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僕達に与えられた使命。…と、新たな日常。  作者: イイコワルイコ
Case14 _ 欲望を叶える力
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第8話「針、千本」





「そぉれっ!!」


先行する凪咲さんは習得したばかりの錬金術で敵の大きな両腕を地面と繋ぐ。

されたことを理解できずに暴れようとするが、



「ウオオオオオ!!」



「真!」


もちろん動けない。

凪咲さんは錬金術を連発。

高さの違う柱をいくつも作り足場にすると駆け上がっていく。


その間に僕も敵に接近する。



「ウウウウ!!」


「人間ではない存在。でも怖くないと思えるのは凪咲さんがいるから…それに、これもある…!」


ジョーカー・グローブをとびきり熱く…!


「灼熱の拳!」


そのまますぎる技名と共に教わったパンチを繰り出す。

まっすぐ打ち抜く拳には殴ったことによる痛みはない。

しかし、手応えだけはばっちりで。


「ウッォォォウ…!」


脇腹が赤く…血が滲んでいる。

焼けるような痛みとパンチによる痛みが蝕んでいるはずだ。

ならば次は、とんでもなく冷たい一撃を。


「極寒の拳!」


アイアン・カードを使っていた時とは違う直接的な戦闘。

初めてだからこそ、敵が動けなくてよかったと思う。

動ける相手にきっちりパンチを命中させるのは難しいと実戦で気づけたから。


「ウンッ……!」


心臓を狙って打った。

同じように血が滲んでいて、肌の表面が痛々しいと思える程度に荒れている。

こうして見ると灼熱の拳の方が効果が大きいように見えるが、


「呼吸が乱れて動きが鈍くなってるような…」




「真、離れて!」


「えっ?は、はい!!」



呼ばれて見上げれば凪咲さんが攻撃の準備を終えたところだった。

どれだけ高くまで…きっと4階建ての建物より高いだろう。

金の足場のおかげで跳んだ時と違ってその場に留まれる。

わざわざ高い場所で…何を?



「超必殺。針、千本……」



金の球体を作り出し、それに炎魔法を浴びせる。

熱で溶けて…ポタポタと垂れる滴が


ブシュ…プス、プスプス…!


「ッウオオオオ!!」


「体に穴が開いていく…!」


もっと離れた方が良さそうだ。



「耐えられる?簡単に肉を溶かすこの地獄の雨に…」



小雨ほどの勢いになると、いよいよ


「ウウウウ!ウウウウウウッ!!」


このままでは危ないと理解し最後の抵抗を。

そう、最後の抵抗なのだ。

ジョウロで雪にお湯をかけるように、僕の目の前で少しずつ肉体が崩れていく。


途中、それが上を向いたせいで顔全体に浴びてしまう。

目、鼻、口…頬なども穴だらけになって…見ていて気持ち悪くなった。


骨も残らないほどスカスカになって、敵から命を感じなくなった頃。

凪咲さんは僕の隣に戻ってきた…あれ?


「汗だくですね」


「錬金術自体、私の使える魔法を絶妙なバランスで組み合わせて成立させてるから…それに炎魔法を重ねると結構しんどい…」


「どうやってるのか謎だったんですけど、魔法を組み合わせてたんですか。…錬金魔法みたいな感じですかね。大丈夫ですか?」


「うん。じゃあ…片付けちゃうね」


「へ?」


「ブレイズ・ショット」



ッ…………ドォォォ!!



凪咲さんが放った炎球は敵に当たった瞬間大きな炎に変わった。

そこそこ離れてるのに顔が熱い…!


「帰ろっか」


「え、終わりですか?」


「何も残らないよ」


「……一応見届けても」


「ダメ。そろそろパトカーを拘束してる金が消えちゃうから」


「ああ、そんなぁ…」


凪咲さんに手を引かれその場から離れた。


それでも何度も振り返ってその後を気にした。

炎だけがそこにあった。








………………………………next…→……







「…ふぅ」


帰宅。すぐに顔を冷たい水で洗った。

火傷はしていないみたいだが、ほんの少しヒリヒリする。



「冷やす?」


「いえ、そこまでは。…あ、すいません。お風呂入りたいですよね」


着替えとタオルを持っているのに気づくのが遅れた。


「一緒に」「大丈夫です!」


「早いよ。もう少し考えてから答えてほしいな」


「考えた結果僕がOK出したらどうするんですか!」


「そりゃあ…ねぇ?」


「っな…!」


「ふふっ」


「ぼ、僕明日のご飯の仕込みしますね!」


「はーい」






明日は餃子とチキンサラダと…とりあえず餃子の材料を今のうちに切って、タレも作るとして…


作業は順調だが、そろそろ気になる。

凪咲さんが僕をからかうのはどうしてなのか。

今でこそ好きと言い合える仲だ…けど、


「はっ、こういう場合はむしろ口に出した方が…」


思考の共有、恐ろしい。


「ニャア~」


「わっ、違うよソープ。これご飯じゃないよ。いや、ご飯ではあるんだけど。ソープのじゃなくて」


餃子のタネを混ぜるクチャクチャという音を聞いて寄ってきた。

少し贅沢をする時はグチャグチャに混ぜたご飯にカリカリを乗せて出しているから、それだと思ったのだろう。

そういえばハンバーグを作る時も寄ってくる。これはこれで可愛い勘違いだが。


「ふぅ…」「ニャ」


違うと分かるとすぐに離れていく。

ちょっと寂しいような。



「…ん…ジョーカー・グローブ…」


殴って傷つけたことへの喜びがまだ手に残っている。

軽く餃子のタネを殴る…ヌチャッと深くまで手が潜るだけ…。



「一方的でも、殴って、少しは効いていたはず。……」


ただ、凪咲さんが強すぎた。

錬金術が無くてもすごかったのに、金のおかげで攻撃も防御も…使い方次第で何にでも応用できる。

僕の創造だってそれなりによかったはずだ。殴っても痛くない、火傷や凍傷…まだ試していないが電気だって流せる。



「うーん。まだ足りない…?」


「そんなことないよ」


「うぅわぁっ!?」


本気でびっくりした。

後ろから抱きしめられて…首に触れる腕は


「まだ濡れてますよ!ちゃんと拭かないと!」


「悩んでるみたいだからタオルだけ巻いて出てきちゃった」


「……あの、それって床とかも濡れません?」


「うん。後でしっかり拭いて乾かすよ」


「………」


「さっきの真、カッコよかったよ」


「…でも」


「真はまだ攻撃することに慣れてない。本気で殺すって思ってても、どこかで手加減しちゃう。それは当然。まだ脳が制限してるんだよ。その制限が邪魔してる間は良くも悪くも人間でいられるってこと」


「なんかその言い方だと…」


「相手が何者でも関係ない。平気で傷つけて、何も感じないまま殺せるようになったら。だから、真は今のままでいい。無意識に遠慮しちゃっても、ジョーカー・グローブは十分に効果を発揮したし。何かあった時に自分を守るための力だって考えてよ。殺すために必要な力じゃなくて」


「はい…」


「あっ」


「どうかしまし」「待って!こっち向かないで!」


「……」


「タオル落ちちゃった。ふふっ」


「ふ、ふふっじゃないですよ!な、な、な、」


「じゃあ戻るね」


「ぐぬぬっ…」



多分、聞かれていたのだろう。

これでもかっていうほどからかってきた。

もしかしたらタオルが落ちたのも嘘で…うん?


何か踏んだ。


「…あれ、これバスタオル………え、えええええええっ!!?」



完敗だ。何にとは言わないが。







………………………………next…→……








「はい。ですので、今後は終の解放者によって使者に変わった人間を"怪人"と呼ぶことに…はい。…そうですか、もしよければ効果を…はい、はい」




電話中のジュリア。

その横で食事中のダン。


そして


「ご、ご主人様ぁ…おかわりはど、どうですかぁ?」


「そうだな。コーヒーを頼む…待て、アイマ」


「ひゃい!?」


「止まれ。そのまま歩けば転ぶ」


「あぅ…ごめんなさい」


「着物を着たまま動くのは難しいか」


「そんなことは…」


「足下にも気をつけろ。これでいい」


「ありがとうございます…!」


ダンに着物を直してもらい、顔を赤らめるアイマ。

結局部屋を出る直前、何もないところで足をひっかけて転んでしまうが…




「あれはあれで彼女なりの魅力というわけか」


「ご主人様。柊木様との情報共有が終了しました」


「少し聞こえた。何か変化があったのか」


「はい。柊木様は新しく創造を。自身で装備するジョーカー・グローブというもので、柊木様自身も戦闘に参加できるようになったそうです。それと、凪咲様は錬金術を」


「…錬金術だと?」


「歴史上に伝わるものを参考に、自身の魔法で金を生成する"実質錬金術"だそうです。どちらも大幅に強化されたように思います」


「そうだな。…だが私達は焦る必要はない。十分彼らより先を進んでいる」


「"異能"ですね。気軽に使える力ではありませんが、創造を否定する創造を超える創造はまず無いかと」


「ああ。だが私が創造しなければならないものもある」


「必要な資料は揃えておきました」


「……ダウジング、金属探知機、…ふっ。果ては超能力か」


「特定の人、物を探す方法をとのことでしたので」


「終の解放者のみを探し出すとなると難しいな。対象を1度遭遇したことのある代行に絞れば…超能力のそれと組み合わせることも出来なくはないが」



「コーヒー、お待たせしました」


ダンとジュリアは部屋の入り口に立つユキを見て手が止まった。


「アイマはどうした?」


「あ、実は下を向いたまま歩いてて強めに頭をぶつけちゃって…」


「………ご主人様」


「そうか、…すまない」


「えっ?」


アイマの扱いに困るダンだった。







………………………to be continued…→…


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