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異世界でもふっと婚活  作者: NAGI
第一章 東領編
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東領の領主さま

結局、東領の領主館には私とアリーサ。それにセーランが向かうこととなった。残ったヴァン達には天幕(野外テントとは違う重厚な造りで快適だ)周りの整備と物資の補給をお願いした。

今回、会見する運びとなった東領の領主だが、妖精の宵祭りの最中、姿を見た感想はと言うと。

ズバリ、第一印象は出来る男。あのオーリさんを側近として侍らせているだけはある。為政者としてのオーラが半端ない。

さて、そんな領主の住む領主館に到着した。いかにも男らしい領主とはうって変わって、ヨーロッパ風のモダンな建物だ。白壁には蔓草が絡まり、なんとも風情がある。

私達が玄関で用向きを伝えると、応対に現れた執事さんが申し訳なさそうに当主の不在を告げた。

何でも政務が長引いて、帰宅が少々遅れているとのこと。中でお待ちいただきたいと平身低頭だ。

私達は特に予定もないので、快くそれに応じた。

案内された部屋はこれまた女性が喜びそうな、細やかなレースのカーテンやフカフカの花の図柄をモチーフとしたカーペットなど全体的に可愛らしい印象だった。

所在投げにソファに腰掛けて、待つことしばし。

部屋へと、数人の侍女が現れて手際よくお茶の支度をしていく。その後、一人を残して部屋から出ていった。

アリーサは私の隣、セーランは私の斜め後ろに待機だ。

「美人さんばっかりだね」

若くて綺麗な人ばかりだったから、ついつい口が滑った。

「もしかして、領主の好みで集めているのかな?」

独身だって言うし、お手つきの一人や二人いるのかもしれない。

そんな風にアリーサに耳打ちしたのが、聞こえたらしい。

「お館さまは、そのようなお方ではございません。当家の侍女は数々の審査を受け、見事合格した選りすぐりの者達ばかり、皆、きちんと分を弁えておりますわ!」

主を尊敬しているのだろう。そんな思いが伝わってくる。

私は自分が悪いと思ったので、すぐに謝罪した。

「ごめんなさい。口が過ぎたみたい」

ちょうどその時、扉が開かれて室内に入ってきたのは、東領の領主その人であった。

え?ノックとかしないの?

私が挨拶しようと立ち上がりかけたのを手のひらで押し留め、部屋にいた侍女に視線をくれた。

「今すぐ、ここから出て行け。客の許しも得ずに発言したばかりか、大声を出すとは何事だ。

この屋敷にお前のような輩は必要ない」

件の侍女は真っ青になりながら、無言で部屋を後にする。

「ちょっと待って。私が悪かったの。彼女を責めないであげて」

彼は私の方へ向き直ると、

「侍女の扱いは当家の問題です。口を挟まないでいただきたい」

きっぱりと私の意見を拒絶する。

「さりとて、先に非礼を働いたのは私ですから、善処いたしましょう」

予定より遅れたことを指しているのだろう。

それから徐に私の前に片膝を付くと、臣下の礼をとった。

「初めてお目にかかります。東領が領主、レキと申します。以後、お見知りおき下さい」

「神殿で巫女の位をいただいております、ナツキと申します。こちらこそ、よろしくね」

と、挨拶した。

アリーサから身分の上下について叩き込まれた私は、あまり丁寧な物言いにならないように注意する。

レキに立ち上がるよう促すと、彼は私の真正面に腰をおろした。座っていても威圧感が凄い。決して大柄な訳でもないのに、他者を威圧する、何だろう。

カリスマ?っぽいものにやられるのだろうか。

出ていった侍女さんに代わって、執事さんがやって来てお茶を入れ換えてくれた。なのに寛げないのは、同席する相手が相手だからだろうか。

「それで?巫女殿は何故、我が領にお出でになり、立ち入り禁止の妖精の森に居続けていらっしゃるのか?」

どストレートに聞くね?やっぱり、この人は油断がならない。

見た目は三十代前半だろうか(地球年齢で)、ややくせのある黒髪を肩口まで垂らした美丈夫だ。とくに印象に残るのは、強い意思が込められた黒い瞳だった。

「精霊の森に行ったのは成り行きです。オーリの、あなたの側近からそうするように勧められたからです」

「なるほど」

両手を顎の下で組み、こちらへとやや前傾姿勢をとった。

ちょっと、近いから!

「しばらくの間、逗留する許しを得たいのですけど‥」

「これは異なことをおっしゃっる。神殿の巫女姫のご意向を一領主が反対出来るとでも思うのですか?」

むむ。そう言われると困る。神殿は他領において基本不干渉であるが、権威は絶大だ。例えば、ヒルダさんがレキを領主不適格と断じれば、それは無視出来ない。

「私はお願いしているのですけど?」

精一杯、威厳のある風に答える。

「ハッ」

レキが一笑する。

「よろしいでしょう。好きなだけ、森へお留まりください」

「ありがとう、ごさいます」

何か嫌味だなー。やっぱり苦手、この手のなんつーの?自信家タイプって奴。

「ああ、そう言えば、当家のラベルを共に連れて来ておられるとか」

「え、ええ。今度一緒に連れて来ましょうか?」

「いえ、結構。あれには極力目立たぬようお伝え願いたい」

は?

「東領に火種は要らぬ。そう言えば、理解するでしょう」

自分の甥っ子に対して、それ?私は怒りで全身をわななかせる。












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