教育的指導ですって!
カナンに突っつかれている私を助けてくれたのは、町に買い出しに行っていたラベルだ。
「え?何で誰も助けてあげないんですか!」
唖然として、それからすぐに背負っていた荷物を放り出し、カナンを追い払ってくれた。
わーん。やっぱりワンコはどこの世でも忠犬だね。モッフモフー。
「ナツキ様が怪我でもされたら、どうするつもりですか!」
「いや、カナンは手加減していたし‥」
ヴァンがモゴモゴと言い訳する。
「騎士長がそんな態度では周囲に示しがつかないではありませんか!」
言ってやって。もっと、言ってやって!
最近、皆、巫女である私の扱いが雑だと思うな。私は親しく付き合いたいとは思っているけど、遊ばれたい訳ではない。
「お前の言い分はもっともだと思う」
上司として失格だと言われたにも等しいヴァンだが、それほど気にしていないようだ。
あれ?どうゆうこと?
「我々はヒルダ様からナツキ様を任せられた責任がある」
「だったら!」
「まあ、聞け」
血気盛んな部下を宥めるように、肩をポンポンと叩く。
「お前には言ってなかったが、神殿でヒルダ様から出発前に申し送りをされる際、一つ頼まれたことがある」
「‥?」
「ナツキ様の教育だ」
なんと!そんな極秘指令があったとは!
「ナツキ様は聖領において、弱者である母子家庭の現状改善や職業訓練所の開設などに尽力され、その功績は大きい。
ただ、ナツキ様は異世界からの転移者故にここでの常識に非常に疎いのも事実だ。最低限の振る舞いは身に付けておられるが、突拍子もない行動をよくとられる」
あ‥。耳が痛い。
「ヒルダ様はこのままでは全領主が集う、領主会議に出席させるのは危ういと考えられて、あえてこの時期に旅に出る許可を与えられたのだ」
なんだろう。この出来ない子扱いは‥。私ってそんなに駄目な子なの?
「そ、それが先程の行動とどう関係が?」
淡々としたヴァンに気圧されたのか、ラベルの耳が伏せられる。
そこへもってだめ押しとばかりに、巫女であるが故に私に妄信するラベルに言って聞かせるように、こう告げた。
「教育的指導だ」
ラベルと一緒に私もシッポがピーンとなっちゃったよ!いや、もちろん無いんだけどさ。
この年で教育的指導されちゃった!
一話が短かすぎるので、一日に二度小説をUPする日が割りと多いです。気が向いたら、その都度ご覧下さい。まとめて読んでも可。時間を決めて投稿していませんが、深夜零時過ぎることはないです。