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異世界でもふっと婚活  作者: NAGI
第四章 北領編
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新米妖精の決意

 シズクに連れ去られたセイラは放っておくとして、私は今回の旅の目的と言うか、お目当ての新しい妖精さん達にご挨拶することにした。


「こんにちは!あなた達が生まれたばかりの子達?」

『は、はい。はじめまして』

『はじめまして!』

『‥まして』

三人の妖精が仲間達に押されるようにして、私の目前にフワフワと浮かんで挨拶を返してくれた。

三人三様、反応は様々。真面目そうな子。元気な子と、引っ込み思案な子と。

「私はナツキって言うの。あなた達の薔薇姫、セアラの魂の伴侶よ。よろしくね」

『『『はい』』』


いやー。かわゆいなー。妖精達に赤ちゃんはいない。みんな、大人の姿で生まれてくる。

だけど、人の印象って経験値でも左右されるよね?姿は皆と変わらなくても、なんとなく幼さを感じるのよ。


『あの‥。ナツキ、様は、聖領って所にお住まいだと聞いています。もし、よかったら、そこがどんな所か教えてくれますか?』

真面目そうな子。金色の髪と瞳を持つ女の子が、おずおずと尋ねてきた。

「ん?セイラから聞いたことがないの?」

いや、待てよ。セイラは、ああいう感じだから、聖領じゃ、皆とフレンドリーな関係を築いているけど、ここは妖精の森。セイラは薔薇姫、妖精達の女王なのだ。

気軽にきけないのかな?うん。

『薔薇姫様のおっしゃることは少し‥、ええと。よく分からなくて』


よくよく聞いてみると、大きな白い建物がドーンと建っていて、大勢の騎士でいっぱいだとか。アウルムって言う猫の舎弟?がいるとか。

いや、合っているけど。彼らが聞きたいのはそんなことじゃなくてね‥。我が魂の伴侶の、魂の幼さに脱力してしまう。

経験値は、いずこ~?


 まあ、それはそれとして。妖精の子が何故、聖領について知りたいのかが分かった。

新しく誕生した妖精は、しばらくの間、妖精の森で基本的な事柄を先輩達から学ぶ。その後、各地を放浪し、様々な経験値を積むのが習わしなのだそうだ。

たいていは、妖精の森のある東領のなかをフラフラと見て回ることが多いらしいのだが、なかには他領まで足を運ぶ(跳んで行く)アグレッシブなタイプもいるとのこと。


『はあ~。素敵な所なんですねぇ。聖領って‥』

うっとりと祈りを捧げるように、両手を組んで瞳をうるうるさせる真面目っ子ちゃん。

『かっけーな!騎獣って!オレ、見てみたい!』

元気っ子は、騎獣と騎士に憧れ?を抱いた様子。

『神殿…、見たい』

はにかみっ子は、神殿に興味津々みたい。


 私が、山の頂上に、この世界の平穏のために祈りを捧げている神殿長が住まう神殿があり、そこを中心として街が放射線状に広がっていること。街の移動には動く道があって便利であること。

また、様々な種類の騎獣に乗った神殿騎士が聖領の治安を護り、大地の恵み豊かな地で人々が安心して暮らしていることなどを細やかに語ってみせたところ、新米妖精さん達の心を鷲掴みにしたらしい。


『わ、私!聖領に行ってみたいです!』

真面目っ子が勇気を振り絞るように、そう宣言したら、後の二人もそれに追随するように、

『オレも行くぜ!』

『…以下同文、です』

と、共に行くことを望んだ。

すると、周りの妖精達がワッと歓声を上げた。


『いいね!行ってきなよ!』

『わー。三人とも、頑張るのですぅ』

口々に激励や応援の言葉を口にしながら、周囲を激しく跳び周り始めた。


「え?え?どうしたのですか?」

「うわっ!」

妖精が光の玉としてしか見えない同行者の二人が、訳も分からずに驚愕していた。

まあ、そうだよねー。ただの光がビュンビュンと飛び交っていたら驚くよね?

そんな妖精達の熱狂ぶりは、太陽が沈むまで続いた…。


いや、マジで。勘弁して欲しい。日が暮れる前に領主館に戻るはずが、何故か、一泊することになるとは。


 アニスが魔法で、妖精の森にお泊まりすることを領主館へと伝えてくれたので、私はお泊まりの準備をする。とはいえ、急な予定変更で何の準備もしていない。

まあ、携帯食やお着替えくらいは常備しているので問題ない。

ついでに、妖精達が気を利かせてくれて、木の実や果物といった森の恵みをたくさん集めてくれたのでお腹も膨れた。騎士として大柄な二人は、ちょっと物足りなさそうだったが、まあ、一日くらいのことだ。我慢してもらおう。


 それにしても、気分転換を兼ねて遊びに来たはずが、何だか、おおげさなことになってしまった。

新米妖精三人の武者修行?として、何と聖領が選ばれてしまったのだ。

遠い昔、そんなことはよくあることだったらしいのだが、薔薇姫不在のため、妖精が生まれなくなってしまい、絶滅?の危機に瀕してからは、とにかく安全第一で他領に行くなんて冒険をする者はいなくなった。

それが今回、三人も冒険に出ようと言うのだから、妖精達の熱狂ぶりも、さにあらん。


 就寝前、ようやくシズクに解放されたセイラがしおたれた姿で戻ってきた。

え?今まで、お説教されてたの?

うーわ、ご苦労様。シズクって、スパルタなのね。見かけは綺麗でたおやかな、お姉さまタイプなんだけどね。

そんなシズクは、オーリさんへ報告するために領主館に戻って行ったらしい。

何せ、東領では神秘の存在として崇められている妖精が、妖精の森どころか東領を出ると言うのだ。

領主館ではさぞや騒ぎとなっているだろう。ごめんね、レキ。頑張れ!


「あー、でも。名前がないと不便よねえ」

私は、下草の上に敷いた敷布の上で顎に手を当て考え込む。私がいるのは、大樹のすぐ側、最も安心な場所だ。

アニスとスクアーロの二人は、交代で夜警にあたるとのこと。私から少し離れた所で一人は先に就寝。一人は周囲への警護にあたっている。


「番号呼びは…、いや囚人じゃあるまいし。色呼びは、アオに何となく悪いしなあ」

契約していないにも関わらず、過去にアオと名付けた妖精がいた私は、それは却下した。

彼の存在は、本当にイレギュラーであって、人が妖精に名前を付けるのは、本来、とても神聖な行為なのだ。前科持ち?ではあるが、さすがに何度もはね。


『ん~。何、おかしなことを言ってるの?薔薇姫の魂の伴侶は特別だって言ったでしょ?』

するとセイラは当たり前だと言う顔で、私に言った。

『仮名なら、いくらでもつけられるわよ?』

いや、聞いてないですよ?

仮名とは、読んで字のごとく、仮の名前のことらしい。私が名付けたところで、契約者が現れれば、名前は更新され、契約者の呼ぶ名が真の名となる…。


「それ、すっごく大事なことだから!」

『ええ~?眠い….』

はい、お休み三秒!子供か!

一人で突っ込むのは寂しい。アリーサが恋しいな。


とにかく、周囲のお休みモード全開の妖精達にかこまれ、私も眠りにつくのであった。






すいません!前回から、1ヶ月以上も経過してしまいました!暑さにやられ、休みの日はゴロゴロしてしまい、気付いたらこんなに日にちが…。

見れば、ブクマ登録も徐々に減ってましたね。自業自得ですけど。

なるべくコンスタントに更新するように、心がけます。今後とも、よろしくお願いします。

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