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異世界でもふっと婚活  作者: NAGI
第二章 南領編
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サヘルの町をぶらり散歩

サヘルの町の住居は、レンガ作りの平屋が一般的らしい。広大な森林を有していても、運搬にコストがかかるので商家など資金に余裕のある店舗や商人宅でちらほら木造建築が見られる程度だ。

私達が泊まった宿周辺は、落ち着いた雰囲気のなかにあり、少し足を運んで庶民が利用する通りを歩く。

シュロやヤシの木、ナツメヤシなどの樹木や大輪の花を咲かせたハイビスカス、ちょっとした南国気分に浸る。

んー。雰囲気はハワイとアラビアを足して二で割った風かも。

「地方ごとに特色があると言うか、東領とは全く違う趣だね」

東領が花の都なら、ここはさしずめ湖畔の都と言うところか。

こんこんと湧き出る地下水を水源とするオアシスは、レーヴェンハルト創造以来、一度も枯れたことがないと言う。

大きな湖から吹く風は、砂漠の乾いた空気や照りつける太陽の熱を半減させる効果があるらしい。

「砂漠の中にある町と聞いて、暑いのを覚悟してたけど、思った以上に過ごしやすいかも」

「砂漠の中心に向かうに連れて、温度が上昇し、人が住めない地域が広がりますが、この辺りは昼夜の温度差もそれほど変わらないし、住みやすいです」

幼少期、このサヘルで暮らしていたと言うセーランがそう言う。

「あぁ…」

あれでしょ?火竜が棲むとかいう砂漠の中心でしょ?

そんなところ、近寄らないに限る。ぶるぶる。

火竜に会いたいと駄々をこねていたセイラはお昼寝タイムにつき、宿に置いてきている。生まれたばかりの赤ちゃんだからか、一日の大半を寝て過ごすのだ。

かわいいけど、うるさくなくていい。

「ハァハァ」

ラベルが暑さでへばっている。舌を出し、ハッハッ言ってる。

ちょっ、変質者みたいだよ。

やっぱり、ワンコは暑さに弱いんだね。

ん?でも、ヴァンはそうでもないな。

「熱帯地域での訓練もあるからな。要は慣れだろう」

品行方正な神殿の騎士ではなく、一介の旅行者として振る舞っているためか、言葉遣いが崩れている。

すれ違う女の子達がヴァンを見て、頬を染める。

んー、私から見ても今のヴァンてば、ちょい悪っぽくていいんだよね。着崩したシャツの胸元がはだけて、がっしりとした胸板が覗いているのがたまらん。

やば、私も変質者みたいになってる。危ない、危ない。

獣人が多いと言うだけあって、多彩な顔ぶれだ。

犬系に猫系と言った、よく目にする種族以外にアフリカとかにいそうな種族がのっしのっしと往来を歩いている。

「ふおぉ。まじか」

びっくり。象さんがいた。でっかい耳に長い鼻。

人型って割とシュールだね。子供(子象?)だとかわいい。

「獅子族が獣人族を率いているという割に見かけませんね」

薄いヴェールを頭から体全体に巻き付け、日射しから身を守っているアリーサが、顔を隠すように覆った布を押し上げるように辺りを窺いながら、そう言った。

「そう言えばそうね」

私もアリーサと同じようにヴェールを帽子代わりに巻いているが、頭部から肩にかけての軽装なので視界は良好だ。その代わり薄い地の長袖を羽織っている。

周辺に獅子族は見当たらないようだ。代わりと言ってはなんだが、豹系や虎系が多い。兵隊っぽいから、領主の兵士かも知れない。

「獅子族はサヘルから程近いオアシスが拠点ですから、大半がそこで暮らしています。

ここでは交易を生業とした者が一部暮らしている程度でしょう」

獅子族は他者に使われるのを厭いますから。

ふうん。プライドってやつか。獅子の群れって意味も込めて。

「あー…」

暑さのせいでラベルがマジでやばそうだ。

「その辺で涼んで行きましょうか」

目にはいったカフェ?に入った。

「いらっしゃいませ」

かわいい系の店員さんが出迎えてくれた。

「五人だけどいい?」

「どうぞ。空いている席におかけください」

接客が行き届いているね!どこぞのファミレス並かも。

「ほら、冷たい飲み物でも注文しなさいよ」

「すいませんー。ここまで暑さに弱いとは思いませんでした」

しょぼんと耳が垂れる。

「東領と聖領しか知らないんじゃ、仕方ないんじゃない」

「面目ありません」

メニュー表を眺め、冷たい飲み物を注文する。

「オススメって、ありますか?」

「この小豆白玉のっけかき氷がオススメです」

なぬ?それって日本食、もとい日本のデザートだよね?

「先々代のご領主様のお母様が巫女様で、異世界から持ち込まれた甘味でして」

ちょいちょい日本の文化が流通しているね…。

欧州の隠れ里には日本フェチがいたのか、それとも日本人がいたのか。

「じゃあ、それで」

四つ頼む。ヴァンは甘いものがあまり得意ではないとのことなので、飲み物だけだ。

「お待たせいたしました!」

うん。普通に日本のかき氷だ。練乳がかかってないのが残念。


「あ!俺が行って聞いてきます」

かき氷を食べて体力が戻ったのか、ラベルが生き生きとしている。良かった、良かった。

そこで玄鳥の一族についてリサーチすべく、同業者?である一軒の薬屋に意気揚々と入って行ったのを木陰で待つ。

「聞いてきましたー!」

早っ。

「どうだったの?」

「ええ、それがですね…」

曰く、玄鳥の一族は絶滅危惧種と言われる程、数を減らしていて滅多に会えない。

噂によると現存する一族は、翼人族の族長家が保護している数十人だけで容易に接近出来ないが、処方する薬は高品質のものが多く、わずかに市場に出回っている薬は高価で庶民には手がだせない等々。

「絶滅危惧種?」

ツバメって多産のイメージなんだけど。

それっておかしくない?

「ええ。それには訳があって…」

何だか不穏な気配。もしかしなくても、過去に何かしらの騒動があったような。

もー、会う前から波乱の予感しかない。

私に心の平安プリーズ!






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