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異世界でもふっと婚活  作者: NAGI
第一章 東領編
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新しい仲間

予定より一日遅れではあるが、私達はムスカの町を出発した。

花竜を退治したことで、一躍人気者となったヴァンとセーラン目当ての女性陣による派手な歓声に見送られて。

そして、私達に新しい同行者が増えた。

「騎士様は凄い人気ですねぇ」

はふう。と、羨ましいような声を上げたのは、町長の孫の一人であるトールだ。

灰褐色の毛並みとお祖父さん譲りの垂れ耳が特徴的で、プクプクと丸っこい体格をしている。

「是非とも、孫を従者に!」と、半ば押しつけられるように旅の仲間となったのだが、どうしてどうして、凄く有能だった。

「あちらに群生している赤い花は、株ごとに雌株、雄株と分かれている、とても珍しい種類の花なのですよ」

と、東領における草木の知識は多種多様に渡る博識な所とか。

お昼休憩ではガサゴソと道から外れて、何をしているのかと思ったら、獲物を仕留めて来て、

「どうぞ、モグラ兎の団子スープです」

と、食事を提供してくる所とか。

差し出された器を受け取り、一口含んでみると、

「なにこれ!うっま!」

思わず口からもれた。マジで美味しかった。

けど、モグラ兎って。兎って名前が付いているけどいいの?

え?自分は獣人であって兎ではない。どちらかというと野菜や果物を好んで食べるが、肉や魚も食べる?

ふーん。そうなんだ。

旅の途中で困ったのが食事だ。町はともかく村に食堂などはなく、携帯食に頼ることもしばしば。

私も料理は作れるが、野営は無理だ。アリーサに至っては万事に有能なのだけど、料理だけは苦手らしい。

護衛の三人の猟師飯はワイルドすぎて、毎回はツラい。

「どんどん食べて下さいね。お代わりもありますよ!」

いい子やね〜ってシミジミしていたら、年上だった。しかも結構、いい年。

「僕は魔法研究が好きで高等院(大学に相当する)を卒業後、お祖父様の援助を受けて研究三昧の生活を送ってきましたが、こうして皆様のお役に経てることが出来て光栄です」

そういって鼻の周りをヒクヒクさせる。

おおぅ。親(祖父)のすねかじりだったよ。

「研究って何の研究をしていたの?」

よくぞ聞いてくれました!と、言わんばかりにトールの短いしっぽが上向く。

「僕の専門は土属性全般の魔法研究です!」

何ですか、それ?

「はい。僕の属性は土なのですが、主に魔草や魔樹。他にも土属性の魔獣を研究しています。

東領で一番有名な土属性の魔獣は花竜なのですが、他にもたくさんいるんですよ!」

モグラ兎もそうなのだと。なかでも珍しいのが地脈を渡る、潜蛇の存在なのだそうだ。

「これがですね。地震の原因なのではないかと昨今の研究者の間で言われてまして」

ほうほう。なるほどね、コアな研究だね!

「夢中になれることがあるのは良いことですね」

放っとけば延々聞かされそうで、適当にまとめた。

ただ、トールは良い旅の同行者であるのは間違いない。

もふもふだしね。

そして、この時、何かが私の心の中の琴線に触れた。

ただ、それを確実に声にするにはあまりにも頼り無く、心の深い内へと沈めた。

それを確かなものとして思い出すのは、もっとずっと後になってからのことだった。

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