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異世界でもふっと婚活  作者: NAGI
第一章 東領編
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花の都へ

車窓から外を眺めると、見たこともない景色が広がっていた。聖領から東へ向かう街道沿いを私達はのんびりと馬車で移動中だ。

巫女としてお披露目した結果、目がまわるくらい忙しくなった。連日、神殿へと謁見の申し込みがひきもきらず、会う会わないを決めるだけでも一苦労だ。

幼稚園と職業訓練所設立に関して寄付やら、人材を貸し出ししてもらった関係で全く無視する訳にもいかず、それなりの数をこなしていたが、とにかく次から次へと舞い込む謁見依頼や嘆願等の手紙に私は悲鳴をあげた。

はい、そうですよ。逃げました。それが何か?

もう嫌だ!誰にも会いたくないと駄々をこねる私にヒルダさんが、

「では、婚活の旅に行ってらっしゃいな」

と、おっとりと提案してきた。

はい?

「神殿はもちろんのこと聖領にいてはお客様は諦めないし、お断りするのも失礼にあたります。

だったらいっそ、聖領を出てみては?」

「それはそうなんだろうけど。婚活の旅って…」

「元々その予定だったのですよ?予定が早まっただけで、問題ありません」

年に一度の各領地から領主が集まる時期を、旅の予定にあてていたらしい。

領主は他領との均衡を考えると対象外だし、彼等の家臣を伴侶とするのも釣り合いがとれない。

そこで面倒な領主がいないのをこれ幸いと領主一族とお見合いを、ということらしい。

領主一族限定なの?例外なく?

「まさか!ただ、好ましいというだけです。

巫女の地位と釣り合うだけの地位や力量をお持ちであれば、誰であろうと構いません。

ただし、そのへんの農夫や雇われ店員などが相手でしたら、各領からの弾圧や妨害に対処出来ずに下手をしたら始末されてしまいますよ?」

おお。さらっと怖いことを言うね。

「それなりの地位ねえ…」

根っからの庶民派思考の私は、いわゆるお貴族サマとかが苦手だ。今は職業訓練所長となったセルマの指導でなんとか様にはなったものの、お付きのアリーサの所作にさえ太刀打ち出来ない。

「そうゆうのは苦手だなあ」

と、ため息をつく。

「重い職責にはそれなりに義務が生じるということですわ」

巫女として為すべきことをせよ、か。

「成果を期待しないでよね?」

「それなりの結果は持ち帰って下さいね」

にっこりと笑って釘を刺される。

無駄に費用だけ使って旅行だけ楽しむなって?

ヒルダさんはおっとりしてそうで、その点シビアなんだから。

「が、頑張ります」

そうして私とアリーサ。ヴァン、ラベル、セーランの三人を護衛に私は東の地を目指すこととなった。

何故、東領かと言うとラベルが、

「それなら東領はいかがですか?もうすぐ、三年に一度行われる華やかなお祭りがあって、ナツキ様に是非ご覧になっていただきたいです!」

と熱烈なアピールの上、誘われたからだ。

私とアリーサ、ラベルが乗っているのは三頭だての馬車だ。

ヴァンが御者席で、セーランが、単騎で後方から馬車の警護にあたっている。

私達が乗っているのは、ただの馬車ではない。風属性を持つ馬に似た騎獣が引いている。

馬車には四つの車輪があってコロコロと回っているが、実際に地面を走っているのではない。

風属性の魔法で馬車ごと地面すれすれのところを飛んでおり、山道などの悪路の弊害は一切なく、至極快適な旅だった。

「はあ…。それにしても綺麗な景色ねえ」

聖領を抜け、東領に入ってしばらくすると、たくさんの花が道なりに咲いている。

色鮮やかなグラデーションが自然と融け合うように彩られ、さながらキャンバスの中のような光景だ。

「東領は別名、花の都ですから」

ラベルが自分のことのように胸を張って答える。

自慢そうに耳やしっぽか揺れているのが、ご愛敬だ。

「そうなのですってね」

レーヴェナータを母に持つ各領の初代領主達は、母親の負担をそれはもう、よく理解していた。

それ故、母親の心の負担を取り除こうと領地ごとの特性を生かした領地作りに勤しみ、実現させた。

その一つが東領の『花の都』だ。季節の花を領内中に咲き誇るように整備し、領民はもちろん、他領から訪れる観光客を楽しませる観光をメインとした領地なのだ。

「ピイエェー!」

上空を飛ぶカナンが注意を促すように鳴いた。

おそらく町が近いのだろう。小さな村はいくつか通り過ぎたが、私達が泊まれるような宿泊先はある程度大きくないと。

本来、カナンはお留守番のはずだった。それを嫌がり、ヴァンでさえ呆れるほどの抵抗をみせた。

たまたま、困っていると聞いた私が現場に行くと、それはもう盛大なすねっぷりであった。

「ピィエエエエー!」

大きな羽をばたつかせて、埃が舞い踊る。近くにいる騎獣が迷惑そうに鼻をしかめていた。

「いい加減にしろ!」

「ピエエ!ピエッ!ピエッ!」

地団駄を踏む。

「終いには俺も怒るぞ」

主人の本気を感じとったのか、カナンが鳥にあるまじき涙目となった。

「ちょっと待って!」

私は慌てて間に入る。

「ナツキ様がこのようなところに!」

そこは多くの騎獣達が暮らす獣舎だ。

「あー。いいから、いいから」

獣舎内は清潔に保つよう手入れはキチンとされていても、どうしても獣臭くなる。

ヴァンは巫女の私を気遣って、そう言ったのだろうが、私は頻繁にお邪魔しているのだ。

だってかわいいから。かわいいは無敵だよ?

他の子達は、いつもお土産を持って来てくれる私に慣れたもので尻尾を振っているが、カナンだけはいつまでもたっても私を敵対視して、懐いてはくれなかった。

「一緒に行きたいんでしょ?連れて行ってあげればいいじゃない」

「此度は馬車を使っての旅ですから、カナンは必要ないのです」

必要ないと言われたカナンの顔(?)ったらなかった。

私は懸命に笑いを噛み殺す。

「上空から偵察するものがいたら、遠くの敵とかに事前に対応出来るでしょう?連れていってあげようよ」

旅の中心である私が言うのだ。ヴァンは不承不承頷いた。

それを恩に感じているのか、カナンの私への対応が以前よりも柔らかくなった。

「そのようです。前方に城壁が見えます。辺境のムスカの町でしょう」

ラベルが示す先に城壁があった。今日はここでお泊まりだ。

は〜、疲れた。

体は若返っても、精神上ババアの私には長旅はツラい。

はやく寝っ転がってフカフカのお布団で眠りたい。

けど、その前に東領のもふもふ具合を堪能しないとね!


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