モフモフだらけ
最近、アリーサが私に遠慮がない。堅苦しいのは嫌だから、フレンドリーに接して欲しいと言ったのは私だけど、もう少し優しくして欲しい。
私の人生はある意味波乱万丈だったけれど、まさか異世界に転移するなんて思ってもみなかった。
元の世界に返してくれとは言わないが、この世界において初心者だということを忘れないで!
通りを歩いていた猫系獣人のもふもふ感に気をとられ、柱にぶつかりそうになったとしても、はたまた兎系獣人の耳ピーンに我を忘れて許可も取らずに触りそうになって、不審者扱いされたとしても大目に見るだけの優しさが欲しい。
「真面目にやって下さい!」
怒られた‥。そりゃそうだよね!
「護衛についてくれた騎士様方に笑われてしまいますよ」
私達を先導して歩く、ラベルの犬耳がピクッと反応する。
はわわ、ラブリ〜。
そんな彼の後ろを私とアリーサ。数歩離れてヴァンとセーランが周囲を警戒しつつ、歩を進めている。
先の約束通り、神殿の外に出ることとなった本日、三人に護衛についてもらったのだ。
さすがに私も不真面目だったと思って、
「はしゃいでしまってごめんなさい。あと、急に護衛を頼んでしまって迷惑だった?」
と、ヴァンに話しかけた。
「いえ。普段、我々が行うのは神殿の周囲の警戒と訓練が主ですから、特に問題はありません」
全く、問題ないらしい。そうなの?
神殿の騎士とはその名の通り、神殿の警護が主たる任務だ。
だが、神殿の周辺警備もさることながら神殿を有する敷地内がとにかくだだっぴろい。
常に上空からの警戒も怠らない。そのための騎獣なのだ。
「カナンが置いてきぼりを食って、凄く怒ってたね?」
「あいつは…」
ヴァンが困ったように苦笑する。カナンとは、ヴァンの騎獣する大鷹の名前だ。
ちなみに女の子。そのせいか、私をはじめとする全ての女子を敵視している主大好きっ子(鷹)なのだ。
「あなたのことが大好きなのね」
「卵から育てているので、他の騎獣とは確かに結び付きが強いでしょうね」
騎士の騎獣は、調教済みの成体を支給される場当とヴァンのように自分が卵から育てた場合の二通りがあるらしい。
騎獣は育てることが大変らしく、専門家に任せる者が大半だが、希にヴァンのような変わり者がいるとのこと。
「卵からかあ。雛の時分はかわいかっただろうね」
今はまあ、アレだけど。
騎獣は賢く魔法も使えるから、普通の犬や猫と飼い主みたいな関係とは違うかも知れないけれど、それに似た、いや、それ以上の結び付きがあるのかもしれない。
私は思ったことをそのまま言ったのだけれど、ヴァンにしてみれば、意外だったらしい。
嬉しそうに目を細める。狼の顔だから表情に乏しいけれど、ヴァンの目は表情豊かだね。
まじまじと見ていたら、照れてしまったらしい。
けど、見ないで下さいって何よ。
デカくて、いかつい外見の割に、もふかわいいね!