99.神殿の祝福はこのスタイルで受けましょうっ!でも真の理由はヒミツ、な変態悪女です!?
かくして、まだまだ続く4月は1日の合同婚約式。
ダンスの次は婚姻と貞操の神殿の神官による祝福と結婚予定日アンケート (相談可) です。
まずは神官さんが女神の聖水など撒きつつ、ざっくりと全体を祝福。
その後、カップルごとに順に並んで更に祝福され、結婚予定を伝えるわけですが……
10組のカップルの中でただ1人、姫抱っこされている私ことエリザベートと、抱っこしてくださっているシドさん。
両親の物問いたげな視線と神官の呆れ目線がイタいのです。
そして、ほかの皆様の……
「あら、わたくしもあれが良いわ! ね、ダイヤ?」
王女殿下のおねだりに、にこやかにうなずくヘルムフリート青年。
さっと鮮やかにリーゼロッテ様を姫抱っこです!
背の高いお二人がすると、映えますねぇ♡
ざわっ。
先程までシドさん×リジーちゃんペアに 『蔑み4、羨み6』 程度の目線を送ってくださっていた令嬢方殿方が一斉にどよめきます。
「きゃあん♡わたくしも♡」
「えっ……本気……?」
「あ・な・た・こ・そ。まさか本気で嫌がっておられるの?」
「い、いえ……」
「そうね♡愛してるわっ♡」
「や、やめてっ!わたくし重いからっ!」
「そ、そんなことないっ!ボク頑張るっ!……うっ」
「……よろよろして耐えられても悲しいだけだから~!」
「う、うっ……ご、ごめん!結婚式までに鍛えるよ!キミに相応しいオトコになるよっ」
「わ、わたくしもダイエット頑張るわ……っ」
「君も、どうだい?」
「そ、そんなっ……」
「遠慮しないで♡」
「きゃあっ、は、放してっ……!」
「ダ・メ。放さないよ……ずっと……」
「も、もうっ……わ、わたくしも……♡」
「……あなたはムリね」
「すみません……」
「ではわたくしがっ!」
「ひぁっ!?」
等々、さまざまなやりとりを経て、さらに仲良さげにくっつきあった皆様。
ダーナちゃん×ヨハネスさんペアもなかなか頑張っておられますね!
しかし。
元凶のリジーちゃん、敢えて知らん顔を決め込みます。
……いや。だって。
これ元々、仲良いとかラブラブとかそういうものじゃなくて。
普通に全身に力が入りませんゴメンナサイ、ってことなのですものっ…… (赤面)
「あの程度で腰抜かすとか、どんだけ感じやすいんですか。お嬢様」
シドさんが耳に口をつけて囁いて下さる悪口雑言も……はぁぅぅぅっ……
さっきの続きみたいになっちゃって……ますます力がっ……
こんなところで、恥ずかしいっ!
血の上った頬を、そっと押さえるリジーちゃんです。
「だって、あんなの初めてだったんだもの」
「気持ち良かったですか?」
ナンテコトを聞くんですか、もうっ!
「シドのバカっ」
涙目になって睨み付ければ、シドさんますます嬉しそうですねっ……!
けしからんのです。
「お嬢様が、おねだりするからですよ」
「だって、だって……」
これまでのナデナデちゅうちゅうは子供ダマシだったのですね。
そう確信するほど、イケないよろこ……いやもうイイ。
だから、つまり。
あんなにハゲしく求められたことなんて今までなくて。
婚約式のことなんか頭から飛んじゃって。
応えて、返すことしか……って、いや、やっぱりもうイイ。
はぁぅぅぅ……こんな所で変態としてひと皮もふた皮もむけちゃうなんてっ。
リジーちゃん……これからどうすれば良いのでしょうかっ。
と、シドがまたふっと顔を近付けてきます。
「ここで続きだなんてっ……」
マズいんじゃないでしょうか、と言い切る前に、唇のすぐ下を素早く舌がかすっていきました。
「続きなんてするワケないでしょう、バカですか」
シドさん通常営業ですね!
ちょっとホッとする、リジーちゃんです。
「じゃあ、どうしたのよ」
「リップはみ出てましたから」
「あらやだ」 ハゲしいキスの後で急いで直したのがイケなかったようですね!
「ありがとうシド」
「いいえ、どういたしまして」
やはり婚約式だからでしょうか。
こんな普通のやりとりにも、幸せ感が溢れてきちゃいますねぇっ♡
「シドさん大す……」
「ゴホンゴホンゴホンっ!」 リジーちゃんの愛のセリフを、いきなりのハゲしい咳払いで遮るのは……神官さんです!
いつの間にか、順番が来ていたもよう。
「さて。結婚式の日取りは? 分かる範囲でいいので」
「「5月の11日です」」
声を揃えてのお返事に 「はやっ」 とツッコミ入れる神官さん。
「……あ、失礼。来年ですよね」
「いいえ? 今年ですわ?」
「それならば6月になされば良いのに」
6月は婚姻と貞操の女神の月。
初夏を迎えた明るい日差しの中、たくさんの花々が咲き誇る、1年のうちでも最も美しい季節なのです!
前世と同じく、いや前世よりも今世の方が3倍増しで大人気、ですよ。
でも。
「いいえ」 キッパリ言い切るリジーちゃん。
「わたくしの誕生日がイイのです!」
「ああなるほど」
頷く神官さんに、シドが笑顔を向けます。
「それに俺たち、もう待ちきれないんです!」
「ゲフぅぅっ……で、では祝……ご、ゴフゴフゴフっ……失礼、祝ふ……っ……ゲフンっ……」
突発的激ムダ告白に、思いっきり咳込み、なかなか祝福できない神官さん、なのでした。
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