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異世界でもふっと婚活  作者: NAGI
第四章 北領編
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不穏な?再会

こうして私は、東領へと旅立ったのであった。皆には置き手紙を一つだけ残して…。


だ、だってさ!仕方のないことだったんだよ?セイラの転移魔法は本人及び契約主限定。つまり、私しか一緒に転移出来ない。前回のようにヴァンら守護騎士やお付きのアリーサを連れて行くとなると日数がかかりすぎる。今回は、あくまでもお忍び旅。ふらっと行って帰ってくる予定。日帰りとは言わないが、そんな感じの旅なのだ。


「ヒルダさんに黙って出て来ちゃって、悪かったかな…」

セイラ一人なら一度の転移で東領まで行けるのだが、私と言うお荷物(重くないよね!?)が付いていると、数回に分けて転移することになるらしい。


『もー!あたしのせいじゃないし!ナツキが重いからだし!』

妖精の女王としての矜持が許さないのか、そんなことを言ってきた。

「違いますう。セイラがお子さまなだけですう」

私はわざと口を尖らせて、揶揄するように言った。

『セイラ、お子さまじゃないもん!』

背中の羽根を逆立てて?、セイラが抗議するのをあえてスルーする。


あー、いい天気だなあ。午前中の日差しは穏やかで、野に吹く風はそよそよと心地好い。ここは東領と聖領の境目付近にある野っぱらである。ヒルダさんの結界に護られた聖領内なので、凶悪な魔獣出現の心配もない。

角兎など小物魔獣は範疇外らしく、草むらの間からウサギの耳と角がひょっこりと覗くのだが、そこはちょちょいと退治ならぬ、駆除していく。

私だってこの世界に来てから数年経つのだ。自分の身を守る術くらい習得しているのだ。


『ねえねえ。その棒っきれ、凄い威力ね』

セイラが私の頭の上で寝そべり、足をパタパタさせる。

ちょっと、そこは君の定位置ではないはずだよね?微妙にイラッとしつつ、私は言葉を返した。

「棒っきれとは失礼な!これは画期的な魔獣撃退の出来る魔道具なのよ!」

私が北領であれやこれやと頑張っている間に、聖領では非戦闘員用に魔道具が一つ完成していた。


これはあれだねー。私が以前、話したことのある一代ブームを巻き起こした魔法使いが出てくる小説で、主人公が使っていた魔法の杖をパクったものだろうね。

『ふうん?便利なものが出来たのねえ』

「そうだよ。ふふふん」

私は、鼻高々に自慢する。何故なら、制作者は私が投資している職業訓練所の訓練生達だからである。


職業訓練所には一般部門の他に専門部門があり、魔道具作成は専門部門に通う生徒によって開発された。

どうやら、講師の一人であるトールの口から伝わった魔法の杖をヒントに制作がなされたらしい。トール自身も魔獣などの研究が主で、魔獣退治は専門外である。

そこで戦う術を持たない一般人向けに、剣や弓以外に何かないかと討論を重ねた結果、この魔法の杖が作成されたようだ。

動力源は魔獣のくず魔石で使用回数は十回程度。魔石を交換すれば、無限に使えるという優れもの。魔石の種類によって電撃に似た攻撃や炎や風、様々な威力が発揮出来る。

ただし、雑魚魔獣限定。倒すのではなく、威嚇や牽制目的である。さすがに倒すことは出来ない。


《ヂヂ!》

私が向けた杖の先から放たれた雷撃に似た攻撃に当たった角兎が悲鳴を上げ、逃げ去って行く。

おお、面白いように当たるな。さほど狙いを定めずとも魔獣を感知して攻撃するので、誤って人に向けても大丈夫。

『そんのなくたって、セイラがやっつけてやるのに!』

はいはい。

『むうっ!無視しないで!』

頭をポカスカ殴るのは止めて。痒いから。

「強い魔獣が来たら、任せるよ〜」

『うん!』

いや、まあ。本当に強いのが来たら転移で逃げるから、任せるってのは間違いじゃないよね?

まだ幼いとは言え、妖精の女王《薔薇姫》様である。魔力は桁違いである。ただし、加減が出来ない。もしも、セイラが本気になれば、辺り一面、焼け野原となるのは間違いない。

そんな自然破壊させられない。


「うーん。十分に休めたし、そろそろ行こっか」

背伸びしてから、セイラにそう告げる。

『りょーかい!』


そして、次の転移で私達は妖精の森のど真ん中にある大樹の前に到着した。ただし、そこには愛らしい妖精達の姿はなく、ズラリと物々しい感じで騎士達が並んで待ち構えていた。


え、え〜。何事?

私が騎士とおぼしき面々に若干引いていると、すっと騎士達の壁が割れ、一人の人物が進み出てきた。

「ひいっ!」

「言うに事欠いて、何がひいっだ!それはこちらの台詞だ!ヒルダ様から緊急連絡が来て、お前を確保するように命じられた俺のな!」

現れたのは、東領の領主であるレキだ。元々の強面が怒りのせいか、さらに恐く見える。


緊急連絡…。あ〜、あれね。神殿と領主間で交わすことの出来る通達用の魔道具のことだね。

「言い分があるなら聞いてやる。とにかく、とっとと領主館に戻るぞ」

イライラと吐き捨てるように言うと、さっと身を翻した。それに騎士達が呼応する。


えーと。私が用があるのは妖精の森のなかなのだけれど…。

困惑する私の前にもう一人、よく知った人影が立った。

「ナツキ様、お久しぶりでございます。色々と思うこともございましょうが、一先ず、領主館にお出でいただけますでしょうか?」

穏やかな物腰と態度でそう言うのは、ウサ(兎獣人)イケメンであるオーリさんであった。ピンと立ったウサギの耳が、まるで謝罪するかのように前方に折られた。


うーん。相変わらずのウサイケメンぶりに私の心はあっさりと折れた。

「それじゃあ。ちょっとだけ、お邪魔します」

こうして、初っぱなから私の極秘旅行は極秘ではなくなった。

何だか、これ以上、大袈裟にならなけりゃいいけど…。私の悪い予感は当たるのだ。いいことは当たらないけれど。はあっ。












まさかの連続投稿です。読んで下さる読者様のお陰です。ありがとうございます!

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