ボイスレコーダー
「俺は田端勇雄。今日は○月×日。ゾンビに追われて近所の学校に逃げ込んだ。まさかこんな映画みたいなことが起こるとは・・・今、俺は宿直室?まあ、そんな部屋にいる。今のところここは安全だ。当分の間、ここにこもってボイスレコーダーに記録しようと思う。」
「○月△日。部屋を漁ってたら防災セットと一緒に水と食料が出てきた。当分はどうにかなりそう。表では相変わらずゾンビがうろついてる。とても外に出れる状態じゃない。」
「○月□日・・・はあ・・・最悪な気分だ。ゾンビの気配がなかったから、試しに外に出てみたら子供の死体があった。・・・いや、ここは学校だ。予想はしてたし、覚悟もあった・・・はずだった。・・・でも、実際見るときつい・・・何言ってんだ?俺・・・」
「○月◇日。今日、外で女の子を保護した。名前は梨華。・・・なんだろう、子供とはいえ人が近くにいるだけでこんなに落ち着くとは・・・生きて帰ったあと捕まらなきゃいいけど・・・」
「○月◎日。この数日間、ゾンビが少なかったから、この機会に乗じて屋上に職員室から拝借したラッカースプレーでSOSと書いた。今の俺に出来るのはこのくらいだろう。」
「○月▼日。今日になってゾンビの数がやたらと増えた。少し派手に動きすぎたかも知れない。何体かがドアをノックしてやがる。ベッドをずらしてドアを封鎖してるから大丈夫だとは思うが、生きた心地がしない。梨華も怯えている。」
(銃声)(ヘリの飛翔音)
「○月★日。さっきからうるさいくらいヘリの音がすると思ったら、銃声っぽいのも聞こえてきた。多分、救助だ。梨華も落ち着きがない。」
「自衛隊です!誰かいませんか!」
「おじさん!自衛隊が近くにいるよ。」
「おじさんじゃねぇ。お兄さんだ。・・・こっちです!宿直室にいます!」
「わかりました!そちらに向かいます!」
(ドアが開く音)
「大丈夫ですか?助けに来ました。」
「助かった・・・ありがとうございます。」
「すぐに脱出しましょう。」
ボイスレコーダーに録音された音声はここまでだった。
しかし、レコーダーを回収するまでの間、自衛隊によるこの地域での救助活動は行われておらず、また救助された者の中にもこの音声に該当する男性と少女はいなかったという。
男性と少女は一体どこに行ったのだろうか・・・
そして、レコーダーの中で自衛隊と名乗り、二人を連れていった人物は何者だったのか・・・