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異世界でもふっと婚活  作者: NAGI
第四章 北領編
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モフモフ仲間?

 ヴァン達と合流を果たし、新しく誕生した妖精トリオも一緒に、私はヒルダさんの待つ聖領に帰ることにした。ヴァン達、三人にはとんぼ返りさせることになってしまうのだが、我慢してもらおう。私の心の、わだかまっていたモヤモヤがすべてスッキリし、一刻も早く帰りたくなったからだ。

一応、皆は残ってもいいよ?と提案してみたが、ヴァンらが頷くはずもなく、私達は、妖精の森を後にした。


《また来てね~!》

たくさんの妖精達の声に見送られて、私達は帰路に立った。やはり、ここに来て良かったと思う。心が洗われる気がする。

もはや妖精の森は、レーヴェンハルトにおける私の第二の故郷だね。セイラの故郷でもあることだし、東領の領主一族には、これからも大切に守っていって欲しい。


 ところで、行きはセイラの転移魔法にお世話になったのだけれど、帰りはヴァン達三人の騎獣にかわるばんこに乗る予定だ。

やはり、魂の伴侶とは言え、自分以外と転移するのは大変なのだそうだ。ついて早々、シズクからお説教をくらったことで精神的にもダメージを受けたようで、セイラは私の鞄に潜り込んで眠りこけている。呑気か。


妖精トリオは各々、好きな騎獣に乗って、空の旅を満喫中。

「あ、こら!チョロチョロするんじゃない!」

ラベルのヒッポグリフの頭頂に掴まって、迷惑がられているのはルシェルだね。サシェルは、無口なセーランと妙に波長が合うらしい。で、ミシェルはセイラと一緒に私の鞄の中でお眠だ。


「ねえ、ヴァン。今日中には着くかな?」

私は、私の背中を支えるようにして騎獣を操るヴァンへと呼び掛けた。

本当なら、切り裂くような風圧でおしゃべりどころじゃないのだろうが、鷹の騎獣であるカナンの風魔法ですこぶる快適だ。相変わらず、私への当たりが強いのだけれど、渋々、乗せてくれる。後で貢ぎ物を要求されるのは、ご愛敬である。

「さすがにそれはちょっと…。夜通し、飛ばすなら可能でしょうが」

「あー、だよねえ」

「急がせましょうか?」

「ううん、いいよ。本当なら、数日、東領に滞在する予定だったし。今日、帰るのは私のワガママだもの」

それにこんな風にのんびりと、ヴァンと二人で過ごせるのも久しぶりだし。


「いい加減にしろ!飛行の邪魔だ!」

ルシェルの妖精らしい好奇心に満ちた奔放ぶりに、遂にラベルが切れた。

《やだ!もっと遊びたい!》

怒ったラベルの手に襟首を掴み上げられ、ぶらぶらと揺れているルシェルが抗議する。


いや、二人ではなかったね。騒がしいオマケつきだ。

「ルシェルー。あんまり自分勝手にやりたい放題だと妖精の森に帰らせるよ?」

《やだ!帰らない!》

「だったら、ラベルの言うことを聞いて大人しくしていなさい。あなたは契約者として同行しているのではなくて、聖領には勉強のために同行することを許されているんだからね?」

私はカナンの上から、やや右後方を飛んでいるヒッポグリフに騎乗する二人の方を振り向いて、そう注意する。

《はあーい》

明らかに不承不承な表情で返事をするルシェルに、

「それからラベルとヒッポグリフに謝りなさい。好意で、あなたを乗せてくれているのよ?」

まあ、好意でと言うのは若干差異がある。初めて目にしたヒッポグリフに感動したルシェルが、無理矢理、同乗したに過ぎない。


《ごめんなさい》

「分かってくれたのなら、いいんだ」

「ブフッ」

殊勝に謝るルシェルは、ラベルとヒッポグリフのグリちゃんから許しを得たようだ。

基本、二人とも優しいからねー。良かった、良かった。

「あ、こら!動きまわるな!」

「しっぽに掴まるんじゃない!」

ただし、好奇心の塊であるルシェルは、その後も次々と面倒を起こしていたが…。ラベル、頑張れ!


 ラベルと親しい町長さん家族が暮らす、ムスカの街で一泊した後(相変わらずモフモフなウサギ家族から、盛大なおもてなしを受けた。あー。やっぱり、モフモフは癒されるわぁ)、東領と聖領との境を超えると、途端、ヒルダさんの柔らかな気配に包まれるのを感じる。

レーヴェンハルト全体を守護するヒルダさんだけど、聖領はそれと別にヒルダさんの強力な結界に包まれ、二重に守護されている。

だからこそ、旅から帰ってくると、その度に「ああ、我が家に帰ってきた」のだなと感じられるのだ。


 季節は夏の終わりを告げ、秋の訪れを迎えようとしていた。秋らしい色合いに染まりつつある山々や畑が眼下に広がっいる。この道なりに飛んで行けば、聖領の神殿のある山の麓の街へと続いている。まだ目視することは出来ないが、街道は神殿まで一直線だ。

「さあ、ここまで出来たら、もうすぐね!神殿まで休みなくいくわよ!」

私は、私の乗る騎獣を真ん中にして左右を守るようにして飛ぶ二人を見回し、そう告げる。

「了解しました」

「はい!」

「…」

三人の守護騎士から返った反応は様々だ。

私はこの時、セーランと同乗していたので、サシェルが主な話し相手だった。

だってねえ。セーランってば、無口なんだもの。話しかければ、きちんと答えは返ってくるけれど、話し相手には物足りない。


《ナツキ様、神殿まで近いのてすか?》

「ううん。近くはないわね。でも、騎獣ならすぐよ?」

サシェルは驚いたように目を見開いた。

《森にも騎獣はたくさんいますけど、この子達はとっても早いですね》

サシェルが見つめる先には大きな二本の角が見える。大きな角が特徴的なカモシカ型の騎獣である。騎士達は何度か色々な騎獣に乗って試してから、相性のいい相手を選ぶと、パートナーとなる。セーランは翼人なので自分で空を飛ぶことも可能だが、長距離はきついのだそうだ。

この子、カモシカ型の騎獣は、野生のカモシカよりも一回りほど大きく、馬力があって逞しい。騎獣なので飛行出来るが、脚力にも優れており、地上はもちろんのこと山間部などの悪路も縦横無尽に駆け巡る。


《大きくて、フワフワですね》

サシェルが、嬉しそうに見ている。

お?もしかして、サシェルもモフモフ仲間なのかな?

「そうだよね?モフモフは正義だよね~」

《モフモフ?》

コテリと首を傾げる。

「モフモフとは、あったかくてフワフワしてて、こう、ぎゅうって抱き締めたくなる感じ?」

《あ!分かります!私もプヨプヨしたお腹を、こうツンツンってつつきたくなります!》

赤ちゃんのポッコリお腹とか、プヨプヨした二の腕とか、あれはあれでいいよねえ。

「あー、なるね?あれも一種のモフモフだねえ~」

私は、意外な所で見つかったモフモフ仲間に様々なモフモフについて見解を述べる。


そんな私達の会話を聞いたセーランが、理解出来ないと目をすぽめていることに私はついぞ気付くことはなかった。

途中、私がラベルの騎獣へと移動した際、セーランが明らかにぐったりしているのを見て、セーランてば、疲れているのかな?ごめんねと、心中、謝ったのだが、セーランは精神的に疲れを覚えていた。ただ、それが私のモフモフ談議のせいなのだとは、やっぱり、気付くことはなかったのであった。











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