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異世界でもふっと婚活  作者: NAGI
第三章 聖領編
115/210

新しい旅の仲間達

双子の子供達は二人とも男の子ではなく、男の子と女の子だった。髪をバッサリとベリーショートにし、男の子の格好をしていたから見間違えてしまったのだ。

「はじめまして。ロキです」

こちらが男の子。

「はじめまして。ロナです」

そして、こちらが女の子だ。

もしかして小人族か?と勘ぐってしまったが、普通に人族の子供だった。

えー。こんな子供を魔獣の巣窟に連れていくの?

さすがに駄目だろう、とクレイさんを見れば、

「こいつらは役にたつぜ。なんせ湖水竜の棲み家を見つけたのはこいつらだからな!」

と、太鼓判を押した。

「あ…、もしかして混血なの?」

「「そうだよ〜」」

二人ではもった。

「お父さんが大角鹿の獣人なんだよ〜」

え?だから、鹿に乗って…。まさか、こちらがお父さん?

「アハハ!そんな訳ないじゃん。この子は鹿の騎獣」

「ねー!」

凄い笑われた。

だよね!お父さんに乗せてもらうってないよね!

「そんなことないよ〜」

「よく乗っけてもらったも〜ん」

あ、そうですか。

「でも、死んじゃったから」

「ね〜」

あっけらかんと言うが、色々あったんだろうなと、しんみりしているとミグ姉さんに二人とも首根っこを掴まれた。

「あんた達!勝手に殺すんじゃないわよ!あんた達の親父さんは生きてるでしょ!」

「も〜。冗談なのに〜」

「なのにね〜」

何でもあるものを捜しに出掛け、三年以上帰って来ないらしい。

「母さんが〜、三年以上も顔一つ見せない父親なんて死んだと思えって言うから」

「ね〜。もう、顔も覚えてないしね〜」

二人、顔を見合わせる。

お父さんの扱いが、何気にひどい。まあ、自業自得とも言えるが。それにしても、お母さんも変わった人だな。

「この子らの母親も冒険者なんだよ。別件で聖領を離れててね。見習い達と一緒にギルドで面倒見ているから、安心して出掛けられるんだ」

お、お母さんー。あなたも大概だよー。子供達を放ってるって点ではお父さんと一緒じゃん。

子供達だけだと寂しいよね?

「え〜。別に寂しくないよ〜」

「うん。寂しくないよ〜。皆がいるから〜」

ふうん。ギルドは養護院みたいな機能も果たしているのか。ただの酔っ払いの集団じゃないんだな。

「あいつらは基本、酔っ払いだよ」

ミグ姉さん〜。折角、見直したのに台無しだよ。まあ、いいけど。

「でもって、この子達はどんな風に役に立つの?」

「うん?こいつらは索敵に長けているんだ。危険を察知する能力と言おうか」

ほほう。野生の勘みたいな?

「情報を分析して回避すると言った方がいいな。知った場所ならともかく、今回は未知の領域だからな」

ぽふっと双子の頭に片手ずつ置く。

「ついでに迷宮攻略にも役に立つ」

「僕ってば、お役立ち〜」

「あたしもお役立ち〜」

褒められて揃って照れているのが、年相応で微笑ましい。

クレイさんに頭を撫でられて嬉しそうにしている。もしかして、お父さんみたいに思っているのかな?

本当のお父さんは死んでないので(多分)、微妙なのだが。

「で、もう一人。こいつは精霊魔法の使い手だ」

真っ白な白馬(騎獣なので並みの馬ではない)からスラリと降り立ったのは、一人の美女だ。

「ふうん。これが巫女?」

私を見下ろす美女は、侮ったような態度を隠そうともしない。

「たいしたことないのね」

つんと顎を上げるしぐさも麗しい。私が貶されているのだけど、そんなこと気にならないくらいだ。

淡い金髪をサラリと後ろに流し、先端は腰に届くほど長い。足も腕もほっそりとしていて、スタイル抜群だ。

「エリー。あんた、言い過ぎだよ」

「あら、どこがよ!」

きっと振り返った拍子に隠れていた耳が見えた。見間違えようもないくらい、その先端は確かに尖っていた。

えええええ!ま、まさか!エルフなの!

「ど、どうしよう!エルフだよ、エルフ!」

挙動不審さながらにアワアワする私に、

「落ち着いて下さい。エルフって何のことですか?」

と、アリーサが問いただす。

エルフを知らない?そんな馬鹿な!

私はラノベ知識を全開にして、エルフについて説明した。

「いえ、違いますよ?そんな不老不死みたいな人間は存在しません。何ですか、その森の妖精って?」

「え?でも、耳が尖ってるし」

「私の耳が尖っているのは親譲りの遺伝よ!私は大蝙蝠の獣人と人の混血だから」

大蝙蝠?それじゃ吸血鬼?

「はっ?あんた、頭、沸いてるの?血を吸う人間なんている訳ないでしょう!」

怒られた。がっつり怒られた。

流石にミグ姉さんも処置なしと放置だ。

「失礼なこと言わないで!」

美女にマジギレされてしまった。

ホント、すいません。


エリーこと、エレノアは大蝙蝠族の父親と人族の母親の間に生まれた混血で、耳が尖っているのは父親譲りだそうだ。

「冒険者には混血が多いのね」

「あー、まあな。混血はどちらからも半端者扱いされるのが常だからな」

出発前の調整に空いた時間を使って、クレイさんに話し掛ける。

「獣人のように飛び抜けた能力がない代わりに見た目は人に近い。けど、普通の人とは違う」

完全な獣人にも、人にもなれない。半分この存在。

「ま、あんま気にするなよ。他領とはちがって、聖領で差別はされないぜ」

ただ、どうしても育てるのには人の手には余るので早めに手放す親が多い。冒険者ギルドに子供達がいるのはそんな理由だ。

「獣人の父親がちゃんとしている所でもギルドに預けるのは、混血の子供の職探しが難航するからだろう」

「普通より秀でているんだから、雇い主が幾らでもいそうなのにね。どうしてなの?」

「聖領が特殊だから、かな。ここは何事も神殿を中心にまわっている」

争い事を嫌い、私利私欲を嫌悪する女神に守られたレーヴェンハルトの聖域。

「獣人が悪いという訳じゃない。ただ、俺達はどうしたって片方の獣の性みたいなもんに引きずられるからな。町の仕事を任せるのは不安があるんだろう。

その点、冒険者は来る者拒まず。能力次第で何を目的にしても構わない」

うーん。でも、やっぱり町の議会を運営する側として、その点も改めて考慮する必要がありそうだ。

「ま、そんなに考え込む必要はないさ。ミグみたいに稼げるだけ稼いで冒険者を辞めてから、好きな店を出している連中も中にはいるし、嫌々冒険者をやれるほど、この仕事は甘くない」

か、格好いいー!クレイさんて、年齢で言うと以前の私とドンピシャなんだよねー。

側は若くても、中身はおばさんだから大人な男性に目を引かれるのかも知れない。

オーリさんにしろ、リヒトさんにしろ。私がいいなと思った人達は大人の落ち着きがあった。二人とも、私とご縁がなかったのが残念で仕方ない。

「ねえ。ところで、エリーさんの精霊魔法ってどういうものなの?やっぱり精霊と関係があるのかな?」

「ああ、それは…」

《セーラ、知ってるよ!》

セーラ専用の移動鞄と化した斜め掛けした鞄から、セーラがにょきっと顔を出した。

びっくりするから突然出るのはホントやめて欲しい。私はチキンハートの持ち主なんだからね!

《隠れてるの。セーラ、ちゃんと見えてるもん》

隠れている?ああ、主以外に見えないってやつか。

「あれ?でも、私は見ることが出来たよね?」

《んー?分かんないけど、絶対に嫌って思ったら見えないよ?》

ほほう。絶対に嫌ですか。

「どの辺りにいるの?」

《え?隣にいるよ?》

私はじっとセーラの隣を凝視して見る。すると、ぼんやりと光の玉のようなものがかすかに感じとれた。

《やだやだやだ!見ないでー!》

まず最初に声が聞こえてきた。すると、認知出来たことで声の主の姿が徐々に見えてくる。

《恥ずかしいから見ないでー!》

ん?ぽっちゃり?精霊なのにぽっちゃり?

手で顔を覆って背中を向けている精霊は、全体的に丸かった。

《もー、やだ!恥ずかしいっ》

「えっと、ごめんね。そんなに嫌なら見ないようにするけど」

人が嫌がることはしない。私のポリシーである。

私は視線を反らせ、あえて見ないようにする。

《え?本当に?僕のお願い聞いてくれるの?》

どうやら男の子らしい。精霊に性別などないが、性質で男女のそれに分かれているのだ。

《エリーは絶対に聞いてくれないんだ。薔薇姫様の主は優しいんだね》

嬉しいことを言ってくれる。

「ごめんね。見ちゃって。一度見えるようになると、次からは意識しなくても見えちゃうみたい。でも、あんまり見ないように気を付けるから!」

《ううん。いいよ。僕、優しい人は好き》

「見ていいの?ホントに?」

《うん…。でも、がっかりしないでね》

自信無さげに言う精霊の姿をはっきりと見る。

うん。ぽっちゃりさんだ。けど、不健康な感じではない、健康的なぽっちゃり?みたいな。

同じぽっちゃり仲間として親近感がわくな〜。

《あの…、ごめんね。エリーがね。僕のこと変だって言うから》

「全っ然、変じゃないよ!かわいいよ!」

《え?そ、そうかな》

頭に手を当てて、テレテレする様にきゅん死しそうだ。

《セイラの方がかわいいもん!》

頬にムギュっと体を押し付ける。痛いよ?

あー、かわいい。かわいいよ〜。

《心が込もってない!》

いつもの如く、セイラを両手で包み込む。こうすると大人しくなるのだ。

「おっ、俺にも見えるぞ。なんだ、かわいいもんじゃないか」

クレイさんも初見なの?

「あー、エリーの奴が隠しやがるからな」

何でだろ。こんなにかわいいのに。

「なっ!どうして姿を見せているの!隠れときなさいって、あれほど言ったのに!」

「そっちこそ、どういうつもり?この子のどこが変だって言うの?」

「そんなの言わないと分からないの?精霊なのに、こんなに太っているなんて」

マジでカチンときた。

「太ってるから何よ!自分の物差しで決めつけないでよね!」

私は精霊の女王、薔薇姫の魂の伴侶である。精霊に対する不当な扱いには断固抗議する。

「あなたが態度を改めないなら、この子との契約は破棄させてもらいます」

「何ですって!あなたにそんな権利ないでしょう!」

《あるよ〜。だってセイラの魂の伴侶だもん》

ひょこっと包み込んだ両手の間から、セイラが顔を出す。

「は?え、この子も精霊?え、え、え?嘘っ!薔薇姫なの!」

精霊の契約者だから知ってて当然…、とは言えない。

薔薇姫の誕生は大々的に宣伝するような事ではないし、私が魂の伴侶であると知っている人も少ない。

そもそも、精霊自体がものっ凄くレアだから。

「その通り。私には権利があるわ。この子は返してもらいます!」

ビシッと言ってやった。

ちょっと、私ってば格好良くない?

《だ、だめっー!》

あれれ?ぽっちゃり精霊君がエリーの肩口にしがみついた。

《僕、離れたくない!》

「フロウ…」

自分にしがみつく精霊の体を片方の手で支えるように持つ。

「ごめんね」

《エリーは悪くない。僕、知ってるよ。エリーは、僕が自分みたいにからかわれたくないって思ってくれていること》

んん?こんな美女、どこをどうしたら、からかわれる要素があるって言うの?

「大蝙蝠族だからよ。私は耳も尖っているし、羽根だって醜い」

そりゃ翼人の翼と比べたら、蝙蝠の羽根ははるかに劣るだろう。けど、それは種族の差で醜くなんかないよ?

「あんたなんかに分からないわ」

またまた、カチンときた。理由も話さないうちから決めつけるな!と、私は抗議した。

「あー…。色々、あるんだわ。大蝙蝠と聖女様との間には」

女二人の言い争いに見かねたのか、クレイさんが口を挟む。

「ヒルダさんが?何なの?」

「違う、違う。初代…、レーヴェナータ様だ」

そんな昔の話?うーん。何だか長い話になりそう。

とりあえず出発らしいから、それからでもいいかな?

アリーサがイライラした様子でこっちを見ている。相変わらず、冒険者は苦手らしく、あえて近づこうとはしない。

その分、目で語ってくる。目力が強いよ?

「そろそろ出発みたい。今日中に最初の目的地まで辿り着かないと」

一日目の目的地は湖水竜の棲むと言う、洞窟の入り口付近。そこに拠点となる天幕を張るのだ。

大蝙蝠族とレーヴェナータの因縁は到着してから、改めて話してもらえると嬉しい。

私達は旅の道連れなのだから、時間はたっぷりあるはずだよね。



















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