森で暮らそう
長い夢を見ていたような気分だ。
「あなたにも会ったね。地球を離れる最後の日、薔薇姫に一緒に行こうって必死に手を伸ばしていた」
《‥私の記憶ですから、私自身を見ることは出来ないのですよ。でも、そうでしたね。
私達は皆、彼女が大好きでともにいきたかった》
行きたかったのか、それとも生きたかったのか。どちらにしても同じだろう。
「悲しいね?」
妖精さんが微笑む。
《わたしは薔薇姫よりも長く生きてきて、皆からまとめ役として長老と呼ばれていますが、もう長くはありません》
妖精に厳密には死という概念はないが、終わりはある。
《こうして貴女に会えたのは、彼女からの贈り物に違いありません。どうか、私達を救って下さい》
そうきたか。いやまあ、当然だと思うが。私は彼らから大事な薔薇姫を奪った張本人の、遠い子孫だもの。
「すぐに答えをだせないと思うけど、それでもいい?」
《はい》
役に立つかどうかはこの際置いといて、私は自分に何が出来るのか考えてみたい。
「ごめん、みんな。私、しばらくここで暮らしみようと思う」
旅の仲間達にそう告げる。
「「「「「え?」」」」」
もー、全員で驚かないでよ。旅の目的が変わることなんて、よくあることじゃない?
「ありませんよ!あなただけです!」
アリーサに叱られた。けど、決心は変わらないからね!
話し合いの末、皆は私の提案に折れてくれて、しばらくの間ならと渋々認めてくれた。
そうなると、生活していく上での準備が必要だ。精霊の寝床は花びらの上や大樹の枝やウロなどで、食事は朝露や蜜といった超スローライフ。
私達、人間にはムリだ。そこで執事さんが頑張ってくれた。すいませんー。
先ずは天幕に生活用具。森のなかでは殺生は禁止だから、日保ちのする食材。飲み水は確保出来た。すぐ側に綺麗な湧水が湧いているからだ。
「キャンプみたいだねえ」
「キャンプ?」
ラベルが不思議そうに耳をふるると震わせた。癒される。
「こんな風に天幕を張って、野外で生活することよ。自然と触れあうとでも言うのかな?」
「ああ、騎士の野外訓練みたいなものですか」
いや。ちょっと違う。そんな殺伐としたものではないよ?もっと楽しいものだから。
「ーあぁ、そっか。キャンプは楽しいものだったんだよね」
急に黙りこんだ私をラベルが不思議そうに見る。
「?」
子供の頃の辛い記憶が甦る。友達に誘われて行ったキャンプの帰り、私は両親の訃報を知る。あの日以来、私はキャンプに行っていない。中学であった林間学校にはどうしても行けなかった。
それなのに今の私にそうした忌避感は一切ない。生まれなおしたからだろうか、それともー。
「ナツキ様、ご気分でもお悪いのですか?」
アリーサが心配そうにこちらを伺う。それ以外にもたくさんの人の視線が集まる。ラベルにヴァン、セーラン、それにトールも。それから、たくさんの妖精達。
私の周辺をチカチカと瞬きながら、
《大丈夫?大丈夫?》
と、心配してくれる。もふもふとは違う破壊力にメロメロだ。
「ううん!気持ちいい風だなーと思って」
そう言って、胸一杯に新鮮な空気を吸い込んだ。
婚活と言う目的からは遠のいてしまったけれど、いいよね。
私は、妖精の救済と言う新しい目的に向かって決意を新たにした。




