湖水竜の友となった冒険者
ミグ姉さんと双子と一緒にまったりと過ごしたあと、私達は聖領の水源である湖が実際にどんなものかと見に行くこととなった。
人選を任せたら、私を乗せて飛ぶのはラベルの騎獣であるヒッポグリフのグリちゃんとなった。
ラベル曰く、「いつもヴァン騎士長とばかり、ずるいです!」とのこと。
いや、別にヴァンと相乗りするのが当然と言う訳ではなく、ヴァンは私の一の騎士であり、カナンの機動力を高く評価していると言うだけのことだ。
ただの見学なら、どの子に乗っても構わないんだけど?
「グリは速いし、我慢強い騎獣ですよ!」
と、猛アピールされたのでグリちゃんで向かうことにした。
「寒くないですか?」
風魔法で風の流れを遮断しているのはラベルだ。
「平気。ありがとう」
私も魔法の勉強を続けているのだけど、向き不向きが激しいらしく、騎獣に乗る際にかける簡単な魔法でも維持することがイマイチ怪しいのだ。そこでラベルにまとめて二人分をかけてもらっているのだ。
決して使えない訳ではないが、精神力を消耗する。明日は洞窟に潜るので出来るだけ無理はしない方向である。
「ごめんね。風魔法はどうにも相性が悪くって」
「気にしないで、いいですよ。俺は風属性だから、この程度のこと何でもないし」
背中越しに声が低く響いた。
ラベルってば、変声期はとうに過ぎたはずなのに大人っぽい声になった気がする。
性格がワンコなのは相変わらずなのだけど、昨年、一緒に経験した東領での出来事が彼を精神的に大人にしたのかも知れない。
それに少し、筋肉の付き具合が以前と違う気がする。
「ラベル、体つきががっしりした気がする。鍛練しているの?」
え?気が付きました?って顔をする。
実際には空中を駆けているので振り向けないのだが、そんな気配がする。
ついでにしっぽがワッサワッサと振られているのが音で分かる。
ふむ。やっぱり、まだお子様だね。
「ふおお、早いね~」
「ね~。綺麗ね~」
横を双子が鹿型騎獣に乗って飛んでいる。
何故だか、すっかり懐かれてしまった。それにグリちゃん(ヒッポグリフ)を見たのが初めてらしく、翼のあるお馬さんだ〜と、大層お気に入りだ。
別に一緒に来る必要もないのに同行している。
「あんまり身を乗り出すと危ないですよ〜」
呑気に注意するのはトールだ。あくまで後方支援で来ているトール夫夫(言いづらいんだけど、仕方ない。男同士だから)も暇なのでと一緒に付いて来ている。
「そうだぞ。グリの翼に巻き込まれたら大変だぞ」
ラベルも同様に注意を促すが、双子は意に介さない。
「平気だよ〜」
「ね〜。ちゃんと見て飛んでるもん〜」
マイペースな双子に大人達はタジタジだ。しっかりしろ!
「お前ら、大人の言うことはちゃんと聞けよー」
何故か、クレイさんもこの場にいた。
あの、冒険者ギルドの責任者ですよね?残って色々と神殿の騎士と段取りとか話し合いとかあるんじゃないの?
「あ〜、そう言うのはダルボやエリーに任せてあるからいいんだ。俺はただの飾りよ。楽しけりゃいーの」
駄目な大人だ。駄目な大人の見本がここにいるぞ。
そんないい加減な所が聖領で認められないじゃないかな?と、率直に意見を言ってみる。
「マジか…」
駄目な大人が絶句していた。
そこは東領の湖水地帯とも南領の森林地帯とも一線を画した、大きな湖が広がっていた。静かで雄大な佇まいである。
私が知る、大きな湖は琵琶湖くらいだが、そこと比べようもない。目の前のそれが海だと言われても信じてしまうだろう。それくらい巨大だった。
「おおっきいね〜!」
「広いね〜」
「ホントだね〜」
双子につられた。
並々とした貯水量は少なくなったとは思えないが、ギルドで問題になるくらいなのだから、そうなのだろう。
「いつもはもっと多いの?」
湖岸に降り立ち、間近から眺める。
「平時を知らん者に言っても説得力にかけるが、こんなもんじゃない。そうだな…。あそこに斜めに生えている木があるだろう?」
クレイさんが指差す先には斜面に一本だけ歪な形で生えてある木があった。
「いつもはあの真下まで水面があったと言ったら、理解出来るか?」
え?あの木の真下って…。今と大分、違うじゃないか。目測ではあるが五メートル下くらいだろうか。
「確かに減ってはいるみたいね」
日本で雨の降らない季節にダムの水位が下がり、取水制限されたのは体験済みである。
「でも、普段より少ないとしても、これだけ貯水量があったら、困らないと思うけど」
「まあな。これが自然に降る雨水や湧水ならば、水位の変化は天候次第だと納得も出来ようが、ここは根元が違う。湖水竜の魔力が生んだ魔湖だからだ」
魔湖って…、どういう意味?
「知らなかったのか?この湖が湖水竜の魔力で生じているって」
なんと!そうだったの?ただ、湖水竜によって水源が保たれていると聞かされていた。そう言う意味だったとは。
聖領の水が美味しいのはそのせいだったのか…。納得の旨さだね。魔力度100%のミネラルウォーター?だよ。
「ここの湖の水位が下がることはない。少なくとも、歴史として残る程度には」
「詳しいのね?冒険者ギルドとこの湖がどう関わっているの?」
「蝙蝠城の道化姫じゃないが、それこそ昔話だな」
クレイさんは語る。
遥か昔、湖水竜から友と呼ばれた一人の男の物語をー。
少年は聖領で生まれ、早くに孤児となった。彼は冒険者ギルドで養育されたが、胸の内にあるのは親に捨てられた子供の頃の記憶だ。もう顔も思い出せない親への怒りが常に渦巻いていた。
「ホルン!また、お前か!」
ギルド長が見習い冒険者として働き始めたぱかりの少年を叱りつける。
「おーおー。懲りもしねえで、またかよ」
周囲の大人達はいつものことと、気にも留めない。
「連携が大事だと言っているだろう!何故、一人で突っ走る」
見習いのうちは大人達から学ぶために数人ずつに分かれて研修期間を設ける。ホルンは少年二人と一緒に組まされていたが、彼らを置き去りとしたのだ。
「あいつらがノロマなのが悪いんだ」
ボソリと呟く。
「何だと!俺達は一緒に待機していろって指示があっただろ!お前がそれを守らなかっただけだろ!」
少年が噛みつくと、もう一人もそうだと言うように頷いている。二人とも、半分獣人の血を引くことが分かる容姿をしていた。
「けど、俺が気付いたから被害が防げたんだろ?そこは評価しないのかよ?」
「それは…」
答えに詰まるギルド長の代わりにホルンの頭を叩いたのは、指導役の青年だった。
「評価云々じゃねえんだよ。勝手な行動をとったのが問題だって言ってんだ」
「痛えな!この野郎」
振り向きざまに青年に対して怒鳴りつける。
「今回は何事もなく済んだが、いつもそうとは限らない。お前はもっと人に頼ることを知るべきだ」
「俺は誰にも頼らずに一人でやれるんだ!」
「ガキが一人前の口をききやがる。そんなのは百年早えって言ってんだ」
青年がホルンの頭へと手を伸ばす。その手をホルンは振り払った。
「魔獣にやられそうになってたくせに偉そうにするな!」
そう言い放つや、ホルンは制止の声も聞かずに部屋から飛び出した。
確かに青年を含めた三人が目の前の魔獣に気を取られていた隙に別の一体が背後から迫って来ていた。
それを自ら退治すべく、ホルンは待機命令を無視して勝手に動いた。もちろん、一人で倒せるはずもない。
ただ、結果的にもう一体いることを大人達に気付かせ、処理出来たのでホルンの手柄とも言えた。
「全く、困った奴だ。見習いの間は仲間との連携や信頼を築く大事な期間だって言うのに」
ギルド長が頭を抱える。
「焦ることはないでしょうに。俺だって、あの頃はあんな風に尖ってましたよ」
「お前と似ているものか!口ではともかく、お前はちゃんと仲間とやれていた。それに比べてホルンときたら…」
「もう少し、長い目で見てやりましょう。あいつは俺と一緒ですから」
「…ふん」
冒険者ギルドにいずれ冒険者となる予定の子供達が集まっている。神殿の養護院のような、お綺麗な場所ではない。それでも自分の子供を預けていく親が後を立たない。
半分獣人の子供達、食いつめて子供を捨てる親達。前者は親の援助がある子供が多いが、後者は違う。
言葉通り、捨てられたのだ。
それがホルンの心を傷つけ、仲間を頼ろうとしない頑なな態度をとらせる。
いつか、分かってくれるー、似たような幼少期を過ごした大人達は、そう祈る。
相変わらず単独行動をとるホルンだが、冒険者としての腕は同年代の子供達のなかではピカ一だった。
見習い同士のの連携なんてクソだと嘯く彼も、指導役の青年には多少なりとも敬意を払っていた。
「兄貴よお、俺もう一人立ちしていいんじゃねえ?」
見習いは多くの冒険者と組ませることで実績を積んでいくものだが、性格に難のあるホルンは青年と組まされることが多かった。
口には出さなかったが、青年と一緒なのは楽しかった。ずっとそうしていられたらと願うくらいには。
けれど、そんなある日、ホルンはミスを犯した。それも致命的なミスだ。
あれほどギルド長や先輩の冒険者達から注意を受けていたのに、ホルンは一人で勝手に行動した挙げ句、最も大切にしたい人を傷つけてしまった。
「ホルン!この馬鹿っ!お前にそいつの相手は無理だ!」
聖領の水源近くに出没するようになった、新種の魔獣の調査に出掛けた時のことだ。
冒険者は学者の依頼でそうした仕事も請け負う。そいつは見た目は植物の姿をしていたが、地上を歩いたりも出来る変わった魔獣だった。
「へ。ただの歩く木じゃねえか、こんなの俺にだって捕まえられるさ」
今回の目的は捕獲、出来れば生きたままが望ましいが無理なら死体でも構わない。ただし、生きたままの方が報酬がぐんと上がる。それを知っていたから、青年達が慎重に事を進めるのを一歩下がった見ていたホルンは勝手に動いた。
ホルンの得手は結界、彼は木の魔獣を光る網で捕獲した。
「勝手な真似はするな!」
怒鳴られ、頭にきたホルンは魔獣に近づいた。
「俺の結界は柔じゃねえ。見ろよ、全く動けねえじゃねえか」
その時、ブチブチと光る網が魔獣によって切られた。
「え?」
木の魔獣は変化し、幾つもの触手を持つ異形となり、その触手をホルンへと伸ばす。
ヒュンと風を切る無数の音、それがホルンの体を射抜くことはなかった。その前に彼を庇った青年の体を貫いたからだ。
「…あ。なんで…」
体ごと自分を抱き締める、力強い腕の中でホルンは震えながら問う。
「馬、鹿か…。弟を兄貴が庇うのは…当たり前じゃねえか」
ゴボッと口から血を吐き、青年は崩れ落ちた。
遠くで仲間達が魔獣を仕留めるのが見えたが、ホルンは動けなかった。自分の足元に転がる、青年を見下ろしたまま、凍りついたように動けなかった。
それからはよく覚えていない。仲間がなんとか魔獣を仕留め、青年の治癒を始めた。
ホルンは青年の仲間の一人から力一杯殴られ、地面へと転がる。彼は何も言わなかった。罵りの言葉を一切口にせず、二度とホルンを見ることはなかった。
「大丈夫か?」
見習い仲間の半獣人の少年達が、ホルンに手を差しのべる。いつも勝手な行動をとるホルンに対して彼らは怒っていたが、その目は心配そうな色をたたえていた。
どいつもこいつも、俺なんか放っておいてくれ。
ホルンは自分の騎獣に飛び乗ると、その場から立ち去った。少年達が自分を呼ぶ声が背後から聞こえたが、振り返らなかった。
どんどん仲間達から離れて行く。
すると目の前に巨大な湖が出現した。どこまでも果てしなく澄んだ、青みを帯びた水の色。
その色が青年の瞳と同じ色だと思った。と、同時にホルンは騎獣から飛び降りた。
湖へと落ちていく。自分の騎獣だと青年から送られた猫型の騎獣が狂ったように鳴くのを最後に耳にしながら。
ホルンは、冷たい湖の底へと落ちていった。
元々いらないからと親に捨てられた命だ。少しも惜しくなどない。惜しいのは兄貴の命、ただ一つだけだ。
俺が死なせたー。
後悔と悲しみが押し寄せる。だがそれも、すぐにどうでもよくなる。水の中で呼吸が出来なくなり、苦しさが支配し、意識が遠のいていった。
そんななかでホルンは親から見捨てられ、それでも同じ血が通う、自らの体からやっと解放されるのだと安堵の涙をこぼした。
それは湖の泡となって、瞬く間に消えていった。
深い、深い湖の底へとホルンの体が吸い込まれるように落ちていった。
それを声として認識するのにかなりの時間を要した。何故なら、その声は耳からではない。直接、頭へと響いたからだ。
《…おい、おい!聞こえないのか!》
次第に大きくなるにつれ、ホルンは徐々に目覚めていく。
《起きろと言っている!》
怒鳴り声よりも大きい。頭のなかで鳴り響くラッパの音のようだ。うるさいと言うより、やかましい。
「うるせえっ!誰だ、てめえは!」
日頃から冒険者として鍛えている成果か、ホルンは即座に飛び起きた。
「あ、あれ?俺…、生きてる…のか?」
確かに湖へと飛び込んだ。その記憶は鮮明に残っている。冷たい水の感触や呼吸できない苦しさも。
《やっと、起きたか。馬鹿め。お前のような子供の死体で湖の水を汚そうと言うのか》
「は?誰だよ、あんた。つか、何で頭の中で声が聞こえるんだ?」
死ななかった自分はもちろん、頭のなかの声の持ち主も分からないことだらけだ。
ホルンは周囲を見渡した。そこは洞窟の中のように見えた。こんなに広い空間を有している、洞窟など見たことも聞いたこともない。
まるで神殿の中にある礼拝堂のようだ。どこまでも突き抜けた天井は似たような雰囲気であった。
どこからか光が差しているのか、薄闇の中で巨体な何かがいた。
《子供の分際で、よくも我の湖を汚そうとしてくれたな。万死に値する》
でっかい何かが答えた。姿は見えないが、いるのは分かる。
「じゃあ、あのまま死なせりゃ良かったじゃねえか。何で生かしたんだ?」
《ば、馬鹿ものが!レーヴェナータの子らを目の前で死なせる訳にいくものか》
「はあ?レーヴェナータ様の子って?俺がか?」
《そうだ。あやつはこの世界に生きているもの全てが自分の子供達だと、そう言った》
何だよ、それ。レーヴェナータ様は聖女様だぞ?俺みたいなゴミまで自分の子供だって言うのか?
「そんなの…、そんな」
《…お主、泣いておるのか?》
声の主が問う。
「は?そんな訳…」
だが、頬を伝う熱は確かに感じられた。
「俺…、俺が生きててどうだって言うんだ」
《ふん。そんこと我には関係がないが、少なくともこやつには大事なことだろう》
「は?何言って」
すると薄闇のなかから突進するものがあった。それはホルンに体当たりして来た。
「おわっ!」
自分よりも大きなそれがホルンの顔を舐めまくった。ザリザリと頬が擦れるようだ。
「おまっ、ニーニャか!」
猫型の騎獣、ニーニャと名付けた、それが嬉しそうな声を上げる。
「ニオー!」
それからまた舐め始める。
「ちょ、止めろ!お前の舌は痛いんだよ!」
腕でどかせると、
「フギー!」
と、不満そうに毛を逆立てた。
《お主はそれに感謝すべきだ。そやつ、水の中を泳げもせぬのにお主を助けようと飛び込んだのだぞ?》
「フギャ」
そうだぞ!と、ニーニャは言っているようだ。
《眷属がえらく騒ぐものだから、我が湖へと行ってみれば、主従そろって溺れかけておったのだ》
「馬鹿やろ、お前は猫型の騎獣だろうが。泳げもしないのに」
再び、眼がじんわりと熱くなる。
「どうして、俺なんか…。俺を助けるくらいなら、兄貴を助けてくれたら良かったのに」
《兄貴とな?》
ホルンはあらましを話して聞かせた。何故か、そうしなければと思ったのだ。
《ふむ。生きておるなら、それ、そこの花の実を煎じて飲ませれば良い。助かるかも知れんぞ?》
足元にあるだろう?白い花弁の中に実をつけた薬草がと言われ、目を凝らして見れば、確かにあった。
《それはレーヴェナータの母が用いておった薬草だ。稀代の癒し手であっただろう?あれがその花の実を摘みに、ここによく参っていたものよ》
レーヴェナータ様のお母上?稀代の治癒魔法使いだった?
「これがあれば、兄貴は助かるのか?」
《さてな。まあ、試してみることだ》
「あ、ありがとう。ありがとう!」
《ただではやらんぞ?お前には対価をはらってもらう》
「何だ!俺の命が欲しいって言うなら、いつでもやるぞ」
《そんなもの、いるか。…そうだな。お主には我の話し相手になってもらおうか》
「は?話し相手?」
《そうだ。まあ、それよりも早くもって行ってやれ。死んだら効かんぞ?》
「あ、ああ!すぐに行って帰ってくる。それまで待っていてくれ!」
巨大な何かが頷いたようだ。それが動き出す。ズシン、ズシンと地面が揺れた。
ホルンは初めて竜と言う、巨大で魔力に溢れた人為らざる存在を目の当たりにした。
それはまるで青い鋼のような鎧のような鱗に覆われ、水晶のように輝いていた。
《付いて来い。お主に秘密の通路を教えてやろう》
そこから、ホルンは地上に出ることが出来た。そして、急いで仲間の元へと戻った。花の実は大した効力を発揮した。
意識を取り戻した青年の傍らでホルンは人目も気にせず、大声を上げて泣いた。
「それからホルンは偉大な冒険者となった。彼が残した偉業は数知れない。そしてもちろん、湖水竜との約束を守って、度々話し相手として棲み家を訪れたそうだ。それを知るのは冒険者たけだ。『湖水竜の友』と呼ばれた冒険者は俺達の憧れだ」
誇らしげに語るクレイさんの顔を見ながら、彼が本当にホルンと言う名の冒険者に憧れを持っていると感じた。
しかし、双子はあまり感銘を受けていないようだ。半ば、とろんと寝ぼけ眼をしている。
「双子達には面白くない話なのかな?」
「違うよ〜。もうね、聞き飽きたの〜」
「何べんも聞かされてるんだよ〜」
こしこしと目をこする。
そっか。私は初めて聞く話だから、凄く面白かったんだけど。
「これは冒険者を家族に持つ者にしか教えないからな。湖水竜と友達になった冒険者と言われても、大半が信じないだろう」
それもそうか。私はルウちゃんと言う前例があるから、すんなりと信じられたけど。
「あ!そうだ!それより、秘密の通路があるって言ってたじゃない?そこから湖水竜に会いに行けば、手っ取り早いのじゃないの?」
「それが…。数代前のギルド長の時に次代に引き継ぎをする前におっ死っじまって。途切れちまったんだ」
使えないね!折角、秘密の通路があるって言うのに。
「すまねえ」
申し訳なさそうにするクレイさんに仕方がないと言って嘆息する私の肩がぐらぐらと揺さぶれた。
ひえっ!な、何事?
「さ、さっきの、レーヴェナータ様のお、お母上様のおは、お話っ!」
鬼気迫る顔で私にすがり付いているのはソールだった。
「ああ。治癒魔法使いの…」
「ど、洞窟に咲いている薬草っ!」
うお。マジで怖いんですけど。
「そっか。薬師だもんね、気になるよね」
「伝説に聞く、永珠の実かも知れないんですうー!!!」
絶叫する。
双子達がびっくりして飛び起きた。
私もソールの興奮した姿にドン引きだ。何か変なスイッチを誰かに押されでもしたの?
私史上、一話で一番長いお話じゃないかな?
けど、大半が主人公ではない別の人の話ですが。これで湖水竜と冒険者との関わりが判明し、冒険者を登場させた意図が繋がった。良かった、良かった(クレイの名前が出た時は考えてませんでした!)。まだまだ、続きます!飽きずにお付き合い願います。