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異世界でもふっと婚活  作者: NAGI
第一章 東領編
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養護院にて

神殿に付属する施設の一つに養護院がある。神官見習いやその卵達、彼女ら以外にも何らかの理由で(二親ともに亡くなったとか、育てることが出来ずに捨てられてしまったとか)親を失った子供達がそこで寝食をともにしている。

神殿の領地である聖領の住人の子供達が主であるが、他領の子供も少なからずいる。神殿は慈悲深く、神聖視されてる故だろう。

「あーもう。モッフモフー。かわいい〜」

私のテンションは上がりっぱなしである。赤ちゃん特有の丸っこい、ぷくぷくした体型の獣人の子供達がそこらじゅうにいる。

「う?」

つぶらな瞳で指をしゃぶっている熊系獣人の赤ちゃん!まさにテディベア!

「はああ〜」

初めて見るテンション高めの女子(中身はオバサン)に赤ちゃんが怯えたように大声で泣き始めた。

「ふぎゃー!」

凄い音量。さすがワイルドベアな赤ちゃん。

「ほら、泣かないの。男の子でしょう?」

慣れた手つきで赤ちゃんを抱き上げるのは、神官見習いのフィオナ。彼女が抱っこして揺すりあげると途端に大人しくなった。涙目で指しゃぶりを始める。

「あのう、ごめんね?泣かせるつもりはなかったの」

私がそう言って謝ると彼女はなんでもないような顔をして、

「ああ、はい。大丈夫ですよ。この子は最近ここに来た子でまだ慣れてないんです。他の子は好奇心が旺盛だから、泣いたりしませんよ」

と、逆に教えてくれた。

そっか。来たばかりか。じゃあ、心細いし、打ち解けるには時間がかかるよね。私は元の世界で養護施設に預けられたばかりの頃を思い出す。あの頃は自分の殻に閉じこもって、周囲と話どころか目を合わすことさえしなかった。

「そっか。ごめんね?」

熊系獣人の赤ちゃんと視線を合わせるように背を屈め、微笑む。この子の悲しみが少しでも早く薄まるようにと願いをこめて。

赤ちゃんが不思議そうに私を見返した。

「フィオナはあやすのが上手になりましたね」

アリーサに褒められるとフィオナが照れたように顔を赤く染めた。フィオナにとってアリーサは憧れの姉のような存在らしく、私とともに養護院に訪れたアリーサを見て、すごく喜んでいた。

あれ?私って巫女として崇拝対象じゃないの?いや、いいんだけどね。

「小さい子の面倒を見ることは、神官見習いの大切なお役目ですよ。なお一層励むように」

「はいっ!」

うーん。フィオナもかわいいね。見た感じ、十歳くらい。レーヴェンハルト年齢でいったら、もっと上だろうけど。

「アリーサ姉様」

「姉様、お帰りなさいませ」

わらわらと小さな女の子達が集まって、アリーサの周辺にまとわりつく。

おお。アリーサ、大人気。いつもの能面のような顔ではない、柔らかい表情を見せている。

それも束の間ですぐに、

「皆、巫女様の御前ですよ。まず最初にご挨拶なさい」

と、いつものキリッとした顔に戻ってしまった。つまらん。

女の子達が私の前に綺麗に並んで、神官式の挨拶を述べる。

うんうん、みんな上手に言えたね。なんて言うか、オバサンが小学校の児童の発表会を見守る目線だ。

「初めまして。ナツキと言います。みんな、よろしくね」

「こちらこそ、どうぞよろしくお願いいたします」

うーん、声が揃って素晴らしい。伸び伸びとした教育が行き届いているのが、ひしひしと感じられる。

「ここは獣人の子供達が多いですね」

神官見習いの女の子達を除いてだが、ほぼ七割方が獣人の子供達だ。なんとなく呟いただけなのだが、フィオナが困ったように視線を反らせる。

ん?何かまずかった?

「獣人の子供は、他所から流れてきた親が無責任にも神殿に捨てていったり、寡婦となった母親が育てられずに置いていったり、親のない子供ばかりではないという事情があるのです」

アリーサがそっと小声で耳打ちする。

な、何ですって!許せない!


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