんやろ?世の中ジョーカーみたいに武器を大振りしてくるアホばっかりちゃうで?そのへんどう対策してるんや」


「何も」


「いやいや、それやと怪我前提やん。一撃で死ぬような攻撃してきたらどうすんねん。ハチとかヘビが好きで使者にしたり武器にしたりするやつがおってみ?毒で即死やで?」


「今言われてもどうしようもないです。凪咲さんがいないと創造の書も出せませんし、そもそも」



チーン。




「着いたな」


「着きましたね」




創造事情で待ち時間を潰そうとする僕。

戦闘のアドバイスで待ち時間を潰そうとしたオヤブンさん。


どちらも中途半端なまま、目的の階でエレベーターは止まった。




「自動ドアじゃないのが違和感ですよね。…ドア、開けます」


「ワイが先に出て安全確認やな。任せえ」



少しだけ開けると、隙間からオヤブンさんが外へ。

ブルッと体を震わせてトコトコ歩いていった。



「出てきてええで」



…簡単な話だ。

遠距離攻撃が主軸の相手には輝石で脚力を強化して対応する。接近さえすればいいのだから。

中距離でもそう変わらない。強化する部位を変えて適切な対応をすればいいだけのこと。


隙がないわけではないが、ある程度の立ち回り方は考えてあるのだ。




「……」



エレベーターを出ると、ふと高校時代を思い出した。

廊下が…体育館の作りとかなり似ていたからだ。

トイレを出て左に行くとそのまま体育館で、右には更衣室と出入口。

正面には自販機と水道。…たしか小さい自販機もあって、絆創膏やリストバンドなんかが売っていたような。



「あっちから気配を感じるで」


「左ですね」


「そのまま勢いで来てもうたけど…心の準備はええか?」


「油断はしません。短期決戦、それだけを意識しましょう」


「せやな。真、」


「…勝ちます」


「それでええ。お前は1人やない。天才のワイがおる。忘れるなよ」


「はい」



左へ進む。

頭のてっぺんから後頭部までがピリピリする。

本能で何かを感じ取ったのだろう。危険信号。力を持っていなければすぐにでも逃げ出すべきなのだろうが。



「見えた」




赤い絨毯が途中から緑のものに変わっている。

近づくと、やはり体育館を思わせる広い空間がそこにあって。




「奥にいるのがそうですね」


「手前で倒れてるのは誰や?」


「僕達と同じ目的の代行でしょうね。……」


腹の辺りが血で染まっている。絨毯の一部を汚して…ん?


入り口を踏み越えてすぐ気づいた。

端っこに機械が置かれている。…病院にあるようなやつが。





「…あなたがジョーカーを殺した、招かれざるお客様ですね?」





怪人化していない…!?

化け物どころか大人の女性に…でも、あれがミナのはずだ。

【クラブの女王】の姿があれなのか?





「…不吉」




それだけ呟いて、女王は立ち上がった。

武器は…槍。そして胸当てを装備して身を守っている。あと盾も…スペード、ハート、ダイヤ…なるほど。





「あなた達に、死を贈ります」




予想が正しければ。

女王はジョーカーに関する何かも有している。

それが物なのかどうかは不明だが、



「ワイのことを見てるみたいやな…狙っとるなら好都合や。ワイが振り回すからお前は隙を…おい、真!どこ行くんや!」


「クラブの女王の正体は回復が絶望的な少女です。代行の能力は低くて当然なのにどうしてこんな大規模な創造が出来たと思います?」


「なんやいきなり!それエレベーターの中で話せばよかったやつやろ!」


「創造を支えるものがあるからです。突かれれば致命的な弱点があるからこそ…脆さと引き換えに力を得られた」


「はあ!?」




あの機械を全て破壊すれば。

クラブの女王の"中身"の生命活動が停止する。

つまり、あれと直接対決する必要は一切ないのだ。


たとえ終の解放者が関わっていても。

代行は代行。一般人は一般人。

限度がある。




「させません」




「うおおおお!?」


「んっ、」


ニュッと槍が伸びた。でも気づいてからでも避けられるくらいの速さだ。

ただ…中距離どころか遠距離攻撃。雑に見ても女王と50mは離れているのに…


でも今の反応で自分の考えが正しいとわかった。

だから、


「オヤブンさん、」


「おう!」


やはり猫なだけあって走ればはやい。

女王が少し遅れて盾を構えた。その間に僕は機械に近づきながら輝石に触れる。


強化するのは










「んにゃごらぁぁ!!誰が不吉の象徴や!!」


飛びかかるオヤブン。

素早い振りからなる引っ掻き攻撃をダイヤの盾で防ぐと


「邪魔です」


女王はそのまま盾でオヤブンを弾き飛ばそうとする。


「狙いは真やろ?分かっとるからこそ、出来る無理があるんやで?…秒身!!ゴーストハントォ!!」


少量の黒煙がオヤブンを包み盾を回避。

そして一瞬で煙の中から大きな大きな刃の爪が伸びる。



「っ、巨大化…!」


「ちゃうで?武器化や…!」


ガリリ!


刃の爪はダイヤの盾を深く傷つけた。


「マークやなくて石の方のダイヤやったら良かったのになあ!?」


次の瞬間にはオヤブンは元の黒猫に戻り床に着地。

攻撃を受けて衝撃に耐えている女王の足下へ潜り込み、


「真ばっか見てたらワイがお前を殺すで!!」


「ふふ、本当にそんなことが出来まスカ?」


「ん?」


女王の話し方に変化を感じたオヤブン。


「何もさせへん!秒身!ゴースト、ハン…」





「黒のにゃんニャンは邪魔ですネ」


「ではアナタにお任セシます」





「トォ!!!」


両足を膝から刈り取る攻撃。

横回転で刃が姿を見せるが



ガチィィッ!



槍に阻まれてしまう。

それどころか、


「にゃんニャンのお腹!」


「うぉわっ!?」


黒猫に戻った瞬間を狙っての突き刺し攻撃。

これはなんとか反応し回避したものの、


「あかん!こんなん一旦離れるしかないやんけ!」


全速力で女王から離れる。


「……いや、ちゃうな…!」


女王"達"から離れたオヤブン。

そして機械に触れている真の背中があまりにも無防備だと気づく。

それは女王も同じで。



「真!狙われとる!!」






ジョーカー・グローブはどうするべきか。

機械が相手なら、熱?電気?

一撃で破壊できればそんなことを考える必要はないのだが…。


ただ叩いて蹴ってでは解決しない。こんなコンビニにあるコピー機みたいな大きさの機械は、きっと大雨の中に放置しても大丈夫なんじゃないかと思えてしまう。


しかも複数…ただ破壊を目指すのではなく、ここは



「熱暴走…」



聞いたことのある言葉が浮かんで、それを信じることにした。

熱して、熱して、熱する。


耐えられないほど熱くなればきっと




ザッ、




「ぅ。……」




「ちぃっ!!真ぉぉぉ!!」



こうなるのは、分かっていた。

どんな戦い方でも高確率で心臓か頭を狙ってくると。

そして僕が危険な攻撃を受ければ




「隠し球も奥の手も使った。それでも足りひんのやったらこれしかないやろ!!」




オヤブンさんが本気になることも。

だから、




「まだ死ぬなよ。その生命、ワイに預けるんや」




だから、背中を強化した。

創造の力でなら筋肉の強化がそのまま防御力の上昇に繋がると考えた。

おかげで…激痛だけで済んだ。貫通もしていないし、傷も浅そうだ。




ガキィン!ギュルルル!




背後が騒がしい。

オヤブンさんが何かしているからなのだろうが、僕はそれを確認しない。


…ただ、感じはする。


来る。





「借りるで」




ボフン!!




煙…目の前が見えなくなっても咳をするような苦しさはない。

言ってみれば、これは迷い。

簡単に断ち切れる迷いなのだ。

そして迷いを断ち切るのは


「しっかり持てよ。離したらあかんで」



ブォォン!!



自分の体と同等以上の大きさの鎌。




「すぐに女王達を殺す。体はワイが動かしたる。お前はただ、死ぬな」


見える。2人の女王が。

見た目はそっくりだが、片方は無駄に笑顔だ。


それだけじゃない。


胸の中心に小さく揺れる炎が見える。…もしかしたらあれが、魂…!




「ぶちかましたる!これが…」



口が、勝手に…動く。







「「ワイと真のゴーストハントや!!」」









………………………to be continued…→…


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ